より一層多様に花開いた音楽性──ギリシャラブが初のフル・アルバムをリリース

多くのアーティスト、クリエイターたちが活躍する京都の音楽シーン。そんな京都インディー・シーンの新星「ギリシャラブ」が1stフル・アルバムをリリース。本作にはプロデューサーとして、同じく京都の音楽シーンで活躍をしている、本日休演の岩出拓十郎を迎えた。今回はリリースにあたって峯大貴による、天川悠雅(ヴォーカル、パーカッション)へのメール・インタビューを敢行。バンド結成から現在までの活動、彼らが活躍する京都という街について語ってくれた。

ギリシャラブの1stフル・アルバム


ギリシャラブ / イッツ・オンリー・ア・ジョーク

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(24bit/48kHz) / AAC、MP3
>>>ハイレゾとは?

【配信価格】
単曲 162円(税込) / アルバム 1782円(税込)

【収録曲】
1. 竜骨の上で
2. つつじの蜜
3. 夜の太陽
4. セックス
5. 機械
6. ヒモ
7. パリ、フランス
8. よろこびのうた
9. パリ、兵庫
10. イッツ・オンリー・ア・ジョーク
11. ギリシャより愛をこめて


INTERVIEW : ギリシャラブ

京都のバンド、ギリシャラブ。2015年リリースのミニ・アルバム『商品』は京都のバンドの、緩やかな共通性としての土着性あるロックの系譜──村八分から始まりローザ・ルクセンブルグ、ラッキー・リップス、バッド・スタッフ、そしてくるり──に連なるサウンドと言えるが、一方で歌詞は〈ぼくらは商品なのさ なんにも考えないで〉(「商品」)などと徹底的に冷めており、孤独をロジカルに捉え、微かな色気を放つ響きで話題となった。その質感は大学サークルやライヴ・ハウスなど積極的に若者を“育てる”土壌が整い、仲間意識が育んだ無邪気さがミュージシャンの自我に発展することで彩られてきた京都の音楽シーンとは一線を画している。

そんな状況を経ていよいよ登場した初のフル・アルバムが本作『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』だ。京都らしいフォーク・ロック然としたところは残しつつも、彼らがフェイヴァリットにあげているブラーのポップかつ隙間だらけでロウ・ファイな音作りや、そこから発展しデーモン・アルバーン由来のエキゾチシズム、またダーティー・プロジェクターズに代表されるブルックリンのインディー・ロックなど一層多様に花開いた音楽性の要素をあげることはできる。しかしそのどれもが彼らを評するにあたって芯を食っていない気がする。なんとも言い難い“寄る辺のなさ”こそが魅力となっているのだ。歌詞においても〈何も言うな 何も思うな ただの身体として生きろ そして死ね〉(「つつじの蜜」)、〈ぼくのよろこびはもともとなかったんだ〉(「よろこびのうた」)と身体性や感情も失って、沈んで溺れるのを待つ泥船を舞台として切れ味のよいノワールな描写が牙をむいている。

本作での変化はプロデューサーとして今回迎えた本日休演の岩出拓十郎の存在も大きいだろう。本日休演こそ上述の先人たちの系譜の最新形として、あらゆる音楽を消化しポップ・ミュージックの中のけむにまいた京都のバンドだ。そんな本日休演・岩出とギリシャラブが手を組んで完成した、底の知れない素養が溢れるデカダンス・パーティとでも言おうか。

今回ギリシャラブの全ての作詞作曲を担う天川悠雅(ヴォーカル、パーカッション)にメール・インタビューを行った。本作の内容だけに留まらず、ギリシャラブの生まれから天川悠雅自身の音楽に対する向き合い方に焦点を合わせて問いかけたが、全ての回答において筆者の想像の斜め上を鋭く的確に貫いた。京都からのブライテスト・ホープであることは間違いない。だけど京都らしくないバンド、ギリシャラブがいよいよ全貌公開される。

インタヴュー&文 : 峯大貴

田舎で2人で曲を作っていた頃、誰かに褒めてもらえることなんてなかった

左から埜口敏博(Ba.)、坂口雄一(Dr.)、天川悠雅(Vo.)、取坂直人(Gt.)
──ギリシャラブは京都のバンドですが、天川さんのご出身は兵庫県の三田市と伺いました。最初に音楽にのめり込んだのはいつで、どのような音楽だったのでしょうか?

