News

2013/03/17 23:00

 

HAPPY BIRTHDAY、音楽+寸劇ライヴでエンターテイナー魂を見せつける!!――OTOTOY最速レポ

 

ある時は赤裸々に、ある時は恥じらいながら“女子”を歌い上げる2人組ガールズ・バンドHAPPY BIRTHDAYが、ライヴと寸劇を融合させたオリジナル・エンターテイメント〈ムーンプリズムパワー☆メイクラブ〉を渋谷QUATTROで開催した。

この日集まったのは、10代から30代までを中心とした多数の男女。フロアにはイスが並べられ、着席形式でライヴを鑑賞できるようになっている。誰もがこれから始まる一大エンターテイメントを心待ちにしている様子だ。すると突然、能天気なSEが流れ始め、同時にドラム・あっこの声が聞こえてくる。安っぽいラジオDJのような調子で、「突然だけど、みんなは合コンに行ったことあるかな?? 本日、渋谷QUATTROで合コン・カラオケ・パーティを開催します!!」と、いきなりの合コン開催宣言。すでに寸劇が始まっているのだ。

この意表を突く演出に笑みがこぼれる客席の中から、なんとHAPPY BIRTHDAYの二人が登場。自己紹介もそこそこに、あっこは流れ出したカラオケ・トラックに乗せて、大塚愛の「さくらんぼ」を熱唱し始める。それに対しヴォーカルのきさが、「うるさいんだよ、ブス」と愛嬌たっぷりにこれを制止。「私にも歌わせて」と口にし、彼女たちの人気曲「アイプチコンプレックス」のイントロが始まる。こうして、乗っけから破天荒なHAPPY BIRTHDAYのワンマン・ライヴがスタートした。

初めこそヴォーカルに専念していたきさだが、2曲を終えた時点で、この日初めてエレキを手にする。トレードマークのオーバーオール姿で、丁寧にコードを鳴らしていく姿が印象的だ。甘いトーンの中にもしっかりと芯の通ったきさの歌声と、あっこの繰り出す迫力のドラミングが、観客たちの手拍子を誘っていた。

数曲を終え、おもむろにきさが言う。「私の歌いたい曲を歌います」。流れてきたのは、90年代初めに一世を風靡したアニメの主題歌だった。おそらく、当時を知る人なら、誰もが一度は耳にしたことがある“あの曲”だ。どうやらHAPPY BIRTHDAYの二人もドンピシャの世代らしく、そのあまりの熱の入れように、思わず月に代わってお仕置きされている気分になってしまった。途中からはあっこがドラムの演奏を放棄し、半ば強引にきさとのデュエットを開始。とにかく振りが激しい。

この曲が終わると、今度はきさがキャップを被り、あっこはグラサン姿という出で立ちへと衣替え。ヒップホップのトラックに乗せて、ラップ調の自己紹介が行われる。すると突然、あっこが「男呼んでいい?」と言いだし、この日のサポート・メンバーのうち2人(ギタリストとベーシスト)がステージに登場する。4人で簡単なジャム・セッションを披露したあと、疾走するロックチューンをはじめ、HAPPY BIRTHDAY一流の良質なポップスが続々と披露されていった。代表曲「しゃかいのごみのうた」では、きさは一段と力の入った歌声を披露。彼女は途中、感極まって涙をこらえているようにすら見えた。その後、バンド・メンバーが退場し、ステージ上は再びきさとあっこの二人に。

この日きさは、ステージ上で何度か別れた恋人についての話をした。「いまだに忘れられない人がいる」と、素直に告白したのだ。きさの書いた曲の多くには、この個人的な経験が強く反映されている。もう二度と届かない存在になってしまった彼。もちろん、彼はこの世界から消えてしまったわけではない。きっとどこかで小さな日常を送っているはずだ。だから会いに行こうと思えば会いに行けるのだろうし、触れようと思えば触れることだってできるだろう。だが、そこにいるのはもう同じ「彼」ではない。もう「彼」はいないのだ。見えてはいるのに決して届かないもの。触れることはできるのに決して手に入らないもの。HAPPY BIRTHDAYの音楽には、そいういったものに対する憧れや悲しみの感情が潜んでいるように思える。リスナー全員がきさのような経験をしているわけではないにも拘わらず、これだけの感染力があるというのは、このあたりに理由があるのではないかという気がした。

きさは、キーボードによる伴奏をバックに、忘れられない恋人へ向けたと思われる2曲をしっとりと歌い上げた。

すると今度は雰囲気が一転。あっこがわがままなお姫様の姿に扮して登場した。スタッフらしき側近の男たちに騎馬を組ませ、その上に乗ってあちこちに紙吹雪をまき散らしている。その流れから、新作にも収められたシングル曲「イチャイチャチュッチュキャピキャピラブラブスリスリドキドキ」へ。初めて客席を立たせて演奏された同曲は、この日のハイライトのひとつとなった。なお、側近たちはドラムを叩くあっこの背後で、必死に紙吹雪を舞わせることに勤しんでいた。

そしていよいよ本編最後の曲「目を開けて」へ。「いつまでもくよくよしていられない!!」というきさのMCとともに始まった同曲は、ポジティブな方向へ向かう彼女たちを象徴するような曲だ。この曲は、発売されたばかりの新作アルバム『今夜きみが怖い夢を見ませんように』でも最後に収録されていた曲。前作『嘘でもかわいいと言って』が「こうやってまた君に嫌われる」という俯いたままの曲で終わっていたことを考えると、顔を上げて前に進んでいこうとする彼女たちの意志を感じることができる。同曲を終え、ここでいったんライヴは終了。二人はステージ裏へと引き上げた。

が、もちろんすぐにアンコールが巻き起こる。その声に応え、再びきさとあっこがステージに登場。ライヴ開始時、想像以上の観客の入りに戸惑ったことなどを告白した。また、6月24日(月)の新宿シアターモリエールで、再びワンマン・ライヴを行うことも告知。こちらは販売チケット数が少ないそうなので、ぜひお早めにとのことだった。

アンコールの1曲目は、HAPPY BIRTHDAYというバンド名にちなみ、サプライズ的に誕生日ソングが披露される。実はこの日、3月生まれの方が無料で招待されていたのだが、客席のどこかにいる彼らを祝うために、この曲が熱唱されたのだ。続いて、「インディーズ時代の曲をやります」という宣言とともに、現在の曲調とは一味違う、初期衝動に溢れた荒々しい楽曲を2曲披露。そして最後に、亡くなってしまった大切な人を思って書かれたという「ありがとうまたね」が演奏され、この日のライヴは終了。ライヴを無事に完成させ、ステージ上で互いの労をねぎらうように抱き合った二人が印象的だった。

文字通り、笑いあり涙ありの一夜となった今回のライヴを通して、彼女たちが生粋のエンターテイナーであること、そして、ウェットな恋愛を歌うガールズ・バンドという枠から、少しずつ、だが確実に脱却し始めているのだということに気づかされた。彼女たちの今後からますます目が離せない。

〈ムーンプリズムパワー☆メイクラブ 【今夜きみが怖い夢を見ませんように】 TOKYO NIGHT!〉
2013年3月17日(日) 渋谷QUATTRO
開場 / 開演 : 17:00 / 18:00

■HAPPY BIRTHDAY インディーズ時代の音源配信&インタビュー
http://ototoy.jp/feature/index.php/2013031401

[ニュース] HAPPY BIRTHDAY

あわせて読みたい


TOP