2017/09/07 00:00

秘密のミーニーズがみせた、昇華という名の“サイケ・フォークな変革”──初のフル・アルバムを配信開始

2010年代に突如現れたサイケ・フォーク・ロック・バンド、秘密のミーニーズ。男女混声のコーラス・アンサンブルを軸とし、時にはフォーキーに、時にはサイケデリックに煌めく独自のサウンドは、瞬く間に人々を虜にし、2014年〈FUJI ROCK FESTIVAL〉の新人アーティスト登竜門ともいえる《ROOKIE A GO-GOステージ》 への出演も果たした。それから約3年の月日が流れた2017年9月6日。バンド初のフル・アルバムとなる『イッツ・ノー・シークレット』がリリースされる。ドラムの脱退、新メンバーの加入、ベース兼ヴォーカルを担当していた淡路がヴォーカル専任になるなど、様々な変革を遂げた彼ら。その3年間の結晶となった今作は、情緒溢れる甘く気だるげな楽曲やバンド初のインストゥルメンタル楽曲、ギターによる間奏曲など、前作までの“ザ・西海岸”なサウンドの予想を上回る変化球が詰まった作品となった。OTOTOYでは今作を1週間の先行配信でお届け。さらにOTOTOY限定ボーナストラックをつけて配信します。秘密のミーニーズの変革が詰まった『イッツ・ノー・シークレット』を、レヴューと共にお楽しみください。

OTOTOY限定でボーナストラックも!

秘密のミーニーズ / イッツ・ノー・シークレット

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz) / AAC

【配信価格】
単曲 162円(税込) / アルバム 1,728円(税込)

【収録曲】
1. ねずはうす
2. モーニングレイン
3. アルカイックスマイル
4. 風はざわめき
5. #無題1(instrumental)
6. ハマナス特急/海岸線より(instrumental)
7. 虹の架かる丘を越えて
8. 名前のない鳥
9. ヌマベの踊り
10. ローリン・アンド・タンブリン
11. 麗しの四姉妹
12. #無題2(instrumental)
13. 藪の中
14. 虹の架かる丘を越えて(reprise)
15. 虹の架かる丘を越えて(reprise)DEMO (OTOTOY限定ボーナストラック)

秘密のミーニーズ/『イッツ・ノー・シークレット』トレイラー
秘密のミーニーズ/『イッツ・ノー・シークレット』トレイラー

REVIEW : 漂う甘さがもたらした、昇華という名の“変革”

少し肌寒い風が頬にあたる夕暮れの帰り道。こんな時に『イッツ・ノー・シークレット』を聴きたいと思った。急ぎ足でなく、ゆっくりと、オレンジ色の空の下で思いにふけりたい。そう感じたのは、アルバム全体を通してのレイドバックなサウンドが印象的だったからかもしれない。

M3「アルカイックスマイル」の冒頭、ドローンなギターの音色を聴いた瞬間、男と女の気怠くも美しい午後が脳裏に浮かんだ。これまでの秘密のミーニーズらしいウエストコースト・ロックのカラッとした空はそこにはない。前作から約3年の間、彼らが直面してきた環境の変化、新メンバーによるリズム・セクションの変化などから得た、さまざまな想いがまるで集約されているかのようだった。そんなアンビエントなサウンドに、聴く者の心はすっと引き込まれるだろう。

そして続くのは、はかなくも芯のある歌声と、優しくきらめくピアノの旋律が印象的なM4「風はざわめき」。海辺の夕焼けに“あなた”の横顔が照らされる情景をふっと思い出させてくれる。紐解けない儚さが音として心に響き、時を忘れて聴いていてしまいたくなる。そんな心を、更に掴んで離さなかったのがM6「ハマナス特急 / 海岸線より」。まさかのバンド初となるインストゥルメンタル楽曲となるこの曲の舞台は架空の電車。怪しげで美しいギターにすっと入り込むオルガンにより、広がりのある浮遊感を思わせる曲となっている。インストゥルメンタルでここまで柔らかな質感を表現してくるなんて……。予想外の楽曲に視界が淡くなる。

秘密のミーニーズ/名まえの無い鳥
秘密のミーニーズ/名まえの無い鳥

しかし、もちろん彼らのお家芸である複雑な3声コーラスと煌びやかなギター・サウンドが特徴的な、ウエストコースト・ロックのサウンドも健在。ペダルスチールやカラッとしたタンバリンの音色が印象的なM8「名まえの無い鳥」。そして〈rollin’,rollin’ くるくる回って lonely,lonely 朝まで踊ろう〉といった歌詞からも思わず腰をゆらしたくなるような疾走感のあるM10「ローリン・アンド・タンブリン」。M8から続く4曲は、まさに秘密のミーニーズらしいキャッチーな楽曲たちともいえるだろう。

そしてアルバムのクロージング・タイトルとなるのがM7の原型となった「虹の架かる丘を越えて」。アルバム前半部分のレイドバックな楽曲と、後半部分のキャッチーな楽曲の質感をうまく融合させるかのような、最後の1曲。M7よりも広大さを感じさせるメロディラインと軽やかなストロークは、少しだけ、懐かしさが遠ざかるようにフェードアウトして終わっていく。

このフェードアウトで、少し我に返った。気づかぬ間に楽曲たちに引き込まれていたのだ、と感嘆すると同時に、この優しく情緒あふれる日本語ロックを今作で全面におしだしてきた彼らの”これから“が気になって仕方がなかった。煌びやかなアコースティック・ギターや複雑な3声コーラスで魅せるウエストコースト・ロックと、甘く漂う日本語ロックと。これらを絶妙に融合させる彼らの作品集は、昇華という名の“変革”が、まだまだ止まらないことを、そっと物語っているかのようだった。(Text by 福田 愛)

過去作もチェック!

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LIVE SCHEDULE

〈秘密のミーニーズ『イッツ・ノー・シークレット』発売記念ライヴ〉
2017年9月29日(金)@渋谷ラストワルツ
時間 : OPEN 19:00 / START 19:30
料金 : 前売り 2,500円 / 当日2,800円 (税込み ドリンク別) 出演 : 秘密のミーニーズ / BAND EXPO(西村哲也 / 青木孝明 / コーノカオル+矢部浩志) / ポニーのヒサミツ

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PROFILE

秘密のミーニーズ

〈CSN&YThe〉、〈Byrds〉など60〜70年代の西海岸ロック&3声コーラスに強い影響を受け、リバイバルブームを目論みつつ、コーラス・サウンドと長尺ジャムも交えた独自のサウンドを展開する。

公式HP : https://secretmeanies.jimdo.com/discography/
Twitter : https://twitter.com/secret_meanies

この記事の筆者

[レヴュー] 秘密のミーニーズ

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