天川悠雅(以下、天川) : 地元の高校を1年生の夏に辞めているのですけれど、その頃に聴いていたASIAN KUNG-FU GENERATIONやSyrup16g、ART-SCHOOLなんかが“最初にのめり込んだ音楽”として相応しい気がします。後にブラーを聴いた時、あるいはもっと後にニュートラル・ミルク・ホテルを聴いた時など、自分の音楽体験の転機はいくつかありますが、最初といえば上に挙げたような日本のロック・バンドでした。それ以前には漫然とした心持ちで聴いていた音楽というものが、自分を刺してくる、一種危険な、しかしその中に身を投じる価値のあるものとして自分の中で大きく育った、というのがその時期だったと思います。

──では天川さんが楽器を始めたのはきっかけは何だったのでしょうか。またギリシャラブ結成以前にもバンド経験はありましたか?

天川 : これも高校に入った頃にドラムを始めて、その内に中学の友達とバンドを組んだのが最初です。仲の良かった友達がギターをやっていたので、じゃあ僕はドラムという程度の動機ですね。高校に行かなかったので時間を持て余していたというのも大きかったと思います。当初はカバーをやっていた時期もありましたけれど、ほどなくオリジナル曲を作り始めました。僕が曲を作っていたわけではなく、音楽性としては今とは全然違ってポストロックに近い感じでした。今にして思えば初期のTHE NOVEMBERSみたいなことがやりたかったのかもしれません。地元の公民館のような場所でライヴしたり、三宮のライヴ・ハウスにも出たりしていました。3年半くらい続いたのかな。自分が浪人の時に解散したと記憶しています。

──そこからギリシャラブが結成されたのが2014年。京都の大学に進学された後かと思いますが、音楽サークルには所属したり、特別に界隈のライヴ・ハウスに出入りしていた訳ではなかったということで、どのようにして結成、またメンバーを集めたのでしょうか?

天川 : ギターの取坂(直人)は地元が一緒の三田で、自分が1年で辞めた高校に取坂も通っていて、その時からの付き合いです。先ほど言ったバンドに取坂も所属していて、当時は彼がギター、ヴォーカルでした。バンドが解散し自分が大学に入ってからも付き合いはあって、2人で宅録のような形で一緒に曲を作ったりしていました。誰に発表するでもなく、ただただ曲を作っては録音する日々ですね。

左から埜口敏博(Ba.)、取坂直人(Gt.)、天川悠雅(Vo.)、坂口雄一(Dr.)

大学3回生の夏に僕が京都に引っ越すことになり、自分は京都、彼は兵庫と離れてしまうので今後一緒に音楽を作っていけるかわからない。だから一回くらいちゃんとしたところで録音しようと思って、SIMPO (music studio SIMPO:京都市にあるレコーディング・スタジオ。ギリシャラブの初作『商品』はスタジオ内レーベルSIMPO RECORDSからリリースされている) で録音しようというアイデアが浮かびました。今後どうやって活動するか、そもそも活動するのか、何も決まっていませんでしたが、その時に“ギリシャラブ”という名前でやり始めたんだと思います。その録音時に小泉さん(小泉大輔:SIMPOの代表、レコーディング・エンジニア)が褒めてくれてとても嬉しかった。田舎で2人で曲を作っていた頃は、誰かに褒めてもらえることなんてなかったので、それがなかったら活動せずに終わっていたかもしれない。

──SIMPOでの録音、しかも今後の活動が見えないという状況からギリシャラブが始まったんですね。ちゃんとしたところでの録音というところでSIMPOに持っていった理由はなんでしょうか?

天川 : くるりが2010年に出したアルバム『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』のライナーノーツか雑誌のインタビューかで、作品のプリ・プロダクションを京都にある彼らの同級生が経営するスタジオで行なったということを知り、興味を持ちました。僕と取坂はもちろん今もそうですけれど、当時は本当にくるりに熱を上げていました。

今のドラム坂口(雄一)と出会ったのは、当時のドラマー(寺田絢菜:現carpool、ex花泥棒)の紹介でそのもう少し後です。彼とは音楽の趣味も近いところにありましたし、初めからうまくやれそうだと思いました。ベースの埜口(敏博。本日休演のキーボード、ヴォーカルでもある)とは2015年5月に《ネガポジ》(京都丸太町にあるライヴ・ハウス。現在は西院に移転)で本日休演と共演した時に初めて顔を合わせました。その時は特に話すことはなく、まともに話したのは同年末に同じく《ネガポジ》で会った時。当時ベーシストを探していたので、その時にいた音楽評論家の岡村詩野さんが埜口に「やったら?」と言うと、彼は二つ返事で加入してくれました。埜口はギリシャラブに新しいパースペクティブをもたらしてくれた。自分と違う感性を持つ人間が入ったことでやりやすくなったと感じます。

自分の作品が、学校生活の中のなんでもない1日のようなものであればいい

──では結成当初に目指していた音楽的ヴィジョンはありましたか?

