「世界でいちばん頑張ってる君に」など、数々のCMソングでもお馴染みのHARCOが、1年半ぶりのフル・アルバム『tobiuo piano』をリリースした。今作はピアノをフィーチャーしたアコースティック・アルバムで、あたたかい歌声としっとりとした曲調が味わい深い。

彼は、CDの制作にかかる電力をグリーン電力でまかなったり、奥さんであるQuinka,with a Yawnと共に「きこえる・シンポジウム」というイベントを開催するなど、積極的に「エコ」に取り組んでいる。その活動があるからこそ、彼が紡ぐサウンドは、こんなにも美しく、そして生々しく響くのではないか?

tobiuo piano』は、とても優しい作品だ。そして返ってきたインタビューからは、溢れんばかりの思いやりを感じることが出来た。

インタビュー&文 : 井上沙織

INTERVIEW

—ピアノがメインのアコースティック・アルバムを作ろうと思ったのは何故なのでしょうか?

HARCO(以下H ) : ここ数年アコースティック・ピアノでの弾き語りのライブの機会が増え、そういった弾き語りのアルバムが今まで1枚もなかったので、ごく自然な流れで。と言いつつも、はじめは賛同する人も少なかったのですが、ここ最近、僕自身が家で聴きたくなる音楽が静かなものが多く、どうしても作らせて欲しいとスタッフの皆にお願いしました。それというのも、僕がよく音楽を聴くのは最近は寝る前の時間帯になってきていて、その頃はきまって疲れきっているので、癒してくれるようなやさしいものをよくチョイスしていたのです。あ、そんなアルバムを自分でも作りたい、となったわけです。何種類かのピアノを曲調によって弾き分けたのが楽しかったですね。


—松任谷正隆の「夜の旅人」やKANの「東京ライフ」のカヴァー、そしてご自身のリカヴァーも収録されていますが、それぞれの楽曲に対する想いや考えを教えてください。

H : どちらもライブで一度歌ったことがありました。松任谷さんの「夜の旅人」はアルバムのタイトル・チューンで、歌詞はユーミンなのですが、ネガティヴな感情をあえてポジティヴに捉えるところがいいなと思いました。同じ歌詞に対してメロディが2種類出て来る箇所があったりと、ソング・ライティング冥利に尽きる工夫が施されていて同じ作り手にはたまらないです。KANさんの「東京ライフ」はオリジナルも弾き語りに近い、シンプルなアレンジ。隠れた名曲ではありますが、ファンの間では必携、必聴の1曲。いろんなKANさん好きにありがとうと言ってもらえました。もし御本人がこれを知ってそう思ってくれたら、死んでもいいくらい嬉しいです。


—6/28からはじまるツアーを、他の楽器を入れずにピアノの弾き語りでまわろうと決めたのは、何故なのでしょうか?

H : たとえば普段、東京でアコースティック・ピアノだけのライブをするときに一番好きなところは、機材もなく電車で楽々と行けるのと、ゆっくり飲んで帰れるところです。そんな気分を全国で味わってみたいと。つまりはトビウオのごとく飛んだワガママから派生しているのですが、それは半分冗談なのでご安心を。シンプルな構成でなんの衒いもなくお客さんに届けたら、どんな気分で帰ってもらえるだろうというところに、挑戦したいと思いました。呼吸というか、「間」が勝負になる気がします。


—『tobiuo piano』の制作(レコーディング全行程・CDプレス・ジャケット印刷)には、風力発電所で発電されたグリーン電力を100% (1,000kWh)使用されたと伺いました。通常の制作と異なる点などはありましたか?

H : 使用した電力を後で報告し、電気量に応じた金額をグリーン電力の団体などに支払って環境活動に貢献するという形なので、音源の制作過程で通常と変わることはありません。ただし制作後に電気量を調べるために各方面に連絡したり、風力発電の企業の方とグリーン電力証書の発行に関するやり取りを幾つか行ったので、そういった作業は必要になりま す。ちなみに僕のレコーディングは自宅を使う事が一番多く、もともとの電気代もそんなにかかっていないので、その時点でエコだったりします。


—Quinka,with a Yawnさんと共に開催している「きこえる・シンポジウム」は、「音楽」と「エコ」をテーマにしたイベントですね。どのようなきっかけではじめたのでしょうか?

