VOL.3

金沢ローカル・レポート担当のさんちゃんです。第3回も金沢のアーティストとイベントを紹介したいと思います。

金沢について今月のちょこっと書き。みなさんが石川県と聞いて思い浮かべられる地名はどこでしょう? 能登(輪島、和倉)、金沢、加賀や小松、このあたりでしょうか。こうしてならべてみると、加賀温泉郷(山中、山代、粟津や片山津)、和倉温泉などの温泉が多いですね。これらは金沢市内からは車で1時間以上かかりますので、金沢で一泊、温泉で一泊なんていうのがいいですね。でもそんな時間がない、という人にオススメしたいのが、金沢から15分程の場所にあるひっそりとした温泉宿です。犀川温泉、湯涌温泉や深谷温泉などで、これらは実はかなり歴史のある温泉なのです。金沢に来られるときの参考になれば幸いです。

第3回となる今回は、富山県出身、現在は金沢を中心に活動しているソロ・アコースティック・ギター・アーティストの石川征樹です。



石川征樹

1979年富山市生まれ。中学生の頃からギターを始め、ハードコア・バンドを組み地元で活動。20才頃からジャズやヴォサノヴァとの共演をきっかけに、アコースティック・ギターに興味を持ちはじめる。金沢に拠点を移し、ノイズ・サイケ・バンドsigiriyaのメンバーとして活動。現在は主にソロでギターのインストゥルメンタル・ライブを行っている。金沢メロメロポッチと富山村門ロフトにて定期ライブを行っている。2008年に自主制作アルバム『心洗』、2009年にはHarvest moon recordsからデビュー・アルバム『地平線』をリリース。そのオリジナリティ溢れる奏法と音色は話題を呼び、ウィンダム・ヒル・レコードのウィリアム・アッカーマン氏も絶賛する孤高のギタリスト。2010年3月27日にはsign-pole recordsより金沢出身のピアニスト、佐野観との即興演奏アルバム『共鳴』を発売する。

INTERVIEW

——sigiriya以降の征樹さんしか僕は知らないんですけど、その前はハードコア・バンドをやってたらしいですね。今は生音にこだわった、かなり静かな演奏をしてることが多いから、一体どういうルーツがあって、そしてハードコアから今のクラシック・ギターのスタイルにたどり着いたのか、とても興味があります。そもそも音楽をはじめたきっかけは?

石川征樹(以下I) : 親父がフォーク好きで、アコースティック・ギターが家に転がってたけど、全然興味なかった。だからまさかギターをやることになるとは思わなかった。小学4年生くらいからリコーダーにはまって、女子に混じってリコーダーの練習ばっかりしてた(笑)。

——大分変わってますね(笑)。

I : え、そうかな? そうかも。担任の先生は珍しがって「どんどんやれ」って言ってくれとった。「剣の舞」でリコーダーのソロのパートをやらせてもらったりしたわ。

——フリーで?

I : いや、それはないわ、小学生でインプロヴィゼーションなんて概念ないやろ(笑)。とにかくリコーダーにはまってて、音楽の授業のない日でもランドセルにリコーダー挿して。あと、そんなことやってたら、おとなしそうな普段はしゃべらんような女子とも話するようになったり。

——コミュニケーション・ツールですね。

I : 今でもそういうところはあるかも。

——口下手ですもんね(笑)。ギターはいつから演奏しはじめたんですか?

I : 中学に入ってからで、友達に「尾崎豊しかないやろ」って勧められて、放課後に俺がギター弾いてそいつが歌うみたいな。駅前とかで弾き語りしたり。単に気持ちいいから弾いてただけかな。

——富山市だけど、結構田舎のほうでしたよね?

I : そう。だから、音楽の情報はそういう友達から入ってくるものに影響された。高校に入ったら友達に洋楽とか勧められて、エレキ・ギターも始めたんやけど、地元のパンク・バンドFTDのライブを見て「うわっ、すっごい音楽があるんやな」って完全にやられた。ちょっと怖いけどなんか惹かれるみたいな。それからしばらくはハードコアしか聞かなくなったなあ、親に「うるさいっ」って言われながら。家でその友達がボーカル、俺がギターでMTRに録音して騒いでたしね(笑)。

——高校を出て金沢に来たんですね?