天川 : 結成の段階でははっきりとしたヴィジョンはほとんどなかったです。その時最高のものを作るというよりも、漸次的に音楽を変化させていくことの方が重要だと当時から考えていました。乱暴な言い方をすれば“作品”よりもその“変化”のダイナミクスの方こそ“音楽”と呼ぶべきだと当時も今も考えています。

──それは一方で“作品”というのは変化を続ける音楽の現在地点の経過を捉え、切り取ったものという認識だとお見受けしました。通常は1枚1枚の“作品”に向き合うことが積み重なって、経年していくことで“変化”が無意識的に表出するというのが自然かと思うのですが、音楽を“変化”させていくことに意識を置く理由をもう少し詳しく教えてください。

天川 : 仰るとおり、一方で“作品”は変化を続ける現在地点の経過を切り取ったものだと思います。自分の中の音楽(音楽に限らずあらゆる事物に言えることですが)は、絶えず変化していて、その変化は持続しています。“作品”というのは、その中のある適当な地点につけられた“オチ”のようなものだと言えるかもしれない。

天川悠雅(Vo.)

少し話が脱線しますけれど、僕は生まれてから24年間たくさんの人の話を聞いていて、ある一つの結論に達しました。それは「オチのない話の方が(たいてい)おもしろい」ということです。あるいは「“ラストで何か劇的なことが起こる小説”よりその反対のものの方がおもしろい」ということもまた言えます。もちろんオチがあってもおもしろい話はありますが、たいていは脱線がなくて、自律的でない。ベルトコンベアの上に乗せられたみたいに規則的に進んでいくものが多い気がします。

大学でも小学校でも、学校生活は卒業によって終わりがもたらされます。ただ日々“卒業に向かって”営まれるわけではない。入学する前の日々から入学式、昨日が繋がって、未来には進級、卒業、その後の生活があり、そしてもちろん明日がある。ずっと意識するわけではないけれど、ある程度理解して、またある程度は理解しないまま、学校に通う、あるいは通わない。

僕は自分の作品が、学校生活の中のなんでもない1日のようなものであればいいと思っています。今までの、またこれからの変化の道筋に開かれているような……。起承転結という言葉がありますけれど、今までの変化に対して“承”であり、それを未来に向けて“転”するような作品が理想です。“起”と“結”は生まれたときと死ぬときだけで十分かな(笑)。

僕はこのアルバムを、1つの冗談にしようと思いました

──では作品の中身の話をお伺いさせていただきます。前作『商品』は天川さんの中のふつふつとした感情を、随所に織り交ぜながらもしっかりポップ・ミュージックとして響くような配慮がなされているような印象がありました。乱暴に言えば初期のくるりに通じるような京都のバンドらしい叙情的フォーク・ロックにもカテゴライズ出来るような。しかし本作『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』では一転、いびつな歌詞が牙をむきだしている。サウンドとしてはAOR的な「夜の太陽」から、「ドナドナ」のような童話的もの悲しさを感じる「機械」と幅広いけど、青春の青さと暴力的に冷徹な部分が表裏一体で同居しているところが通底していると感じました。制作にあたって前作と変わった点はありますか? また本作において特に意識した点や、コンセプトなどはありますか?

天川 : 少ない編成で、音の隙間を活かしたアレンジをしたいという思いは『商品』の時もありましたけれど、今回ではそれがより徹底・先鋭化されたように感じています。何を鳴らすか、どこで鳴らすか、ではなく何を鳴らさないか、どこで鳴らさないかを常に考えていました。コンセプトは10曲目「イッツ・オンリー・ア・ジョーク」はアルバムの中でも初めの方に出来た曲ですけれど、〈舟を盗んで旅に出る〉という歌詞の曲だったので、その舟が沈むところまでを描いた作品にしようとしました。それで舟が沈む曲「竜骨の上で」を作ったのですけれど、音楽的に「イッツ・オンリー・ア・ジョーク」はスロー・テンポなのでアルバムの1曲目には向かないと思いました。

でもアル・パチーノの『カリートの道』(1993年)という映画があるのですけれど、アル・パチーノが死ぬところから始まる。それにならって舟が沈むところからアルバムをはじめるのも悪くないと思い、「竜骨の上で」を冒頭、「イッツ・オンリー・ア・ジョーク」を後半に持ってきて、後はその間の話を描いていくという形で曲を作っていきました。

左から天川悠雅(Vo.)、坂口雄一(Dr.)、取坂直人(Gt.)、埜口敏博(Ba.)

