News

2013/12/14 09:00

 

忘れらんねえよ、満員のリキッドルームをひとつにする熱演――OTOTOY最速レポ

 

忘れらんねえよが、2ndアルバム『空を見上げても空しかねえよ』リリース・ツアーとなる〈忘れらんねえよ ワンマンツアー バンドワゴン〉のファイナル公演を、12月13日に恵比寿リキッドルームで開催した。

あの空間には、きっと愛しかなかった。アンコールの最後で、満員となったリキッドルームの観客がひとつになり、歌いながら必死に手をあげて左右に振る。それを、眩い照明に照らされたステージの上で演奏しながら、最高に暖かい笑顔で見守る忘れらんねえよのメンバーたち。あんなに美しい景色がほかのどこにあるのだろうか。きっとこの景色のなかに詰まっている感情を、愛と呼ぶのだろうと思った。

この日は奇しくも13日の金曜日。そして東京はこの冬一番の寒さという、自称"くそバンド"の忘れらんねえよにとっては、最高のシチュエーションとなった。会場に着くと、すでにかなりの観客がフロアに。その数は時間とともに増え、開演時間を過ぎてもどんどん人が入ってくる。いつしか場内は、忘れらんねえよを観にきた満員の人で膨れあがっていた。

開演予定時刻を15分ほど過ぎた頃にBGMが止み、場内は暗転。ミラー・ボールがまわると、チャットモンチーの「シャングリラ」が流れる。そのリズムに合わせて、フロアは一斉に手拍子。その音に導かれ、メンバーが登場。柴田隆浩(Vo、Gt)が「うわああああー!! サンキューセックス!!!」と景気づけに絶叫し、「くそバンド、忘れらんねえよです!」と挨拶。「今年はめでたいことがいっぱいあったな」と、チャットモンチーのえっちゃん(橋本絵莉子)が結婚、出産したことを投げやりに話す。そして最後に、この日のライヴがソールド・アウトしたことを明かすと、満員の観客が歓喜の声をあげて祝福する。まだ演奏前にも関わらず、場内は異様なほどの盛り上がり。

手拍子が鳴り響くなか、1曲目に演奏されたのは「僕らチェンジザワールド」。みんなスタートからテンション全開に激しく体を揺らす。すさまじい熱気が満ちる場内に、梅津拓也(Ba)は投げキッスを贈る。続く「戦う時はひとりだ」では柴田が<辛い恋があった 長い恋があった>という歌詞の合間にいちいち「えっちゃん!」と絶叫。曲のせつなさが倍増される。「僕らパンクロックで生きていくんだ」では、ぎっしりと埋まった観客が拳を振りあげて「オイ! オイ!」と叫び、場内は興奮のるつぼと化した。

ここで柴田がツアーを振り返るMC。はじめて全国を細かくまわったことでバンドが成長したと語る。ちなみに、全員の技術や度胸が底上げされたが、それ以上に成長したのは酒田耕慈(Dr)の私服のセンスとのこと。その成長を披露すべく、客席のサイドに設置されたスクリーンに酒田の写真が映し出された。ちなみにこのスクリーン、ライヴ中に使われたのはこの瞬間だけであった。なんとも贅沢な使い方。

「だんだんどんどん」「アワナービーゼー」と勢いのある曲が続く。ライヴで聴くたびに切実さが増していく「ドストエフスキーを読んだと嘘をついた」に続いて演奏された「中年かまってちゃん」では、梅津と酒田が繰り出す怒濤のリズムと柴田の鬼気迫るヴォーカルが一体となって襲いかかってきた。ここで、「ファイナルでしか話さないここだけの話をします」という思わせぶりな前フリから、もはや鉄板となっている初恋の人、おがっちのエピソードへ。お馴染みの曲「慶応ボーイになりたい」が演奏される。柴田によるメンバー紹介を経て、演奏されたのはチャットモンチーの「シャングリラ」。明らかに音域を超えている高音を、精一杯に振り絞って1コーラスを歌いきった。そのまま「美しいよ」へと続く。柴田のギター・ソロに合わせて、梅津は楽しそうに腰を振りながら演奏していた。

