U.G MANをやっていた時は、自分たちの音楽が最先端だと思ってやっていた
——UG KAWANAMIとしてミックスCDを発表されていますが、わりと最近の曲も入ってますよね。最近のバンドも追いかけているんですか?
すごく追っかけてますね。バリバリ聴いてますよ。
——それは90年代からずっとそうしているんですか?
いや、2005年くらいからですね。それこそU.G MANをやっていた時は、自分たちの音楽が最先端だと思ってやっていたから、新しい音楽をあまり欲しなかった。バンドを辞めて最近の音楽はどうなっているのかなと思って、友達の洋服屋さんの事務所のCDを何となく見てたら、ラフ・トレードの店員が選んだ2枚組のコンピレーションがあったんです。それは新旧取り混ぜて色々入っていたんですけど、結構知ってるのが入ってたから聴いてみたら、エレクトロニカみたいな感じで、昔のプログレみたいのも入っていた。そこにフィッシャー・スプーナーが入ってて、それが衝撃だったんです。結構ニュー・ウェーブとか聴いてたから、俺の知らないバンドがあるんだって思って調べたら今のバンドだったんですよ。昔、音楽を聴いて感動した時のような気持ちで聴けるっていうのがびっくりして、これは聴かなければと思ったんです。
——それがDJの活動に繋がっていったんですか?
DJはやってくれって言われてやっただけで、別にDJになりたいわけじゃないんです。自分のスキルとして出来るけど、なりたいわけじゃない。その辺のギャップや葛藤はありますね。DJは、やっぱDJになりたいって思わないと出来ないと思うんです。
——じゃあ、この先DJを続けていくって明確な意思があるわけじゃないんですね。
DJをやっていこうって意識はないですね。MIX CDは、中学校の時にカセット・テープで作ってたことの延長戦で、ずっと中学生から続けているんですよ。だからそれに関するスキルは高いと思うし、楽曲をコンパイルして一つの世界観を提示するってのは自分でも自信があるんですけど、飽きたら多分辞めますね。最近のインディのロックとか、はっきり言って少し食傷気味なんですよ。なんでかっていうと、みんないいんですよ。平均点がすごい高い。だから大して驚かなくなっちゃった。聴きすぎてるってのもあるんですけど。自分の中で飽きてきている。
——それじゃあ、今やりたいことがあるとすれば、それは何でしょう?
レゲエのMIX CDを出したいと思ってます。夏終わって冬くらいに(笑)。夏にレゲエって暑苦しくて聴きたくないじゃないですか。冬とか秋口くらいに夏を思い出して聴くのを想定してます。それも、普通にレゲエじゃなくて無理矢理なレゲエみたいな感じで、なんとなくレゲエかなって曲を並べたい。レゲエって民族音楽じゃないですか。みんな大してわかってないけど、分かってるふりしてると思うんですよ。ディープに聴いている人もいると思うけど、分かってるふりを利用して、錯覚させるみたいな事を考えている。
——ニュー・ウェーブを聴いていたとおっしゃっていましたが、やはり普通のロックよりも何か驚きや新しいことを目指した音楽を聴いてきたんですね
そうそう。所謂体系化されたロックみたいなものは全然聴いてないですから。普通ビートルズを聴いて、ストーンズを聴いてみたいなのあるじゃないですか。そういうのは1枚も聴いたことないですから。パンクのレコードも曲を聴けばわかるけど、自分からセックスピストルズは聴いたことないですね。ロックのマスターピース的なのは俺が聴かなくてもいいだろうって思っていた。それは世間の人が聴けばいいと思ったから、俺は全然知らない。レゲエみたいなやつはすげえ聴いてましたけど。
——なんで、そこまで避けていたんでしょう?
みんなが聴いていいって言っている音楽はたいして面白くないじゃないですか。そういう発想の元に聴いてないですね。
——そういう点でLess Than TVのバンドは、一癖二癖あるような気がしますがどうでしょう?
そういう部分はあると思いますけど、俺にとっては普通。それが当たり前っていうか、そんなに特別な感じはしてない。それほど特異な感じはないですね。
——それじゃあ、また自分で音楽をやってやるって意識も出てくるんじゃないですか?
