SEBASTIAN Xのファンタジー・ワールドへようこそ!

SEBASTIAN Xという、意味はわからないんだけど妙に耳馴染みのよいバンド名を名乗るこの男女4人組のデビュー作『ワンダフル・ワールド』は、リリースから瞬く間に大きな反響を呼び、気がつけばここ1年で現れた新世代バンドの中でも一際注目される存在になった。まさに今の彼らは上昇気流に乗っている最中だ。しかし、彼らはそんな取り巻く状況の変化をしっかりと踏まえつつ、あくまでも自分達の鳴らしたい音楽に忠実であろうとする。周囲からの期待や偏見には捉われない。シーンとかはもちろん「新世代」なんて言い方で括られるのも真っ平御免。この4人で生み出した幻想の中を自分達は生きていく。そして完成したアルバムは、前作以上に賑やかで、アンサンブルの強度を増した力強い作品に仕上がった。タイトルは『僕らのファンタジー』。彼らの音楽は、またしてもたくさんの人の日常を飛び越えていきそうだ。

インタビュー&文 : 渡辺 裕也

2ndミニ・アルバム『僕らのファンタジー』CD発売より1週間先行配信スタート!

アコーディオンと笛の音色が印象的なアイリッシュなナンバー「フェスティバル」で幕をあけ、本作のリード・トラックのホーン隊を従えたパレード風ラヴ・ソング「世界の果てまで連れてって! 」へと続く。バイオリン、スティール・パンなどをフィーチャーしたポジティヴで明るい曲だけでなく、「ハムレット」などのバラードも聴き所。歌詞ではvo.永原真夏の描く世界観が深みを増した。暗い夜から昇ってくる太陽のような音楽が詰まった全8曲入り渾身の1枚!

〈Track List〉
1. フェスティバル / 2. 世界の果てまで連れてって! / 3. 夏の王様 / 4. DUB湯 / 5. サファイアに告ぐ / 6. ハムレット / 7. 永遠のラスト・ワルツ / 8. GOODMORNING ORCHESTRA


INTERVIEW

ーー前作『ワンダフル・ワールド』から、かなり短いスパンでのリリースになりましたね。

永原真夏(以下永原) : でも前のアルバムをレコーディングしたのは8月だから、そこからはもう1年経ってるし、時間が経つのがすごく遅かった。レコーディングからリリースまでの期間が空くと、「遅いなぁ」って思う。

ーー気持ちとしては早く次のレコーディングに行きたかった?

永原 : 正直に言っちゃうと、私は前のアルバムを出してから2年は新しいアルバムを出す気がなかったんです(笑)。「音楽業界はこんなに早いスパンで回ってるんだ! 」と身に沁みて感じましたね(笑)。でも、その流れに乗ってやろうと思って。前回はそれまでライヴでやってきた曲を詰め込んだもので、レコーディングに向けて作った曲はなかったから。今回の曲はレコーディングに向けて作ったんです。もう途中で泣きそうになりながらがんばりましたよ(笑)。

ーー2枚目は1枚目よりも難しいっていう人も多いけど、みんなの場合はどうでした?

永原 : 前作をリリースすることになってから、自分達の身の回りにあることで、まだ納得出来ていなかったことがたくさん出てきたんです。レーベルを通して自分達の音楽を送り出すのが初めてのことだったから、いろいろと半信半疑な部分もたくさんあったんです。そこで私達の回りにいる親切な人達に、自分達が今置かれている状況を一からちゃんと教えてもらっていくうちに、ツアー・ファイナルを終えた頃にはすべてすっきりして、また気持ちよく臨めるようになった。バンドとか曲作りに関しては、みんなとずっと一緒にやってきて、自信もついてたから、迷いも何もなかったですね。だから今回のアルバムの方が、音楽だけに集中して作った感じがしています。

ーーメンバーの関係に変化はあった?

工藤歩里(以下工藤) : 前よりバンド・メンバーっぽくなったかな。前はやっぱり友達っていうのが第一だったし、話もプライべートな話題が多かったんだけど、最近は音楽をやるために集まったっていう感じが強くなったよね。

ーー前より4人で過ごす時間が増えたから?

