This is 石巻ここが現場だ。不謹慎だろうと貫くHIP HOP

楽団ひとり & KICK-O-MAN / NORTH EAST COMPLEX part 3.11

津波の影響で被害の特に大きかった宮城県石巻市に住むラッパー、楽団ひとりとKICK-O-MANのもとをFragmentが訪れ電気の復旧もされてない中 携帯のボイスレコーダーで1発録音。このアカペラに音を付け加えた形で発売する。売り上げは全て楽団ひとりとKICK-O-MANへ直接渡します。音楽で生まれたお金が少しでも彼らの家族や仲間との今後に繋がればと思います。

Director by 大月壮
pro. by Fragment
scratch by Quviokal aka DJ sho/hei
photo by deii
art work by leno



INTERVIEW

ーーかなり衝撃的なジャケットで、録音もヴォイス・レコーダーとの事でしたが、現在安全な場所で生活されているのでしょうか?

楽団ひとり(以下、G) : まず、ジャケットの写真についてですが、石巻は沿岸の港町ですので、ああいった光景は川沿いを歩けばざらに見ることができ、その辺りに住む我々にとってはごく日常、いわば「当たり前」の光景になってしまっています。それでも、河口からはかなり離れていて、本当に海沿いの集落は完全に壊滅し更地になっています。現在は、継家が営んでいた飲食店の二階部分に生活しており、電気と水道は復旧したので、かなり人間的な生活を送ることが可能にはなりました。が、地盤が沈下したために、潮位が高くなる「大潮」の日になると若干の冠水を起こし、沿岸部に至っては一時的に車輌が通行できないほどに冠水すると聞きます。

ーー今作を製作した決意とは、どのような心境でしたか。

G : 協同製作のKICK-O-MANから、「曲を書きましょう」と持ちかけられていたのですが、如何せん長期間の停電により、なかなか製作できずにいました。僕としては、安否確認の代わりに一曲書こうか、ぐらいの感覚だったんですが、日を追う毎に被害状況が明確になり、いろいろな情報が錯綜する中、現地から何か発信するべきなんじゃないか、という考えが芽生え、そのタイミングでfragment両氏からのお話もあり、こういった形で作品を発表させていただくことになりました。

ーー録音をしたのは震災何日後の事だったのでしょうか。

G : 13日目です。ようやく自衛隊の生活救援活動が始まってきたころだったと思います。

ーー今作を聴く人に、伝えたい事とは?

G : リリックに込めました。あとは聴く方に委ねます。

ーー震災前と後で、新しく考えるようになった事などはありますか?

G : 身近なことに感謝できるようになりました。例えば、飯が食えて、具合が悪ければ病院に行けて... 人との接し方も変わってきたように感じます。些細なことでも、素直に手を差し伸べて助け合うことが抵抗なくできるとか、そういうレベルですけど。

ーー震災後、多くのアーティストが被災された方々や今回の地震についての曲を発表しましたが、それらを聴いてもらえているでしょうか。

G : 正直あまり聴いていません。DOTAMAとGAGLEは聴きましたが、それどころじゃなかったのが本音です。

ーーそうした曲を聴いてみて、どんな心境になるものでしょうか?

G : 聴くと「うわー俺被災してるんだなぁ」と滅入っちゃいそうなのと、聴いたら聴いたでラッパーとして悔しくなるので敢えて避けていた部分はあるかもしれません。最近は生活も大分落ち着いてきているので、少しずつ追いかけようかなぁとも思います。

ーー「不謹慎と言われようが」とありますが、この「不謹慎」という言葉に対して思うことはありますか?

G : 不謹慎厨が一番不謹慎だと思います。なんでもかんでも自粛するのが美徳だとは到底思えません。特に、子供たちがそういった風潮のしわ寄せを食らうのは嫌ですね。

ーー現状を伝えるという意味ではカメラによる写真は非常に貴重ですが、「カメラを持ってる場合じゃねぇぞ」と叫ぶようにライムした心境とは?

G : 報道機関の出入りが頻繁になってきた頃、事実を広めてもらうのはすごくありがたいことだなと思う反面、俺らがあいつらの飯の種になっているのかという悔しさもありました。

ーーずばり、現状を伝えるための音楽? それとも自分たちの叫びでしょうか。製作を終えて、どう振り返られますか?

G : 両方でしょうか... 音楽が生活の一部にある以上、自分にとってはごく自然なアウトプットっていうだけで、製作としては終わったかもしれませんが、まだ始まってもいないというのが正直なところですね。聴いた方や同業者のレスポンスがあって、またいろいろ変わってくるのだと思います。

ーー実際の現状と、マス・メディアが放送する被災地の現場では、異なった様子なのでしょうか?

G : テレビ見れてないのでなんとも言えないです(笑)。ひとつ言えるのは、皆さんが想像するより現地の人はたくましいです。もちろん、全員がそういう訳ではありませんが、極端な話開き直らないとどうしようもないので、そういう意味では前向きです。

ーー被災していない私達が、被災された方々にできる事とは何でしょうか。

G : 被災地以外が元気にならないと、被災地が元気になるわけがないと思っています。もし、被災地に親族や知人がいる方は、是非会いに来て欲しいです。被害がひどかった地域なら尚更。来て、見て、空気をすって、なんだったら炊き出し食って一泊するぐらいの勢いで来て欲しいです。気負って手助けじゃなくてもいいので、被災地を体験してみてください。

ーー逆に、今はやめてほしい事とは。

G : かといって観光地でもないので、モラルある行動を望みます。最近、被災地観光ツアーが始まっているみたいなので。

ーー改めて考えてみてほしい事、今後の日本を再建していく若い世代の人たちが考えるべき事とは、何でしょう。

G : 「当たり前」のありがたさを持つことと、想像力をちょっぴり働かせること。それだけです。自分も被災者ですが、それが製作を滞らせる要因とは考えません。これを不謹慎というなら、不謹慎被災者で結構です。ヒップ・ホップはどんな局面でも萎縮しない文化だと思っています。自粛したい人だけ勝手に自粛しててください。俺たちは前に進みます。それが復興であり、供養だとも思うので。

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