平成のビューティフル・ロックカルテット、クウチュウ戦の新アルバム――進化の果てに描いた愛の極致

クウチュウ戦(左からアバシリ、リヨ、ベントラーカオル、ニシヒラユミコ)

プログレ由来のトリッキーなサウンド、キャッチーだけど時に哀愁を誘う歌。ポップなのにどこか不思議な、唯一無二の音楽性を突き進むロックバンド・クウチュウ戦。セルフ・タイトルを冠した今作ではラップ、シティ・ポップ、シューゲイザーと様々なエレメンツを取り入れつつも、予想のつかないエキセントリックな魅力を炸裂させる!"初恋"と"愛"のダブル・ミーニングが光る「1st "love" album」を、レヴューと共にお届けします。

約1年ぶりとなる新作!

クウチュウ戦 / 愛のクウチュウ戦

【収録曲】
1. セクシーホモサピエンス
2. ユートピア
3. テレパス
4. アモーレ(2017ver.)
5. コメット氏の場合
6. 白い十代(2017ver.)
7. 愛去ってhealing

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz) / AAC

【価格】
単曲 250円(税込) / アルバム 1,500円(税込)



【REVIEW】『愛のクウチュウ戦』

まず特筆すべきは何といってもより洗練されたヴォーカルだろう。「アモーレ」は2015年にリリースされたミニ・アルバムからの再録となるが、歌の厚みが格段に増している。「白い十代」に至ってはもっとそれが顕著だ。この曲は結成初期から披露されてきたライヴ・ナンバーで、音源収録は通算3回目なのだが、圧倒的な進化を見せつける出来となっている。刺激的なドラミングに乱暴に耳を劈くシンセサイザー、エモーショナルに暴れるギター、そして肝となる煽情的なベースリフ。絶対的な演奏の進化もさながら、リヨの歌がそれを上手くまとめ上げている。
私はクウチュウ戦の魅力の一つとして彼の癖のある声質とエモーショナルな歌があると思っているが、今作ではよりその進化を如実に感じられるのではないだろうか。

本作は言わずもがな「愛」をテーマにしたアルバムであろうが、私はそもそもクウチュウ戦とは愛を歌ってきたバンドだと思う。「アモーレ」で<逃げ出そうよ 澄み切った空まで>と歌ったり、「リカバリーポップス」で<マシーンではちょっと寂しいよ>と言ってみたり。ありきたりなラヴソングに使い古されたような表現は全然ないのに、そこには確かな愛情を感じる。

変わったと思えるのはその愛の向けられる範囲だろうか。前作までの愛の対象は、あくまで個人的な“誰か”だった。でも今作はその愛がもっと広い枠組みに向けられていると思う。
「ユートピア」は、メロディアスな音の奔流で我々を郷愁に誘う”街”への賛歌だ。楽曲全体に溢れる生活音は、日ごろ忘れがちな「人の温かみ」を今一度思い起こさせてくれる。そして極めつけは「愛去ってhealing」だろう。轟音のように降り注ぐノイズの中で、織りなされ、重層化する旋律。胸を突く痛みさえ”美しい思い出”として引き出しにしまいこむように、この曲はどこまでも優しい。エモーショナルな歌声はどこか祈りのようで、愛の終焉さえも肯定してしまうように、聴き手を優しく包み込み響き渡る。すごく個人的な別離を歌っているように見えて、そこにはもう宇宙まるごと肯定して許してしまうような、そんな愛情があるように思われる。

改めて、愛とはなんだろうか。

私は映画『オペラ座の怪人』が大好きだが、あの悲劇が人を惹きつけるのはファントムのクリスティーヌに対する愛情がまっすぐだからだと思う。両親を失った少女に歌を教え、どんなに見返りが望めなくても注ぎ続ける愛。最終的に映画は悲しい結末を迎えるけど、モノクロのフィルムの中で色褪せないファントムの薔薇のように、無償の愛というものは優しく、ただずっとそこに在り続けるものだと思う。

「なくなっても愛は、愛なんだよ」

この言葉が一生忘れられない、とリヨは語った。ツーマン企画の最終日、アンコールでのことだ。「愛去ってhealing」はその言葉の意味だとも。私は雷に打たれたように動けなくなってしまった。音楽が全てを物語っていると思った。きっと彼の描く愛がまっすぐだからこそ、こんなにダイレクトに人の心を打つのだと思う。
このアルバムは、優しさに満ちている。甘い歌声と少し不思議なミュージックは、きっとあなた自身の傷を癒してくれることだろう。(text by 阿部文香)

LIVE SCHEDULE

<クウチュウ戦のfirst love tour 2017>
2017年9月15日(金) @大阪府 Live House Pangea
2017年9月16日(土) @愛知県 名古屋CLUB ROCK’N’ROLL
2017年9月28日(木) @東京都 新代田FEVER

>>more live infomation

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PROFILE

クウチュウ戦

平成生まれのロックカルテット。2008年、大学1年のリヨ(Vo,Gt)とニシヒラユミコ(Ba)が原型バンドを結成。2011年1月、ベントラーカオル(Key)加入。同年7月にリヨが突然ペルーに飛び、アマゾンのジャングルの奥で行われる神秘的な儀式に参加。その後、2012年3月までイギリス/オランダなど、ヨーロッパを放浪。2014年5月、アバシリ(Dr)が正式加入し、新体制のクウチュウ戦が誕生。2015年5月に1stミニアルバム『コンパクト』、2016年1月に2ndミニアルバム『Sukoshi Fushigi』、8月に3rdミニアルバム『超能力セレナーデ』をリリース。そして、2017年6月14日に、1st love album『愛のクウチュウ戦』をリリースした。

クウチュウ戦 オフィシャル・サイト

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レヴュー

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