INTERVIEW : SAWA (前編)

2013年6月21日にデビュー5周年を迎えた、女性シンガー SAWA。そのプロフィールは、かなりスマートだ。幼少期にバイオリンとピアノを習い絶対音感を身に付けたところで、音楽人生をスタートさせた。そして本格的な活動は、FreeTEMPOの全面プロデュース作『COLORS』でのCDデビューから。現在では自ら楽曲制作もおこない、佐々木希やアイドル・グループ、ワンリルキスの楽曲プロデュースしたり、活動の幅を広げている。さらにいうと、アーティスト活動をはじめる前は、高校で英語教師をしていたという。まさに音楽にとどまらない多彩な才能の持ち主なのである。

しかし、そのプロフィールを読んで、楽曲を聴いて、ライヴを見て、彼女を理解しようとすればするほど、SAWAというアーティストの中心にはなにがあるのか気になって仕方がなくなってしまった。なんでもできるからこそ、その中心になにがあるのかも見えづらい。日常生活をそのまま歌にしているわけでもなさそうだし、完全なフィクションの世界を描いているわけでもない。そしてサウンドはクラブ・ミュージックを基軸としたり、最近では独唱もしたりしている。一体SAWAとは、どんなアーティストなのか? デビューから5年を迎えた彼女の魅力をつかむべく、2回にわたるインタヴューでじっくりと迫った。

取材 & 文 : 西澤裕郎

最終形は、デーモン小暮さんや掟ポルシェさんのような立ち位置に憧れます

ーーSAWAさんは、ヴァイオリンもピアノも弾けて、楽曲制作もできる、歌もうたえる、英語教師をしていたことがある… と、実に器用な方だと思うんですね。その反面、一番コアな部分が見えづらいなと思って…。

SAWA : あはははは。器用貧乏ってことですか?

ーーいやいや(汗)。その核にある部分ってなんだろうと思って。プロフィールも、出身地のこととか必要以上に公表していないですよね。

SAWA : そのへんはあまり押し出してきていなくて。っていうのも、どこか宙に浮いたような存在でありたい気持ちがあって。最終形は、デーモン小暮さんや掟ポルシェさんのような立ち位置に憧れます。ファンタジーを持っていたいなって。

ーー要するに「私語り」のような形は出したくないってことですか?

SAWA : そうですね。共感してほしいとか、切ないラヴ・ソングを書きたいわけではなく、宇宙との共鳴とかを目指しているので、あまり現実感がないようにしているんですよね。共感型というよりかは現実逃避型なので、いかに現実を忘れてもらうかに重きを置いていたり。

ーーそれってSAWAさんが触れてきた音楽に、そういうものが多かったんですか。

SAWA : そうですね。m-floやFree TEMPOなどの、うまく現実逃避をさせてくれるアーティストが好きだから、おのずとそういう方向になってきたのかなと。

ーーちなみに、小さいころは友人関係も距離を置くような感じだったんですか。

SAWA : 距離を置いていたわけではないんですけど、どこかドライだったかもしれないですよね。そういえば、中学校くらいのときもプロデュースをしていた記憶があって、文化祭でダンスの振り付けを友だちのグループにつけて、自分は「文化祭は見にいけないから」とか言って行かなかったり(笑)。

ーーあははは。他のインタヴューを読むと「前に出たいタイプ」だとおっしゃられていましたが、自分が出るというよりかは監督的な視点の方があるんですね。

SAWA : どっちもあるんでしょうね。前に出たいけれど、誰かを後ろから支えることによって前に出ることもしたいっていう。

ーーあと、小さいころヴァイオリンを習っていたそうですが、自分からやりたいといったわけじゃない習いごとだったから、すごくイヤだったみたいですね。

SAWA : イヤでしたね。「なんでやっているんだろう?」と思ってましたし、反抗期だったり子供だったりしたこともあって、「なんでこんなに課せられているんだろう?」と思っていました。ヴァイオリンがイヤすぎてその衝動をピアノを習うことで抑えたりしていました。

ーーそれもすごい話ですけど(笑)。

SAWA : 楽器が嫌いというよりも、やらされていたこととか、ヴァイオリンを弾くにあたって求められることが子供には難しいことだったりして。私は抽象的に言われるのがすごく嫌いで、「ススキの野原を思い浮かべて」とか言われると、「めんどくさいなぁー」と。

ーーあははははは。

SAWA : 「そんなの、思い浮かべられないよ!」って。だから、「もうちょっと感情豊かに弾いて」って幼少期に言われたとき、「感情豊かって、なんだろう?」って。それまでの人生の感情を集めてみても、「そんなふうにならない!」って(笑)。

非現実感や宇宙感を出せているんじゃないかなと思う

ーー今もそういう感覚はありますか?