I : うん。富山で活動してた時から自分のバンドとディフェスト、グラッドリーとはよく対バンしてて、金沢に来てからもよく顔を合わせるようになった。でも会ってもほとんどしゃべらないで3時間くらい一緒にギターひきっぱなしみたいな感じやった。それでそのメンバーとsigiriyaをすることになった。

——その後僕が加入した頃の印象では、とにかくいつも小さいアコースティック・ギターを持ち歩いてましたね。

I : 今でもそうやけど、時間さえあればギターを弾いてた。(※インタビュー中も僕がトイレに立ったらギターを持ってた。)sigiriyaをはじめてしばらくした頃からアコースティック・ギターで自分の曲もなんとなく作るようになって、バンドではエレキ、家ではアコースティックっていう感じになってた。それからアコースティックでカフェとかバーのBGM的な演奏をするようになって、そしてソロでのライブでオリジナル曲もやるように段々となっていったね。

——確かその頃はエレアコだったけど、最近はクラシック・ギターですよね。

I : うん、最初はかなりパーカッシブな表現をしてたね。今はより細かい表現をしたいからガット・ギターを使ってる。そうやってアコースティックになったら、影響を受けるものが減ったんよね。もちろん会場には絶対左右されるんやけど、その他の、例えば電気的な音作りの影響からは解放された。

——そうやってどんどん生音に傾向していったんですね。メロメロポッチの月例ライブも今はPAなしになりましたもんね。

I : 会場にもよるけど、最近はアコースティックはPAなしで出来るのが自分の中の基本やね。生音でやる。お客さんも大変かもしれないけど。無音の部分を大事にできるような。例えば、演奏が終わっても自分もお客さんもじっととまってる瞬間があって、メロメロポッチではそういうことがしっかり成立する。静かな部分を大切にしてくれる。これは生楽器がいいという意味ではなくて、どんな楽器を使っていても同じやと思う。自分はエレキからエレアコ、クラシック・ギターへと移って来たけど、それはその時々で自分の意識を表現できるものを選んでいるだけやったんやと思う。

——メロメロポッチの月例は完全な異空間ですよね。曲はどんどん出来てるみたいですけど、どんな風に作ってるんですか?

I : 基本的にはインプロヴィゼーションからメロディを拾い上げて、つめていく感じかな。

——そうやって湧き出てくるものを表現してるんですよね。それって一体何かとか考えますか?

I : 出てくるものが何なのかと言われると難しいよね。けっこう曖昧で、それは… 瞑想? 一人でやってると精神的な世界に入っていくよね(笑)。体調にも左右されるし、ここにあるような、ないような感じというか、溢れ出るわけのからんパワーみたいなものがあって。やっぱり言葉が見つからないけど、やっぱり瞑想? バンドなら複数の人間の関係性から何かが出てくるものなんだろうけど、一人でやってて出てくるのは、「自分が何なのか」って自分を見つめるのが基本になって出てくるんだと思う。

——それがあるから続けられる?

I : そういう溢れ出るものと、それを表現する技術の両方が大切で、だから続けられるんじゃないかな。

——そうやって続けた結果、2009年には渡米してWilliam Ackermanのところで演奏して来ましたね。

I : その時は短い滞在だったけど、今度行く時はゆっくり行ってレコーディングしてきたいね。

——2010年はまず佐野観とのアルバム『共鳴』のリリースですけど、これもアコースティック同士の即興作品ですね。

I : アコースティックって、一見とっつきやすいんだけど、でもわかりにくい世界なんじゃないかな。例えばノイズとかもマニアックやけど、ソロ・ギターもマニアックではあるよね。多数派ではない。でも、みんな触れる機会がないだけで、実際いろんなところで演奏すると反応はあるんよね。だから、とにかくいろんな生の音楽に触れて欲しい。『共鳴』もピアノとギターのアコースティックといっても、そんな堅苦しいものじゃないからね。

——そうですね、より多くの人に触れて欲しいですね。では『共鳴』のリリース・ライブを楽しみにしています。