それはないですね。全然興味ないです。かっこよければ何でもいいんです。その時たまたまDJがかっこいいなと思えばDJでいい。だから、みんながどういう気持ちでバンドをやってるのかわからないんですよね。俺はかっこいい事をやりたいと思っていたからU.G MANをやっていたし、かっこつけてただけなんですよね。みんな、どこに目的があるか分からない。かっこいいと思ってやってるのはいいんですよ。別に曲とか以上にかっこよさが欲しい。例えばギターウルフって名前で3人が出てきて、ジャーンとやって、それだけでもかっこいいじゃないですか。
——そういう意味で言えば、音楽雑誌は曲やバンドに意味を持たせるものも多くて、それを文面通り受けてしまう人もいると思いますよね。
でも本来、聴いてる人間はどうでもいい事じゃん。だから、自分がU.G MANでやっていた時は極力そういうのを無くそうとした。そんなことどうでもいい。この曲はこう苦労してっていうのがダサい。もちろん、何も考えず、ただやればいいってものでもないですけどね。
聴かれない音源とか、観てもらえないライヴほど不幸なものはない
——そういう部分で、Less Than TVの作品は余計なことを考えず気持ちよく聴けると思います。
かなり本気ですからね。その辺は覚悟決めてやっている。まずは身内を納得させなきゃいけない。ダサかったら周りの友達まで疑われちゃうじゃない。友達いないんじゃないこいつ?! みたいな。だから、とりあえず周囲を納得させなきゃいけない。ハードルは高いですよね。周りがダサイっていわれちゃったらツライですからね。
——一見すると仲間内で集まると、間違えても大丈夫って保険をかけているようにも捉えられますからね。
だから、間違えるとするじゃない。間違えたって事実自体に何の意味もない。見てる人間からしたら、間違えようがうまくいこうが、まったくどうでもいい事で、その辺でもう少しぶっちぎってくんないとつまらない。自分がやっていたときは、間違えても何だって思ってた。例えばうまいバンドがいたとして、だから何だって思うし物足りないんですよね。別にうまくなくてもいいんだけどって思う。発表会じゃないんだから。
——その点でプンクボイさんは、ぶっちぎったライヴをいつもしていると思いますがどうでしょう?
プンクボイは普通に曲がいいですからね。ノイズだの何だって言われているけど、曲が良い。プンクボイを見てると最終的に完全に泣きますからね。かなりソウルフルになってくじゃないですか。ブルースですね。みんなそれぞれブルースを抱えてると思うんですけど、プンクボイはかなりブルース。そういうところではかなり共感しますね。
——身内を納得させるっていうのは、なにより難しいですし、谷口さんのハードルは高そうですよね?
そう。谷口くんが良いって言うところのハードルが高いから。トク(プンクボイ)とかはみんなに鍛えられた部分もある。ちっちゃいからベースのアンプに立ったほうが良いんじゃないとか、みんなの意見を総合してよくなっていった。
——対バン同士がいい緊張感を持ったライブは、観ている側も次は何が出てくるんだろうって期待して観れますからね。ただ目的のバンドを観て、対バンを観ないって人も多いみたいで、それはバンドにとってもお客さんにとっても勿体無いですよね。
そこで完結してますからね。そういうのを聞いていつも思うんだけど、聴かれない音楽ってあると思うんですよね。一生懸命やって作っても、みんなが聴いてくれない。一生懸命つくった曲、バンドでライヴやって誰も観てなくて、次のバンドが目当てだから観られないってすごく不幸ですよね。例えば俺だったら、みんな俺ライヴやるから観てよ観てよって絶対言うと思う。いいからとにかく観てって。聴かれない音源とか、観てもらえないライヴほど不幸なものはないと思いますし、やる意味ないと思います。だから、作品として世の中に出す、自分以外の誰かに観てもらう、聴いてもらうっていうのを考えられないとダメですね。
——Less Than TVのイベントは、いつも刺激がありますよね。カワナミさんもkirihitoと一緒にKIRIMANJAROで歌ったりしてましたし。
それは多分自分たちが飽きないようにしてると思うんですね。だって5つバンドが出るなら、フルで楽しみたいじゃないですか。楽しむには努力しないとダメなんですよ。なんでつまんないっていうと努力してないからなんですよ。なんでつまんないのか、どうしたら面白くなるのか、考えて考えて努力しないとつまんないで終わっちゃうんですよね。そのつまんないのが嫌なんですよ、Less Than TVって。つまんないことはやりたくないし、つまんないものは見たくないってことだと思う。面白いものにむけて努力しようって。だからハリジャス・ペーパーの谷口くんが北海道にワカサギ釣りに行ってます。ってフレーズだって面白いじゃないですか。あの写真と文章でお釣りがくる。かっこよければいいんですよ。
Less Than TVは何でも話しながら考えていった
——面白さという点から、メテオナイトでこれをやったらイイんじゃないかってアイデアはありますか?