SAWA : 制作する上で、ざっくりしたことを言われるのは苦手かもしれないです。

ーー譜面どおりに弾けることにプラスして、抽象的な部分もピアノを弾くに当たって求められる部分だと思いますが。

SAWA : 求められていたんでしょうね。自分でアレンジを効かせて好きに出していくのは好きなんだけど、それをやれって言われたらイヤだったりして。

ーーだったら具体的に指示を出されたほうがいい?

SAWA : そうですね。音に関しても譜面を見て音を出してきたから、音が目に見えたほうがよかったりして。最初は作曲するときは無音の状態で紙に書いて、全部の音のラインを決めてから打ち込んでたし。楽器を鳴らしながらなんとなく作曲していくというタイプではなく、譜面を書いていたから、目に見えたほうが安心するんでしょうね。歌詞を聴くタイプの人間と聴かないタイプの人間がいて、私はまったく聴かないタイプ。なんとなくなにを言ったかは覚えているけれど、「この歌詞やこの曲にすごい思い入れがあったから、こういうときにこの曲をすごい聴いた」っていうメモリーはないんです。そういう意味で、ドライな目線で詞が書けているのかもしれないですね。

ーー歌を作ることは、言葉を使って手紙を書くという作業に似ているんですか。

SAWA : そうですね。エレクトロニカやダンス・ミュージックは、いかに音に合った言葉をチョイスするかということが優先されるので、詞は第2、第3くらいの優先度のところで、非現実感や宇宙感を出せているんじゃないかなと思うんです。

人が見てどれだけおもしろいかを考えます

ーーSAWAさんを語るにあたってもうひとつのポイントは、実際に高校で英語を教えていたという経歴をお持ちなんですよね。昔からなりたい職業だったんですか?

SAWA : そうですね。教師になるか、アーティストになるかって夢があって。結局どちらもやることができたんですけど、小さな頃から「安定しておこう」みたいなところがあって、中高の教員免許を取ったんです。教壇に立つこととライヴをすることは実は似ていて、やっていることは同じだったり重なる部分はあると思います。

ーー一自分1人が生徒全員と対面するっていうのはライヴと似ているかもしれないですね。ただ、ライヴと違って、勉強に興味のない生徒の目を自分に向けさせたりするのはライヴより大変なんじゃないですか。

SAWA : そうですね。ほとんど話術が勝負なんだと思います。話術と空気感で授業の空気を作り込むしかないので、集中させるような間の取り方とかを考えますよね。

ーーそのときの話術がライヴに活かされているのかもしれませんね。MCのトークが達者でおもしろいですもんね。

SAWA : いやいや(笑)。

ーーどれくらいの間、教師をされていたんですか。

SAWA : 期間は全然短くて、3ヶ月程です。

ーーずっと憧れだった教師になってみたときは、このままずっとやっていきたいと思いませんでしたか?

SAWA : もちろん思ったんですけど、教員はいつでもできるので、将来やるためにとっておこうと思って、アーティストに挑戦したんです。

ーーオーディションで、生徒さんとなにかしたんでしたっけ?

SAWA : いや、「生徒役」というシチュエーションを選択しただけで、私が教師役で、後ろで2名の女の子のダンサーに男子高校生の格好をしてもらって。踊るという点がフックになるんじゃないかと思ってやりました。実際の生徒とは絡んでないですよ。

ーーそこに教師と生徒という設定を持ち込んだのは、やはり教師経験からですか?

SAWA : そうですね。せっかくやったので活かそうかなと。

ーーそのときも「こういう見せ方をすれば」という一歩引いた視点から、考えていたんですか?

SAWA : そうですね。私は教員として教壇に立っていたわけだから、教師役としてライヴをすればフックにはなるだろうとか、歌がそこまでうまいとは思わなかったから、他のところで色を付けて目立たせようとかプロデュース目線はありましたね。

ーー例えば、「ミュージシャンになるのが夢でした」っていうのわわかりやすいんですけど、SAWAさんの場合は大きく違いますよね。SAWAさんにとってアーティストというのはどういうものなんでしょう。

SAWA : 自分を表現する場所ではあるんですけど、プロデュースして自分を出していくというところが大きいかもしれないですね。

ーーそれって、ざっくり言えばエンターテイメント性に着眼しているということですか?

SAWA : そうですね。エンターテイメント性がどれだけあるかはすごく考えますね。仮に歌がすごく上手かったとしても、それだけじゃ無理だと思うし。そういうところで、人が見てどれだけおもしろいかを考えますね。

ーーSAWAさんにとってのアーティスト評価の基準があるとすれば、「いかに楽しませるか」だと。

SAWA : そうですね。現実感がないほうがいいので、現実逃避とかいかに楽しませるかってとこですかね。

5周年を迎え、これからに向かうSAWAへのインタビュー後半は7月上旬公開予定

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筆者について
西澤 裕郎 (西澤 裕郎)

1982 年生まれ。ファンジン『StoryWriter』編集長。http://storywriter-magazine.com/

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