REVIEW : 鬼才、OPNが手がけた本年度カンヌ・サウンドトラック賞受賞OSTをハイレゾ配信

もはや2010年代の電子音楽を象徴する存在といっても過言ではない、ダニエル・ロパティンによるプロジェクト、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下、OPN)。2015年のアルバム『Garden Of Delete』リリース以降の2年間も、オリジナルのアルバム・リリースはないものの、アノーニのアルバムをハドソン・モホークと手がけたり、FKAツイッグスとのコラボの噂などなど、その話題には事欠かない。そんなOPNの新作は、映画『Good Time』(日本は11月公開)のOSTとなっている。映画はNYで銀行強盗を企てる兄弟、その弟が逮捕され…… という、1文の映画紹介と、すでに公開されているトレイラーから伺い知ることしかできないものの、映画自体はおそらくかなりスリリング&物騒な内容ではないかと。またOSTとしての本作はすでに、本年度カンヌ・サウンドトラック賞受賞。すでにOSTとして高い評価を受けて話題になっている作品。さて鬼才OPNが手がけたOSTとは? OTOTOYでは本作をハイレゾ配信するとともに、CDと同内容の、宇野維正によるライナーノーツPDFが付属します。さらにはこちらのページでは、気鋭のライター、八木皓平による、OPNのその音楽性の変遷とともに、本作のサウンドの解説へと至るレヴューを掲載しております。

24bit/44.1kHzハイレゾ、宇野維正によるPDFライナー付きで配信中

Oneohtrix Point Never / Good Time Original Motion Picture Soundtrack

【Track List】
01. Good Time
02. Bail Bonds
03. 6th Floor
04. Hospital Escape / Access-A-Ride
05. Ray Wakes Up
06. Entry To White Castle
07. Flashback
08. Adventurers
09. Romance Apocalypse
10. The Acid Hits
11. Leaving The Park
12. Connie
13. The Pure And The Damned (feat. Iggy Pop)

【配信形態 / 価格】
WAV / ALAC / FLAC : 24bit/44.1kHz / AAC
単曲 288円(税込) / アルバムまとめ購入 2,571円(税込)

REVIEW : OPN、そのエッセンスが凝縮されたOST

文 : 八木皓平


楽曲の構造は新しいけど、音色はどこかノスタルジックが漂っていること。これがワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下OPN)のサウンドのベースとなっている大きな要素だと考えると、「エクスペリメンタル・ミュージック」といういかにも難解そうなエリアに囲い込まれがちな彼のサウンドの魅力が、グッとわかりやすくなる。初期(『Betrayed in the Octagon』〜『Russian Mind』くらいまで?)は、アンビエント / ドローンという基本フォルムを保ちながら、肝心のシンセの音色はビックリするくらいニューエイジ感が漂っていたりする。タンジェリン・ドリームと喜多郎がユニークなバランスで混ざり合ってる感じです。そのあとに、〈Editions Mego〉から『Returnal』をリリースして、ピタを彷彿とさせるバリバリのノイズが漲ってる冒頭曲「Nil Admirari」でリスナーを驚かせたけど、他の曲を聴くとノスタルジックなシンセが健在でホッとさせられたりということもありました。もちろん、彼のノスタルジー性をチルウェイヴ~ポストチルウェイヴの流れと並行して聴いていた人もいたと思います。そして80年代~90年代のCMソングをサンプリングしまくってアルバム一枚作ったら、それがヴェイパー・ウェイヴの代表作とまで言われたのが『Replica』。〈Warp〉からリリースされた『R Plus Seven』は前作とは打って変わって、全編MIDIでガッチリ作り上げて、構造もミニマル・ミュージックのフォーマットを取り入れてはいるものの、親しみやすい音色のおかげでこちらもかなり聴きやすい。一昨年リリースの『Garden of Delete』は音数を絞ったミニマリズムの形式を軸にしながら、メタルのテイストをけっこうストレートに反映させていて、新しさと古さの捻じれ感が絶妙な気持ちよさを醸し出していた。大雑把ではあるけれど、こんな感じでOPNのキャリアを振り返ると、彼の音楽は難解でとっつきにくいどころか、常にユーモラスですらあるノスタルジアに覆われていることがわかるかと。