永原 : それもあるし、少し関係性を変えていかないと、バンドがうまく回らないと思ったんです。
沖山良太(以下沖山) : そういうところはありますね。でも僕の場合はバンドにかける時間が増えたのと同時に、まだ大学院生でもあるから、バンドと学校の両方が忙しくなって、なかなかみんなで遊ぶ時間がなくなっちゃったんですよね。前からバンド活動で休みなく集まってたけど、それ以外の時間を一緒にとることが難しくはなってきたのかもしれません。
永原 : でも結局ほぼ毎日会ってるからね。
工藤 : そうなってくると、音楽の話だけしてりゃいいって訳にもいかなくなるよね(笑)。
飯田裕(以下飯田) : そーかなー、(関係性は)そんな変わってないんじゃないですかねぇ?
一同 : (笑)
永原 : でも飯ちゃん、前までは電話で話す時も「真夏ちゃーん! 」みたいな感じだったのに、最近は「明日あれ持ってきてください。よろしくお願いしまーす」みたいな感じじゃん(笑)。
飯田 : (笑)うそー! ? それは気づかなかったわ。
沖山 : だから、みんなも気がつかないうちに、前には見えなかったような側面が見えるようになってきたんじゃない?
飯田 : それも見せる割合の問題だよ(笑)。友達同士の付き合いでしか考えてなかったからさ。

ーー以前にはなかったような創作活動へのこだわりも出てきた?

永原 : 逆になにも考えない方向にシフト・チェンジしました(笑)。気になることなんて腐るほどあるんだから、むしろ出来る限りわがままを尽くそうと思ってます。なんでもやってやろうと思ってる。
工藤 : 真夏は本当にそんな感じ。だから私は以前よりも回りをよく見るように心がけるようになりました。今回のアルバムからは特にそういう意識が強くなりましたね。

ーーでも、これまでもSEBASTIAN Xっていうバンドはそういうメンバー間のバランスで成り立ってきたよね。真夏ちゃんが矢継ぎ早に出していくアイデアを、みんなが整理していく感じというか。

工藤 : うん。バランスは変わってないですけどね。ただそこを前よりもみんなが自覚するようになった。

ーー今回のアルバムは、前作以上にアッパーな印象を受けたんだけど、音楽的な新機軸もたくさんありますね。特に「サファイアに告ぐ」っていう曲がすごく象徴的でした。前回話した時は、「自分達はそんなに音楽のことを整理して考えたりしない」って言ってたけど、今回はすごく自分達の鳴らしている音楽を客観的に捉えてから作ったんじゃないかなと思った。

永原 : 確かに言われてみるとそうかな(笑)。心のどこかで「こういうアルバムになったらいいな」っていう理想を持っていたのかもしれない。でも意図してこうなったっていうわけじゃないし、特に方向性も決めてはいなかったです。ライヴをたくさんやってきた中で、自分達の長所と短所がはっきりしたとは思う。でもそこで気づいたのは、お互いの悪いところばっかりを気にして直そうとしていると、どうしてもドングリの背比べみたいになっちゃうんですよね。その分良いところをしっかり伸ばせばいいんだって。そういうところがこのアルバムに出ていると思う。

ーーじゃあ、その悪いところと良いところって?

永原 : 自分に関して言えば、歌詞に私利私欲が入りやすいんですよね。「いやだ」とか「ダルい」っていう気分の時は、それがそのまま歌詞に出ちゃうんです。でもその気分を隠したりはしないで、ちゃんと自分の好きな言葉で表現しようと考えるようになった。
飯田 : それ、答えになってる(笑)?
永原 : だから! 私利私欲がすぐ出ちゃうのが悪いところで!
沖山 : (笑)それを綺麗な形にまとめられるようになったって事だよね?

ーー(笑)自分の心情を歌詞に託せるのはいいことだと思うよ。

永原 : そうなんですけど、それをそのままの形で出したら、全裸で人前に出るようなものじゃないですか!
飯田 : その話、前もしたじゃん(笑)。

ーー(笑)そこで真夏ちゃんに服を着せてくれるのがみんなだっていう話だったよね?