「俺らは最初に音楽をはじめたときに、こんな景色を見られるとは思っていなかったんだ。だから、自分のことばっか歌っていたんだ。でも、熱い目をしたあんたらがちょっとずつ集まってくれて、俺らがしんどいときに背中を押してくれるような人が増えてきてさ。そんなあんたらに向かって、あんたたちは絶対に間違ってないよって。そんな歌を作りたいなって思った」と、柴田が心境の変化を真剣な表情で語る。そんな曲が「ようやくできました」と話すと、「夜間飛行」が演奏される。酒田がドラムを連打。柴田が紡ぐ極上のメロディが胸に突き刺さってくる。サビでふいに照明が明るくなり、「俺らならやれるよ!!」と力強く叫ぶ柴田を、みんな手を伸ばして求めている。続く「この高鳴りをなんと呼ぶ」の曲中でも、柴田は「本気でやってりゃ絶対変わるんだよ」と痛烈なメッセージを叫ぶ。梅津は何度もジャンプし、酒田も必死の形相で歌いながら演奏していた。

ライヴは終盤へ。「北極星」「CからはじまるABC」では、感極まった観客が互いに体をぶつけ合って踊る。みんな拳を振りあげながら絶叫している。最後に、バンド・マンやスタッフ、メディア、観客など、バンドに関わるすべての人への愛を歌ったラヴ・ソングという「バンドワゴン」を演奏。ラストは、みんなでタオルをまわして終了した。

アンコールでは、ファイナルだけのスペシャル・ゲスト、おとぎ話の有馬和樹(Vo、Gt)、牛尾健太(Gt)が登場。5人で「戦って勝ってこい」を演奏。柴田のヴォーカルに、有馬が優しくコーラスをつける。牛尾もギターで曲に彩りを添える。曲が終わると柴田は「いま俺、すげー幸せだな」としみじみつぶやいた。続いて、弾き語りで「パンクロッカーなんだよ」を披露。場内は静まり返り、その歌声にすべての人が聴き入っていた。いよいよラストの曲「忘れらんねえよ」が演奏される。みんな曲に合わせて手を振っている。途中、演奏を止めてみんなで大合唱。曲の最後では、みんなで一斉にジャンプ。ライヴはエンディングを迎えた。

鳴り止まない拍手のなか、柴田がマイクをとおさずに「ありがとうございました」と挨拶。スクリーンにて、3月から2マン・ツアー〈忘れらんねえよ主催 ツレ伝ツアー ~序章~〉が行われることが発表された。柴田は、「もっともっとすげー景色をみんなと一緒に作りたいなと思ったの。だから、このツアーはどんどん大きくしていくので楽しみにしておいてください」と再会を約束して、ステージをあとにした。

いつだったかの新宿LOFTで観た忘れらんねえよのライヴで柴田は、「ここにいるみんなと一緒に大きなステージに行きたいんだ」と熱弁していた。リキッドルームというバンドにとって最大キャパとなるワンマン・ライヴでも、まさにその言葉どおり。1000人近くの人がいるのを忘れてしまうくらい、数百人で作り上げていたあの空間がそのまま大きくなったようなライヴだった。全身全霊を込めて観るものに向かっていくバンドと、それに全力で応える観客。むしろ会場が広くなったことで、一体感や熱量、愛情は確実に増幅していた。また、あれだけエモーショナルに熱演していても、まったくぶれない安定した演奏。どれだけ会場の規模が大きくなったところで、彼らの姿勢は変わらない。次はどんな大きなステージで彼らの熱を体験できるのか、楽しみでならない。(前田将博)

〈忘れらんねえよ ワンマンツアー バンドワゴン〉
2013年12月13日(金)恵比寿リキッドルーム

<セットリスト>

1. 僕らチェンジザワールド
2. 戦う時はひとりだ
3. 僕らパンクロックで生きていくんだ
4. だんだんどんどん
5. アワナービーゼー
6. あんたなんだ
7. ドストエフスキーを読んだと嘘をついた
8. 俺を守りたい
9. 中年かまってちゃん
10. 慶応ボーイになりたい
11. あなたの背後に立っていた
12. 青年かまってちゃん
13. シャングリラ(チャットモンチー)
14. 美しいよ
15. そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか
16. 夜間飛行
17. この高鳴りをなんと呼ぶ
18. この街には君がいない
19. 北極星
20. CからはじまるABC
21. バンドワゴン

アンコール
22. 戦って勝ってこい
23. パンクロッカーなんだよ
24. 忘れらんねえよ

[ニュース] おとぎ話, 忘れらんねえよ

あわせて読みたい


TOP