新しい音楽マーケティングとは?ーーkilk records session 2014 第2弾は高野修平!! 2014年最新フリー・サンプラーも配信!!

左から、森大地、高野修平

kilk recordsの主宰者、森大地が、さまざまなゲストとともに音楽業界のありかたについて語り合う対談「kilk records session」。

今回のゲスト、高野修平が刊行した3冊目となる著作『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング〜戦略PRとソーシャルメディアでムーヴメントを生み出す新しい方法』はソーシャルメディア、PR、音楽を掛け合わせたマーケティング戦略について分析・提言した書籍である… なんていう書き出しをすると随分難しく思われてしまうかもしれないが、音楽に捧げるパッションが爆発したかのような内容に惹きこまれ、テンポよくページをめくれる好著だ。その具体的な内容にいたく感銘を受けた様子の森大地とは初対面ながら、kilk records所属のat her open doorのメンバーと高野が友人関係だという不思議な縁も発覚。連載始まって以来初めてヒソミネに赴いての対談となった今回、幕末の志士の名前まで飛び出した饒舌な2人の会話は取材終了後もいつまでも続いていた。

進行・文 : 岡本貴之

kilk recordsの2014年最新サンプラーをフリー・ダウンロード!!


2014年を切り開くアーティストたちが集結したフリー・サンプラー

VA / kilk sampler 2014 spring

【配信価格】
アルバム
WAV 0円、mp3 0円

【Track List】
1. I know you, you know me (Ajysytz)
2. Henry and Viora lost themselves / ヘンリーとヴィオラ (arai tasuku)
3. ever better (at her open door)
4. You’ll Remember It feat.Tujiko Noriko (AUDIO BOXING)
5. Rivers (:PAPERCUTZ)
6. Lemoncholic (Stripmall Architecture)
7. last all spring long (Sundelay)
8. Dark Adaptation (Aureole)
9. Wonderland (köttur)
10. Prizma (Glaschelim)
11. Gondola (Meme)
12. Sour Times (cellzcellar + 大野まどか)

kilk records(森大地)

2010年、Aureoleの森大地により設立。「精神に溶け込む、人生を変えてしまうほどの音楽との出会い」。kilk recordsはそういった体験を皆様にお届けすることを第一に考えております。オルタナティヴ・ロック、ポスト・ロック、エレクトロニカ、テクノ、サイケデリック、プログレッシヴ、フォーク、アヴァンギャルド、アンビエント、ヒップ・ホップ、ブレイクコア、インダストリアル、ジャズ、クラシカル、民族音楽…。魂を震わせるような音楽であれば、ジャンルは一切問いません。kilk recordsが最もこだわりたい点は「独創性」です。信じられないほどの感動や興奮は「独創性」から生まれるように思えます。これから多数の作品をリリースしていきます。末永くkilk recordsにお付き合いくだされば幸いです。

kilk records official HP


高野修平

1983年。東京都生まれ。 インターネット広告代理店セプテーニ入社。web制作会社を経て、現在はデジタル・マーケティング、ソーシャルメディア・マーケティング支援会社トライバルメディアハウスにてコミュニケーション・プランナー / サブ・マネージャーとして所属。 音楽業界ではレーベル、事務所、放送局、音響メーカーなどを支援。 音楽業界以外にも様々な業種業態のコミュニケーション・プランニングを行っている。 音楽においては日本で初のソーシャルメディアと音楽ビジネスを掛けあわせた著書『音楽の明日を鳴らす-ソーシャルメディアが灯す音楽ビジネス新時代-』、『ソーシャル時代に音楽を”売る”7つの戦略-“音楽人”が切り拓く新世紀音楽ビジネス』を執筆。講演、寄稿など多数。 また、THE NOVEMBERSのマーケティング、コミュニケーション・プランニングなども手がけている。

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始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング 戦略PRとソーシャルメディアでムーヴメントを生み出す新しい方法

いまの時代どうしたら「音楽で世の中を動かせるのか?」

森大地(以下、森) : 高野さんの新刊『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング〜戦略PRとソーシャルメディアでムーヴメントを生み出す新しい方法』を読ませて頂きました。こういう本って曖昧に書いてあることも多いんですけど、具体的に活用できそうな内容でした。

高野修平(以下、高野) : ありがとうございます、光栄です。

森 : 具体的にこうすればいいということが示されていて。特に戦略PRについての話は興味深かったです。

高野 : 1冊目の『音楽の明日を鳴らす~ソーシャルメディアが灯す音楽ビジネスマーケティング新時代』では、僕の専門がソーシャルメディアということもあって、それを音楽とどう融合させるかという誰も書いてないテーマを書きたかったんです。でも書き終ったときにそれが主題ではなかったとはいえ、「これで世の中が動くのか?」っていうと、やはりソーシャルメディアだけでは動かないなと思って。

森 : はい、そうですね。

高野 : そうなると相棒となる戦略PRが必要だなと思いました。だけど「戦略PR」という言葉がまだまだ勘違いされているな、と感じていて。「プレスリリース出しとけばいいんでしょ?」っていうのとは全然違うんですよ。まずはそこの誤解を解くことから始めて。もちろんパブリシティは大事なんですけど、それだけじゃ意味がなくて、いまの時代どうしたら「音楽で世の中を動かせるのか?」というテーマで本を書きたいというのが最初の出発点になっています。

始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング

森 : 本当に目からウロコでした。読んでみて率直に僕が聞きたいなと思ったことが、実際は広告費がかかっているんだけど広告っぽく見せないPRってあるじゃないですか? それについてはどうお考えですか?