H : 一緒に暮らし始めて数年経つなかで、自宅のゴミがなかなか減らないことをはじめ、生活のなかでここをこう改善すれば環境的によくなるんじゃないかということを徐々に話し始めたことがきっかけです。ライブ以外にトークの場を設けていて、環境コンサルタントやNPO法人の方、農業の仕事をしている方などをゲストに呼んで、興味深い話を毎回してもらっています。半年に一度行っているのですが、これからもこのペースと内容をなるべく変えず、そしていろんな地方都市でも地元の方と連携して、すすんで開催していきたいと思っています。


—HARCOさんの音楽活動とエコは密接な関係にあるように思えます。HARCOさんにとって、「音楽」と「エコ」は、どのようなものなのでしょうか?

H : 生活のなかで電気やあらゆる既製品の恩恵を受けている上に、僕は音楽をCDにしたり、ライブで電気を使ったりしていて、そのぶん余計にCO2排出はもちろん、地下資源を使い続けているわけで。今すぐゼロにすることは難しくても、出来る限りゼロに近付けるために積極的に動いて、さらにいろんな人が動いてくれたら今度はマイナスになるということ、それが気持ちよく音楽を作って歌うことと直結しています。造語にするとASR(Artist Social Responsibility)です。これはミュージシャンによっては考え方はまったく違うと思うし、それで全然いいと思いますが、僕はこのスタイルがしっくりきてます。


HARCO WORKS


MARICOVER / erimba with HARCO

マリンバ奏者 erimbaこと大橋エリとのユニット。耳馴染みのある洋楽・邦楽の名曲をお洒落に新解釈した、 チャーミングなマリンバ・カヴァー・アルバム。歌うように響くマリンバの音色は優しくて軽快で心地よさ抜群です。

LIVE SCHEDULE

HARCO with PIANO 2009 〜夏はカツオにトビウオピアノ〜

  • 6月28日(日) @大阪koo'on
  • 7月20日(月/祝) @札幌くう
  • 7月23日(木) @名古屋TOKUZO
  • 7月25日(土) @金沢もっきりや
  • 7月26日(日) @長野ネオンホール
  • 7月31日(金) @吉祥寺Star Pine's Cafe
  • 8月20日(木) @福岡ROOMS
  • 8月22日(土) @高松SPEAK LOW
  • 8月28日(金) @仙台BACK PAGE
  • 8月31日(月) @青森Cafe mousse

LINK

PROFILE


HARCO

青木慶則のソロ変名ユニット。97年よりHARCO(ハルコ)名義で活動を開始。シンガー・ソング・ライターでありながら、キーボード全般、ドラム、マリンバなど多くの楽器が演奏できるマルチ・プレーヤーでもある。CMの作曲や歌唱、ナレーションでも注目を集める。00年、V2 Records Japanよりメジャー・デビュー。Coa Recordsにて2004年から毎年発表したセルフ・プロデュース・ミニ・アルバム3部作が注目を集めるなか、05年11月にリリースしたスズキアルトCMソング「世界でいちばん頑張ってる君に」(POLYSTAR/witz)がスマッシュ・ヒット。オリジナル作品以外にもYUKIにREMIXや楽曲提供で参加、NHK教育テレビ番組の音楽を担当するなど、活動は多岐に渡る。HARCO10周年にあたる07年は、初のベスト・アルバム「PICNICS -BEST OF HARCO- [1997-2006] 」を、 12月には実に5年ぶりのフル・アルバム「KI・CO・E・RU?」をリリースした。08年は7月にマリンバ奏者大橋エリと"erimba with HARCO"という名義で「MARICOVER」を、12月にQuinka,with a Yawnとのユニット"HARQUA(ハルカ)"にてミニ・アルバムをリリース。近年は音楽とエコのイベント「きこえる・シンポジウム」を半年に1回を目安に行なっている。


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筆者について
井上 沙織 (さ)

ototoy編集部で日々山盛りの仕事に囲まれながら、素敵な音楽や人との出会いを探しています。

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