永原 : そうそう! でもそれを自発的に出来るようになってきたんです。

ーーあ、それは成長だ。

永原 : そう。成長したんです(笑)。
飯田 : 確かに歌詞に関しては以前よりもそういう意識を感じますね。プライヴェートでは見えてこない部分が歌詞に表れるようになってきたというか。前までは、一メンバーだからわかるようなところが歌詞に思いっきり反映されていたんですけど、今はもっとしっかりパッケージしたものになってると思う。
永原 : 前まではすごく事柄に捉われて歌詞を書いていたんです。悲しい気分の時はそのまま悲しい詞を書いてた。でも今は、悲しい気分から他の気分に移り変わる時の、感情のグラデーションみたいなものに着目するようになりました。この感情がどこから現れてどこに消えていくんだろうってことを考えてみたり。

ーーそれはタイトルにもなってる「ファンタジー」っていう言葉とも関わってくる?

永原 : もともとファンタジックなものが好きだったんですよ。『スター・ウォーズ』とか『スター・トレック』とか『ネヴァー・エンディング・ストーリー』とかね。
工藤 : (笑)いいね。
永原 : で、「サファイアに告ぐ」が出来た時に、すごくファンタジックな曲が出来たと思ったんです。そこでアルバム全体をもっとファンタジックな感じにしたいなと思って、みんなにもそう伝えたんです。
飯田 : 「ファンタジー」という言葉が出た事で、アルバムのテーマが見つかった感じはありましたね。
永原 : さっきの話に戻っちゃいますけど、これはメンバーの長所を指した言葉でもあるんです。それって今まですごく伝えにくいところだったんだけど、それを「ファンタジー」という言葉にして伝えたら、その長所をグッと伸ばす事が出来るんじゃないかと思ったんです。だから、このタイトルはメンバーから引っ張られて出てきた言葉なんです。

ーー今って、作り手がリスナーとの間にある共通認識を歌うのが普通になっちゃってるでしょ? でも、現実を飛び越えるような音楽を生み出せる人がやっぱりアーティストなんだと思うんだ。だから、今回はタイトルを知った段階ですごく期待したし、実際に聴いたらすごくアッパーな作品でびっくりした。もっと「自分達と向き合いました」みたいな感じになっててもおかしくなかったと思うんだ。

永原 : (笑)うんうん。なんか、目をつぶって作った感じがあるんです。ツアー中にいろんなバンドと対バンしていると、知らず知らずのうちに影響を受けちゃってることもあるんです。でも誰からも影響を受けたくなかった。人から何を言われても「そうですねー」って言いながら、右から左に受け流してました(笑)。自分の好きな音楽のことも人には内緒にしておいて、このアルバムを作ってみんなに聴かせてからびっくりさせてやろうと思ってた。自分の世界を荒らされたくなかった。

ーー自分のファンタジーを守ってるんだ?

永原 : あ、それだ!
工藤 : おー(笑)!
永原 : 自分のファンタジーがだんだんリアルになっていくのが許せなくって。「私の聖域には誰も触れられない。勝手にみんなのものにしないでくれる? 」って。
工藤 : (笑)確かに「今、籠ってるなー」っていう時はわかります。こそっと私に「人から影響受けたくないんだ」って言ってきた時もあったし(笑)。
永原 : いい共演者がいっぱいいたんです。でも、世界中には他にももっといろんな個性があるんだから、近いところで変に影響されたくなかった。それって安直過ぎるし。

ーー『ワンダフル・ワールド』をリリースしてから、SEBASTIAN Xの音楽に触れる人は格段に増えたし、これからもっと増えていくと思う。それって同時に、SEBASTIAN Xに対して聴き手の抱くイメージがもっと拡散していくことにもなると思うんだけど、みんなはそれにどう対処していく?

永原 : 見ざる聞かざるで(笑)。あとは忘れるとか?
工藤 : あるね(笑)。
飯田 : (笑)対応しきれないものには対応しようとしなくていいかなって気はする。
沖山 : どこかに標準を定めたりもしないと思う。
永原 : 世間的には、たくさんの人が自分達の音楽を聴いてくれて、それで生活できるようになるのが一番いいと言われているけど、私はどうしてもそう思えなかったんです。私はそうじゃなくても音楽をやってきたし、今までの私達を否定するようなことはしたくない。このまま音楽をやっていければいい。そう思えたら、これから先も楽しみに思えたんです。だって、音楽を作って生計を立てられるのが一番なんだとしたら、誰も聴いていないのに歌っているどこかの民族の歌には意味がないことになっちゃう。どこかの民族が歌っているのと同じ感覚で、自分達も音楽がやれるはずだと思ってる。一音楽ファンとしての私は、あるバンドが解散したとかよりも、どこかの民族が歌うのを止めたっていう話の方がよっぽど悲しいんです。

ーー前のインタヴューでロック・スターについて話した事は覚えてる? ちょっと記事には載せられなかったんだけど(笑)。

永原 : (笑)した! 覚えてる!