高野 : 最初にそうなっていてもある種仕方ない部分もあると思うんですが、ベースとなる戦略PRという概念を理解できているかどうかがすごく重要です。それを踏まえないでやっても、結局うまくいかないと思います。わかった上で同じことをやるのはまた違うと思いますし、予算だったりスケジュールとかタイミングもあると思うんですけど。結構戦略PRって壮大な話になりがちですけど、大事なのは「世の中を動かす」ことだけではないので。音楽だったらインディーズのシーンの中でどれだけ空気作りが出来るか、ムーヴメントを起こせるかというのも戦略PRのひとつだと思います。

森 : 僕がやっているkilk recordsは日本のインディーズではアングラ寄りだと思うんですけど(笑)、書籍に出てくる言葉で言えば「世の中ゴト化」にすることは可能だと思いますか?

高野 : 「世の中ゴト化」にするには難しいとは思いますけど、森さんがやっているような音楽だとまずは「仲間ゴト化」のトライブ(“年代や性別を越えて共通の趣味や価値観で形成されるグループ”の意)をどれだけ作れるかがキモだと思います。

どれだけコミュニケーションできる楽曲のメッセージや世界観を作れるか

森 : 僕がやっていく中での迷いというのが、近いシーンの中でトライブを作って見せるか、そこにとどまらずに一般の人にも見せるかということなんです。場合によってはアーティスト自身の音楽の発信の仕方にも関わってくることだと思うんですが、僕が考えているのは音楽を変えずにいかに大衆に見せるかなんですけど、高野さんはどのような見せ方がよいとお考えですか?

高野 : おっしゃる通りで、音楽に強度がないとなにをやっても薄っぺらくなっちゃうと思うんです。だから音楽のよさを中心に広げていくための武器としていろんな文脈を付与させる必要があるんですよね。いまの時代はいろんな楽しいことがありますから、その可処分時間の中で、いかに音楽に時間をいただくか。音楽だけではないものを付与することで興味を持ってもらって、そこで音がよければ好きになるでしょうし気に入らなければそれきりだし、そこはシビアに見ているんだと思います、生活者は。例えば、THE NOVEMBERSはご存知ですか?

森 : はい、もちろん。

高野 : 僕は今彼らのマーケティングやコミュニケーション・デザインなどをしているんですけど、5月14日に発売になるシングル『今日も生きたね』はシェアCDというコンセプトで2枚組の作品を作ったんです。いまの時代ってソーシャルを使えばデジタル上で簡単にシェアできるじゃないですか?

森 : ええ、そうですね。

高野 : それはいいことなんですけど、今回は楽曲的にそことは違うベクトルを目指したかったんです。ただの新曲をリリースするだけではファン以外に興味を持ってもらうことは難しい。同時にこの時代に、どれだけコミュニケーションできる楽曲のメッセージや世界観を作れるか。それがまず根幹としてありました。重要なのはいかに普段彼らがいるトライブじゃないところに飛ばすかなんですよ。それでこのデジタル時代にシェアの原点に立ち還るというテーマでシェアCDというのを作ったんですけど、2枚組で中を開けるとそのまま自分の大切な人に渡せる。そして、盤面には「To」「From」って自分の名前と相手の名前を書けるようになっているんですね。それを一番大切な人に渡して欲しいという。ポイントは3つだと思っていて。シェアCDという考え方自体は別に新しいことではないんですけど、このソーシャルの時代に敢えて、アナログで誰にでも簡単にシェアできないという逆説的なマーケティングをやるということだったりとか、「シェアCD」という言葉を作ることで、人の言の葉に乗せやすくすることだったり、ニュースとして伝搬させやすくする。そして、「シェアCD」という文脈から既存ファン以外にニュースで届けるってことでTHE NOVEMBERSに対して新しい層の興味喚起のルートを作る。この3つを掛け合わせて、THE NOVEMBERS以外の所まで話題が飛ぶようにコミュニケーションをデザインします。これはTHE NOVEMBERSの「今日も生きたね」という楽曲の世界観やメッセージを、すでにあるトライブへはもちろん、現在THE NOVEMBERSと接続されていないトライブへ伝える方法だったんです。

THE NOVEMBERS『今日も生きたね』

森 : 小さなトライブだけじゃなくて、出来るだけ一般層も含めて知られるためにすることが必要なんですね。

高野 : 外に広げるトライブと“深掘る”トライブと両軸だと思います。だからライヴ・シーンとか、(ヒソミネがある)場所もひとつかもしれないですけど、そこがどれだけ掘れているかですよね。ここを深堀りしてから外に飛ばす方が、順序としては成功の確率は高まるんじゃないかと思います。

>>>>>>第2部に続く