ホコリには特定の場所や原点がない──ローレル・ヘイロー『Dust』を語る

〈Hyperdub〉からリリースされたローレル・ヘイローのニュー・アルバム『Dust』。新たな境地へと達した感のある作品で、キュートなエレクトロ・ポップ、電子音響、さらにはフリー・ジャズやアフロ・パーカッションなどがゆるやかに結びつき、アルバムを構成している。穏やかな表情でいながら、その背景に広がるイメージはよくよく見てみると奇怪、さまざまな要素のプリコラージュで構築されている。そんな濃密でいながら、軽やかなポップさも持っている質感のアルバム。まぁ、とにかくいい塩梅のアルバムなのだ。これがあまり日本で話題になっていないのは正直どうかと思うぞ! ということでOTOTOYではローレル・ヘイローの貴重なインタヴューをここで公開。ハイレゾ配信中の『Dust』、いまからでも遅くはないのでぜひとも聴くべきではないかと思いますぞ。いや、とにかくその音響の世界観は気持ち良いのです。


ハイレゾ版はCDと同様のライナーノーツ付きで配信

Laurel Halo / Dust(24bit/44.1kHz)

【Track List】
01. Sun To Solar
02. Jelly
03. Koinos
04. Arschkriecher
05. Moontalk
06. Nicht Ohne Risiko
07. Who Won?
08. Like an L
09. Syzygy
10. Do U Ever Happen
11. Buh-bye

【配信形態 / 価格】
WAV / ALAC / FLAC(24bit/44.1kHz ) 、AAC
単曲 288円(税込) / アルバムまとめ購入 2,571円(税込)

INTERVIEW : Laurel Halo


ここ最近の〈Hyperdub〉がリリースするものは、例えば初期のブリアルのような大きな話題となる作品は少ないが、それでも印象に残るような、ともかくピリっとした良作を出し続けている。このレーベルを紹介するのに、もはやポスト・ダブステップだとか、そんなレーベルを矮小化するような表現をする人はもはや皆無かと思うが、レーベル初期に比べカテゴリーの難しい音楽性になってきてるというのはあるかもしれない。それでもレーベルは電子音楽を中心に自由な表現の作品をクオリティ高くリリースし続けている。さて、名門〈Honest's Jon〉からのエクスペリメンタル・テクノの傑作アルバム『In Situ』に続いて、〈Hyperdub〉の看板のひとり、ローレル・ヘイローがリリースしたアルバム『Dust』もそんなレーベルの勢いを感じさせる作品だ。いや、なにより彼女の才能豊かなセンスをこれでもかと見せつけた作品だというのを先に言った方がよかったか。前々作『CHANCE OF RAIN』と前作『In Situ』はストイックなテクノを展開し高い評価を受けたが、その才能は、本作では全く別の存在感を指し示している。エレクトロ・ポップ、アンビエント、フリー・ジャズ、電子音響、つかみどころのない音楽の自由な冒険をさらっとライトに、そしてポップにやってのけている。彼女は実験音楽ともエレクトロ・ポップとも平等に軽やかに戯れる──そんな感覚が作品を覆っている。ということで、貴重な彼女のインタヴューをどうぞ!

文 & 質問作成 : 河村祐介
写真 : Phillip Aumann

デジタルとオーガニックの関係性で遊んでみたりしたの

──前々作『CHANCE OF RAIN』と『In Situ』はテクノでコールドな作品でした、今回は歌物などもありポップな要素もあります、このあたりのサウンドの変化や感覚はどこからきたものなんでしょうか?

今回は歌詞を使いたいと思ったから、それが変化に影響したんだと思う。人と繋がりたいと思ったし、地球や大地から響いてくるようなアルバムを作りたかったの。 歌詞を使うことが音楽を形成する要素になったわ。アコースティック・サウンドを人工的に響かせたり、その逆を試みたり。デジタルとオーガニックの関係性で遊んでみたりしたの。

──歌という意味では、テクノの色の強い前2作よりも、 『Quarantine』と関連性を感じるのですが

どちらにもヴォーカルが入っているから、関連性はあるわね。でも『DUST』の方がよりリラックスした感じの作品だと思う。完全に孤立した状態で作られたわけじゃないわ。

──『DUST』というアルバム・タイトルはなにを意味するんでしょうか?

私にとって「DUST (塵・ホコリ)」は、 非永久的な意味がある。あとは、地球や大地との繋がりとか。それから、払い退けるとか掃除するという行為。自分の上に積もった様々な層と向き合い、その層がどのようなものか受け入れる。ホコリには特定の場所や原点がない。でも一方で、誰かを追い抜くという「Eating one’s dust (後塵を拝する)」という表現もあるでしょ。暑くて乾燥した所で車に乗っていて、前の車がスピードを出したから、タイヤからホコリが舞って自分の前に砂埃が舞うということ。それから、「Once the dust has settled(物事が落ち着いた)」という表現に使われているdustにはかなりの重みがあり、変化の過程、生成の過程、解決への過程を意味している。

──本作は「Jelly」や「Dust」のようなソング・ライティングのある種の丁寧な構成とともに、フリー・ジャズ的な「Arschkriecher」であるとか、これまであなたが試みてきた電子音楽の即興的な要素などがスリリングに絡んできています。このふたつの要素の共存というのが、サウンドの狙いとしてあったんでしょうか?