それは本作『Good Time Original Motion Picture Soundtrack』でも変わってないのです。変わっていないどころか、自分のキャリアを総決算して、それをサウンドトラックとして成り立たせたところが本作の聴きどころ。そういう観点から本作を聴いていくと冒頭曲「Good Time」や「Ray Wakes Up」をはじめ、シンセが大々的にフィーチャーされてる多くの楽曲は、初期に彼が試みていたチープなシンセを軸にした楽曲を洗練させたものと言えるし、「Bail Bonds」は『Garden of Delete』で聴けるメタル少年の児戯性のようなものがシンセの音色 / フレージングやドラム・トラックに反映されている気がする。「Leaving The Park」のようなミニマリスティックなアプローチの楽曲もしっかりあるし。そしてぼくが本作で1番面白く感じたのが、パーカッシヴな要素がちょこちょこ見られるところ。彼は基本的にドラムやパーカッションのトラックでリズムを作ったりはしないんですよね、周期性はあるけれど。でも本作では「Bail Bonds」や「6th Floor」、「Hospital Escape/Access-A-Ride」などなど、パーカッシヴな要素がけっこうある。これは映画の内容とリンクしているからなのかはわからないけれど、面白い傾向だなと。そして、本作の聴きどころはやはり、イギー・ポップをヴォーカルに迎えた「The Pure and the Damned」。鍵盤の厳かな旋律に導かれるように現れるイギー・ポップのヴォーカルを聴けば、その声が電子音響~エレクトロニカの音楽家たちに引っ張りだこだったデヴィッド・シルヴィアンに匹敵するほど、エクスペリメンタル・ミュージックに似合うものだということがすぐにわかる。時に寄り添うように、時にエモーショナルに独特の音響で鳴り響く、OPNのアクロバティックなシンセがこの楽曲を特別なものにしている。


本作は映画『Good Time』のサウンドトラックだ。そして同時に、紛れもなくOPNの作品でもある。つまり、OPNが自身の持ち味を保ったまま、サウンドトラックというフォーマットに、良い意味で強引に最適化してみせたということだ。だからこそ、本作は彼のキャリアの集大成的な作品になったのだ。別な角度から付け加えれば、このサウンドトラックは、OPNのエッセンスが凝縮されていながら、BGM的な聴き流しやすさも持っているから、OPNをはじめて聴く人にとってもいいかもしれない。映画作曲家ではない音楽家の入門として、その音楽家が手掛けたサウンドトラックを薦めることはあまりないが、本作に関しては別だ。

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Oneohtrix Point Never / Replica

アンダーグラウンドのヴェイパーウェイヴ怪紳士から、このアルバムで2010年代のエレクトロニック・ミュージックの顔になった感も。ある種の出世作、ヴェイパーウェイヴの金字塔的作品とも。

PROFILE


Oneohtrix Point Never

ブルックリンを拠点に実験音楽~現代音楽シーンで今最も熱い注目を集めるアーティスト、ダニエル・ロパティン。彼は、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー名義で様々なレーベルより数多くのアルバムをリリースする他、膨大な数のカセットによるミニ・アルバムのリリースを重ねてきた。2010年作品『Returnal』のタイトル・トラックをピアノ曲へと作り直した際にヴォーカリストとして招いたアントニー・ヘガティ(アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズ)や、現行アンビエント・シーンの重要アーティスト、ティム・ヘッカーとコラボレーションするなど、ドローンにも現代音楽にも接近できる希有な音楽家として、その存在感を確かなものとした。PitchfolkでBEST NEW MUSICにも選出されるなど高い評価を集めた2011 年作品『Replica』では、テレビCMの音からとったローファイ・オーディオの素材を使って制作されていることでも話題に。さらに2011年にニューヨーク近代美術館で、ヴィジュアル・アーティストのネイト・ボイスとコラボレートしたマルチメディア・パフォーマンスを披露、2012年のカンヌ映画際でもインスタレーション・イベントに参加。またソフィア・コッポラの最新映画『ブリングリング』のオリジナル・スコアを担当するなど、彼の活動範囲はとどまるところを知らない。そして2013年、アンビエント、ミニマル、音響エレクトロニカ、そしてゼロ年代のドローンとシンセ・リバイバルが見事にクロスオーヴァーした最新アルバム『R Plus Seven』はUKの名門〈Warp Records〉からリリースされ、主要年間チャートを席巻した。2014年3月に待望の初来日を果たし、東京と大阪での両公演をまたたく間に完売させ、その人気の程を証明するとともに、高いクオリティのオーディオ・ヴィジュアル・ショウで観る者を完膚無きまで魅了した。同年10月Red Bull Music Academy Tokyoが催したゲーム音楽イベントに招かれ来日し、書き下ろしの「Bullet Hell Abdtraction I-IV」と名付けられた組曲のパフォーマンスを披露し(これも即完)、希有のクリエイティビティを魅せつけた。その他、森本晃司のアニメ作品『彼女の想いで』の新しいスコアを書き下ろし、それをマンチェスターのジョドレルバンク天文台でパフォーマンス、またヴィジュアル・コラボレーターのネイト・ボイスを引き連れて行った『R Plus Seven』のツアーの中では、ナイン・インチ・ネイルズのツアー・サポートも行っている。2015年には『GARDEN OF DELETE』をリリース。さらにハドソン・モホークとともに、アントニー・ヘガーティことアノーニの最新作をプロデュース。

Oneohtrix Point Never Official Website

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レヴュー

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