俺なら、谷口くんの等身大ポップを作るね。谷口モンスターみたいなトーテム・ポールを会場の前に置いてさ。谷口くんは銅像になるべきなんだよ。谷口くんが銅像になりましたみたいに、メテオナイトの会場に置く。Less Than TVは最初の頃、何でも話しながら考えていったんです。そこに谷口くんの銅像立てようって言ったらみんなウケるじゃない。ひとしきりウケた後で「さっきの銅像の話なんだけど」ってマジで考える。鹿コアもそう。鹿のマスコットを作って、CDの回るとこに置けるようにしようって言ってみる。実際は置けないんだけど、鹿が回るって面白いじゃんって笑ってた。鹿を乗せるっていちいち書いてあるけど、乗んない(笑)。いちいち面白い。その都度考えるんです。CDに載せるサイズの鹿はどれくらいあるだろうって調べたりとか。
——(笑)。ところで、メテオナイトって名前はどうやってつけたんですか?
夜中にみんなでスケートをしていたんですよ。暗いのに谷口くんはメガネかけていなくて、俺たちのことを見えてない。だから、いきなり横からバーンって突進して来る。谷口くん危ないから周りを見て! って言うと、ごめんごめんって言うんだけど、ちょくちょくそれがふいにくるんですよ。さあ何かしようって時に突拍子もない方向からバーンって来るから、流星みたいだなと思って。谷口君メテオじゃん。メテオ来たよ、うぜえなとか言ってて、今度ライヴやるから名前を何にするって時に、メテオでいいんじゃないってさ。
——あはははは。Less Than TVって面白さをビジネスっぽくしないところがすごいですよね。
ビジネス的なことは一番最後に考えるんですよ。まずやりたいことを考えて、それじゃあいくら必要ってなった時に、Tシャツを作ったりして売るみたいに最後に考えるんです。やっぱ、オーディエンスに分かられちゃうとつまんないから、なるべく分けわからなくする。それこそ自分たちが分かんないくらいが丁度いい。確かにいいとは思うけど、絶対いいとは言えない。でも何かいいと思える。それが丁度いい。やってる本人もどうかなって思うんだけど、いい部分をみつけてくれる人が必ず出てくる。人に言われて、初めてやっぱ面白いでしょって気づく。それを人に見せる面白みがある。やってる本人達も見る人たちも何となくわかっちゃう予定調和的なライヴってつまんない。それだと面白くないよね。
——メテオナイト、より楽しみになりました! じゃあ最後に、カワナミさんの今後の予定を教えてください。
さっき言ったレゲエのMIX CDを冬頃に出したいですね。あとDJはいやなので、呼ばないでくださいって書いといて下さい(笑)。
Less Than TV NEW INFORMATION
2010.08.03 OUT!!!
METEO NIGHT DVD
ch-70 / 1050yen(in tax)
あのひと夏の悪夢が蘇る。2005年に開催された、レスザンTVによるアンダーグラウンド・ミュージックの祭典“メテオナイト”! 恵比寿〜代官山で15時間ぶっ通しで行われた夏祭りが、まさかの映像化! 緊急発売!
LIQUID ROOM
idea of a joke / bloodthirsty butchers / イルリメ / herpiano / ECHO / VOLUME DEALERS / BREAKfAST / M.A.G.O. / DEW UNDER / U.G MAN / YOUR SONG IS GOOD
Street LIVE / プンクボイ
UNIT
nemo / ECD & ILLICIT TSUBOI / 赤い疑惑 / STRUGGLE FOR PRIDE / corrosion / デラシネ / サイプレス上野とロベルト吉野 / SUSPIRIA / TEXACO LEATHERMAN / ANGEL O.D.
interview
森川(idea of a joke) / 吉村秀樹(bloodthirsty butchers) / イルリメ / 斧寺カズトシ(ECHO) / 森本雑感(BREAKfAST) / JxJx(YOUR SONG IS GOOD) / ECD / 今里(STRUGGLE FOR PRIDE) / 風間コレヒコ(デラシネ) / やけのはら / プンクボイ
Discography of Less Than TV
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