アルバムは意図的にこのような流れにしたの。


──今回、Kleinなど多くのゲストが参加しています。ゲストを招いて音楽を作ろうと思ったきっかけはあったんでしょうか?

彼らの音楽を尊敬しているからよ。

──特にLafawndahとEli Keszlerが制作の終盤でアルバムに大きく関わったようですが、彼らはどのように本作に関わっていったんですか?

2015年の初めにレジデントを2週間やっていて、彼らをレコーディングのためにこっちに呼んだの。当時は2人ともニューヨークシティに住んでいたから、ここまでは電車で数時間しかかからなかった。Lafawndahと私は即興をして一緒に演奏した。Eliはパーカッションのパターンを自由に演奏して、私が機材を使ってそれをサンプリングした。Lafawndahはヴォーカルを歌うためにこっちに何日か来てくれたけど、彼女はコーチみたいな役割もしてくれたわ。彼女はパワフルな人で、私が普段やり慣れている、心地よい領域を超えて、新しいことに挑戦するように後押ししてくれたの。

──特にEli Keszlerのパーカションは本作でとても重要な意味をもっているような気がしますがどうでしょうか?

そうね。私も、彼のサウンドとスタイルが大好きなの。だから今回、一緒に演奏できる機会があって嬉しかったわ。

──ご自身のヴォーカルとKleinのような他のアーティストにヴォーカルをお願いしている曲は、あなたのなかで大きな違いはありますか?

違いはあるわ。ヴォーカルが1人以上だと会話のようになるの。私は、「シンガー・ソングライターが善意の主人公」という概念を取り壊したいと思っているの。だって、たくさんの観点が同時に存在しているはずだから。

──今回のゲスト陣で一緒に仕事をしていて特に印象に残っているアーティストは?

みんな印象に残っているけど、Michael Salu、Craig Clouse (Shit and Shine)とDiamond Terrifierがすごく良かった。

母国語でない言語が使われている曲がすごく好きなの

──日本のファンとしては、やはり「Moontalk」に驚くのですが、とはいえ日本語としてもわりと抽象的で、辛辣な言葉と感謝の言葉が並列されていたり皮肉も聞こえたりします。あの曲はなぜ日本語をフィーチャーしようとしたのですか?

母国語でない言語が使われている曲がすごく好きなの。期待を打ち砕いてくれるから。リスナーにとっては、曲の意味という戒めから解放されるという点もあるわ。リスナーは、単語をいちいち調べるか、適当に流して聴くかしかできないでしょ。それにしても、私の発音が聞き取れたなんて驚きだわ。

──なんのことを歌っているのでしょうか?

特にこれという意味はないの。勝利の喜びや夢が一連の流れになっているような感じ。

──アルバムのなかでひときわこの曲はポップですよね?

そうね、アルバムの中で一番ポップな曲だと思う。

──日本語の先生は誰ですか?

友人で協力者のマツトウヤ・マリよ。でも、あまり日本語はちゃんと学ばなかったの。彼女が「Congratulations(おめでとう)」の翻訳を幾つか教えてくれて、そのあとに、私が色々な表現をいくつも調べたの。深い表現(「物の哀れ」)とか軽いもの(「バカじゃないの?」「いい天気ですね」)とか。

──日本語の響きはどう思う?

最も美しい言語だと思う。私の発音は曲中ずっと酷いのが悲しいけど、歌詞も特に意味があるわけじゃないから、まだ救われたかな。

──ジュリアン・フォルターの起用はどのような経緯で?

ジュリアと私は大学の友達なの。「Do U Ever Happen」でチェロを弾いてもらったわ。

──楽曲を作る際に、例えば世界状況や身の回りのことなど、自分の外部の音楽以外の状況があなたの音楽に影響を与えることはありますか?

もちろんよ。真空状態で音楽制作をするなんて不可能だもの。音楽は人生の現状を反映できるものだし、反映させるべきだと思う。このアルバムを聴いて、リスナーのみんなにも、私が感じたような、癒しや生成・過程の感覚や、問題を消化して乗り越える方法を見出す感覚を、同じように感じてくれたらうれしい。

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KLEIN / Only

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エレポップ〜電子音響的な世界観から一変し、ストレートにテクノを突き詰めた作品。

PROFILE

Laurel Halo

2010年代初頭、アヴァン・エレクトロ二クス〜インダストリアル系のNYのレーベル〈Rvng Intl.〉やLAの〈Hippos In Tanks〉などからのリリースから、〈Hyperdub〉と契約、2012年に『Quarantine』をリリースする。エレクポップやアファン・エレクトロニクスを行き来する音楽性、そして会田誠の『切腹女子高生』をアートワークに使用したことも話題となり高い評価を受けた。その後、〈Hyperdub〉からの2013年のアルバム『Chance Of Rain』では一転して、ストイックなテクノ・スタイルへと変貌をとげ、さらには2015年に〈Honest Jon's〉からリリースした『In Situ』はさらにディープにテクノを追求したスタイルでさらなる高い評価を受けた。

Laurel Halo アーティストページ

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インタヴュー

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