青い瞳のメジャーセブンス
従来のハードロックをも下敷きにしたバンド・サウンドを楽しみにしていたリスナーは、本作に面食らってしまうかもしれない。フロントマンの夏目はエレキギターをアコギに持ち替え、空間系のサウンドに定評のある菅原は、ギターの音を重ねないという新機軸をとった。結果、各セクションの音を追いやすくなり、メンバーの表情が鮮明に映し出される。シンプルなアンサンブルからは、すっきりとした空間の広がりが感じられるだろう。
さらに、彼らの常套句であるブルース調のプレイが避けられている。それは「花草」でアコギが鳴らすメジャーセブンスの軽やかなストロークからすでに明らかだ。マイナーペンタトニックで踊るギター・リフもない。「Hope」の足並みそろったユニゾンの素朴なフレーズが彼らから生まれるとは誰が想像しただろう。ドライヴ感を捨て、ポップなサウンドを志向したのだ。「31 Blues」はタイトルとは裏腹にフォーキーで、ブルース・テイストは滲み出る菅原のエッセンスである。
だが、シャムキャッツはやはりシャムキャッツだ。彼らの作家性をもって、すべてが功を奏している。"Friends Again"をうたう彼らには、ブルーな心も執拗さもない。J-popの斜め上から存在感を示してきたロック・バンドは、スピッツにも通ずる普遍性をたずさえ、誰からも愛される佇まいで僕たちに歩み寄ってくれた。(中村京介)
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz) / AAC
【配信価格】
単曲 250円(税込) / アルバム 2,400円(税込)