ーーその時に真夏ちゃんは「スターになんかならなくていい。私は真夏ちゃんでいい」って言ってたんだ。でも、さっきの「自分のファンタジーを守りたい」っていう話って、ちょっとマイケル・ジャクソンみたいだなとも思ったの。

工藤 : (笑)わー!
永原 : (笑)でもそうかも。私はネヴァー・ランドを守りたい(笑)。それって大変ですよね。でも私にはいい友達がたくさんいるから、大丈夫。

ーー(笑)みんな笑ってるけど。

飯田 : (笑)大丈夫!
工藤 : (笑)大丈夫だよ。
永原 : ツアー中に、間違いなく10代の子達がキャーキャー言ってる時があったんだけど、その子達は別に私達の事はどうでもよくて、その会場に集まって騒いでいることが第一なんですよね。つまり青春なんです。でも、その子達が大人になって私達の音楽を聴いたら、その時の事を思い出すんだろうなと思ったら、私の役目はこれなんだと思った。ライヴってステージが中心なんじゃなくて、客席が中心なんだと思った。

ーー音楽が残ればいいってこと?

永原 : そう!

ーー歌詞にも「音楽」っていう言葉がたくさんでてくるもんね。

永原 : 音楽が前よりもっと好きになりました。音楽にまつわる知識とか文化に夢中になっていた時期もあったけど、今はそれよりも、脈々と続いている音楽の歴史の一端に自分達が存在できていることが嬉しいんです。

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LIVE INFORMATION

  • 2010/07/31(土) @宇都宮KENT wienners-CULT POP JAPAN TOUR-
  • 2010/08/11(水) @三重県 津市 まん中広場 NOBIROCK納涼音楽祭2010
  • 2010/08/12(木) @酒田MUSIC FACTORY 庄内もっけだフェスティバル2010 -好ぎだ! もっけだ! 庄内!-
  • 2010/08/13(金) @仙台PARK SQUARE ジェットロックフェス 2010 - 5th 〜オワリカラ 1st album "ドアたち" レコ発ツアー〜
  • 2010/08/14(土) @下北沢BASEMENT Beat Happening! VOL.365回記念SPECIAL GIG! 〜N'夙川ボーイズ2ndアルバム『LOVE SONG』レコ発パーティin 東京〜
  • 2010/08/21(土) @吉祥寺WARP 『SEBASTIAN X ワンマンライブ』
  • 2010/09/05(日) @吉祥寺WARP他 INDEPENDENCE DAY〜Episode2〜
  • 2010/09/07(火) @新宿MARZ ソンソン弁当箱 presents 「カルチャーショック都庁 1」 〜1st Album 「ロマンの日本」 レコ発プレ〜
  • 2010/09/11(土) @新宿LOFT、新宿MARZ、新宿Motion(3会場往来自由、SEBASTIAN Xの出演会場は未定です) TOKYO NEW WAVE 2010 presents "GO BACK TO SHINJUKU"
  • 2010/09/17(金) @名古屋ROCK'N'ROLL オワリカラ1stアルバムレコ発 "ドアたち"ツアー
  • 2010/09/18(土) @京都nano オワリカラ1stアルバムレコ発 "ドアたち"ツアー
  • 2010/09/19(日) @神戸Helluva Lounge オワリカラ1stアルバムレコ発 "ドアたち"ツアー

PROFILE

08年2月結成の男女4人組。08年6月初ライブを行なう。その後ハイ・ペースなライヴ活動を展開。08年8月に完全自主制作盤『LIFE VS LIFE』リリース。新世代的な独特の切り口と文学性が魅力のVo.永原真夏の歌詞と、ギターレスとは思えないどこか懐かしいけど新しい楽曲の世界観が話題に。 なんだか凄いことになってるインパクト大のパフォーマンスも相俟って、ライヴ・ハウス・シーンでも一際目立ちまくっている存在に。09年11月6日に初の全国流通盤となる『ワンダフル・ワールド』をリリース。

SEBASTIAN X official web site

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筆者について
渡辺 裕也 (渡辺 裕也)

1983年生まれ。福島県二本松市出身の音楽ライター。twitter ID:@watanabe_yuya

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