2008/12/18 00:00

変異は突然起こる。マヒルノ、遂にデビュー!

サーカス。それは現実の世界に存在しながらも、テント一つで区切られた、限りなく非現実的な世界である。エンタテイメント性と胡散臭さが混在し、サイケデリックで不気味であるのにも関わらず惹きつけられる。の音楽は、そんなサーカスのイメージに近い。自主制作で出したデモCD-Rが各方面で話題を呼び、ライブでも圧倒的な存在感を放つ彼らが、遂にデビュー・アルバムとなる『辺境のサーカス』をリリースした。インタビュー後に「トラウマと影響は紙一重」とも語った赤倉・河野両氏。一度観たら忘れられない、その強烈な世界観やデビューに至るまでの経緯について話を伺った。

インタビュー:井上沙織

INTERVIEW

自主制作盤は、外向きになれるきっかけになった

—ついに公式盤がリリースされましたね。

赤倉「もともと自主制作盤を出していて、自分からアンテナを立てているような、一部の人にしか届いていないなっていうのがあったんです。良い、悪い、っていう判断をされるにしても、やっぱりもう少し広いところにまで届くといいなって兼ねてから思っていて。あんまり人と似たようなことやってるつもりもないし、楽曲そのものに関しては自信があったんです。でもライブとレコーディングとでは違うイメージがあったので、総合的に楽曲を音源という形で表現するのに時間が必要だったって感じですね」

—自主制作盤はディスク・ユニオンをはじめ、多くのレコード・ショップで委託されていましたが、その中でもハイライン・レコーズなんかは下北沢色というか、ギター・ロックのイメージが強い所だと思うのですが、マヒルノは異色ながら支持されていましたよね。

赤倉「ハイラインに関しては、その反応の良さが心から意外でしたね。絶対全く相手にされずにCD棚の肥やしになって終わるかなって思ってたんで。僕らみたいな奇妙な…シンガロングも出来なければ、のってる途中でビートが変わってしまうようなバンドは受け入れてもらえないかと思ってたから自信になりましたね」

河野「2年、3年とライブをやっていて、無意識にお客さんを選んでいたところがあったのかなあと。自分達から聴いてもらう層を決めてしまっていたんですね。でもいざ取り扱ってもらったら、そういうところでも聴いてもらえて。それで、なんで俺らがお客さんを選んでたんだろう、良くなかったなって、いい意味で外向きになれるきっかけになりましたね」

—もともと、どのように結成されたんですか?

赤倉「僕と河野とドラムの張江が同じ大学で。でも皆学年も違ったし、ギターの大竹も偶然知り合った感じだったんで、よそよそしかったですよ、最初は。だからここまでいい感じにうまくいくとも思わなかったです。それだけに毎回新しい発見があるというか」

河野「そうだね。本当に皆バラバラだったら多分こんなに続いていなくて。色々作っても結果的に統一感のある曲がそろってきて。そこで皆面白いかもなって思えてる。バンドのカラーを決めてなかったけど決まってきて、そこに意識が自然に向いていったかなと」

赤倉「曲が僕らを結びつけた感じですね」

—楽曲は重厚でオリジナリティがありますよね。○○っぽいとかジャンルとか、形容しづらい音だと思います。

赤倉「僕とか大竹が作る曲に関しては、僕らは同世代で活躍してるバンドの音源をあまり聴かないので、そういう意味で今出てる人たちに近いよねっていうのがないかもしれないです。あまのじゃくなので。あんまり同じことをやっても、その中でどっちが良い、悪い、とかそういうことになってしまうんで。それだったらそういうものさしが全く通用しないところで、皆が混乱できる音楽を作れたらいいなって思いますね。あと、メンバーの趣味がバラバラなので、その中での誰かのパワー・バランスの押し引きとかでも曲が出来たりします。だから曲には一貫性がなかったりしますね」

河野「結成時からスタンスはあまり変わっていないんですけど、皆お互いの持つものに対して寛容になったんじゃないかな。誰かがものすごく強いリーダーシップを発揮して、そこから楽曲を作るというよりも、もっとゆるやかに、個々のいいところを集めてって感じで。一番難しいことですけどね」

赤倉「それだけに全員が良いと思える状態で出来た曲は自信がありますね。一曲出来上がるまでには時間かかりますけど、妥協で作るより前向きな意味合いで出来てる。同じスタイルで安定感を求めるのはつまらないと思うので、今後もいい具合に変化していけたらなって思います」

リアルがチヤホヤされるときなだけに、非現実の良さを表現したい

—今回のアルバムには、流れがありますよね。曲はどのように選んだのですか?

赤倉「今回は決まるべくして決まった感じですね。大体のボリュームのイメージと、核となる曲があって。流れに関してはライブだけでなく、通して聴いたときのストーリー性を意識しました。曲の並びで聴こえ方が変わってくると思うし、シャッフルされない曲順じゃなきゃいけないよなって。もともと6曲をバラバラに作っていたんですが、結果的にこう並べてみると深読みできる感じになって。作り手としてはニヤニヤしちゃいますよね」

—すごく映像的な音楽だと思いました。

赤倉「サントラとか好きですね。映画音楽を作っている人とは別の切り口でやっていて、でも結果的にそういうふうに形容されるのであれば嬉しいです」

—アルバムのタイトルを含め、曲名や自主企画イベントのタイトルなどでも、"サーカス"という言葉を良く使われていますね。

赤倉「単純にそのイメージが好きなんです。非現実的な感じが。僕は実際にサーカスに行ったことないのであくまでイメージなんですけど、どこかいかがわしかったり地に足の着いていない感じだったり。現実と非現実の境目というか、そのシュールな感じっていうのは好きですね。そういう愉快で、でも怪しい感じにできたらいいなと思ってます。リアルっていうのがすごくチヤホヤされるときなだけに、頭の中の世界っていうのは素晴らしいんだよって」

—次回作の予定は決まっているのでしょうか?

赤倉「年明けからアルバムを作ろうと。曲はもう揃ってます。今作はデモを持ってる人にはやっぱり手を出しづらいところがあったと思うんですけど、次は新しい曲もいっぱいあるんで、今回と次回の二つのアルバムでイメージをつかんでもらえたらなって思いますね」

LIVE SCHEDULE

マヒルノ1st mini album『辺境のサーカス』リリースパーティ!!!!

マヒルノ企画"辺境のサーカス パート5"

12/19(fri)@渋谷O-nest
guest/Fresh!(downy, SPARTA LOCALS, music from the mars), YOMOYA
open/start 18:30/19:30
adv/door 1500/2000
LAWSON; L76436

LINK

マヒルノwebsite 

マヒルノmyspace 

マヒルノの素敵な写真 

大竹康範(guitar, vocal)
河野岳人(bass, chorus)
赤倉滋(vocal, guitar)
張江浩司(percussion, glasses)

悪夢のように懐かしい、既視感さえも新しい、向こう側とこっち側を行ったり来たりのアクロバティックな彼岸音楽。高貴で艶やかな、めくるめく真昼のプログレッシブサイケデリア。2005年夏の結成以降、3枚の自主音源と数多のライブを経てより軽やかになったその足跡は、辿ればそのままオルタナティブが夢見た未来形。

この記事の筆者
井上 沙織 (さ)

ototoy編集部で日々山盛りの仕事に囲まれながら、素敵な音楽や人との出会いを探しています。

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