──その10曲目「イッツ・オンリー・ア・ジョーク」は〈これはただのジョークだから〉と作品の後半になって一気に無意味化してしまう、煙に巻いてしまうところが、天邪鬼なギリシャラブらしいと思いました。でもこれが最終曲ではなくて次の「ギリシャより愛をこめて」ではさらに〈だんだんどうでもよくなってきた〉と放り出してアルバムが終わってしまう。この2曲の流れはみんなで積み上げてきたジェンガを突如なぎ倒されたかのようにゾっとしてしまいました。「イッツ・オンリー・ア・ジョーク」をアルバム・タイトルにした経緯や理由はなんでしょうか? また物語の上では舟が沈んでしまって終わりですが、その後さらに「ギリシャより愛をこめて」があるところの意図はありますか?

天川 : 『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』という題名については前作『商品』を出すより前になんとなく閃いて、温めていたのです。ジョーク、冗談。僕は冗談を言うのも言われるのも好きですけれど、仰っている通り、物事を無意味化する冗談というのは全く素晴らしいものです。僕は意味のないものが大好きです。意味は人を疲れさせる。反対に冗談は人を笑わせます。僕はこのアルバムを、1つの冗談にしようと思いました。だから歌詞のコンセプトを考えると本当は『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』を最後の曲にしたかった。ただなんとなくつまらないという風にも思いました。単純に静かな曲で終わるのはなんとなく寂しい気持ちがして。

そんな時、「ギリシャより愛をこめて」という曲が出来て、これはもう最後の曲にするしかないということになりました。この曲は冗談のようにブラーっぽく、最後にチープな拳銃の音が入っている。「ギリシャより愛をこめて」という題名も含めて(いうまでもなく『007 ロシアより愛をこめて』のパロディですけれど)、全てが冗談のような曲が出来たと感じました。最後をこの曲にすることで『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』というアルバムが完成したと思っています。

──リスナーとしてはブラーやダーティー・プロジェクターズなど洋楽指向で、本作のサウンドにも影響が伺えます。一方で歌詞は一貫して日本語で書かれており、また個人的にはフジファブリックの志村正彦に通ずるような、印象的な擬音を用いつつ、時には他者を突き離すほどに達観的な立ち位置から自らの妄想を描写していると感じました。歌詞を書くことにおいて大切にしていることは何でしょうか? また歌詞において影響を受けた、参考にしている人はいますか?

天川 : これも音のアレンジと同じで“何を書かないか”ということを大切にしています。歌詞は言葉による表現の中でも最も文字数が少ないものの1つなので、考えなしに書きたいことを書いていけば、何も言えないまま曲が終わってしまう。まぁ何も言えないまま終わるのも悪くはないのですけれど、この“匂い”、この“気配”は言わなくても通じるのではないかとという風に、何を書かないかというところに神経を使って書きます。歌詞はいうまでもなく韻文であり、もっぱらメロディに乗せて歌われるのを聴くという形で読まれるものですけれど、詩や小説と同じように読む快楽というものが歌詞においても立ち現われてくる瞬間があるという風に思って、そう信じて書いています。

また参考にしている人、特にいないです。いいな、と思う時がないわけではないのですけれど……。むしろ小説や詩の方がインスピレーション源になっているような気がします。本作でもアルチュール・ランボー、ジョルジュ・バタイユ、フランソワーズ・サガン、シャルル・ボードレール、ジャン・ジュネ、フランツ・カフカなどの作品にはインスパイアされたという心地がします。

京都という街が大好きなので、出来ることならずっと住みたいと思っています

──今回プロデューサーとして本日休演の岩出拓十郎さんを迎えています。京都に連綿と続く土着的なロックの要素も感じられ、かつ社会に斜に構え、けむにまいていくスタイルにおいてギリシャラブと本日休演は共通点を見出すことが出来ると個人的に思いましたが、本日休演の音楽についての印象と、交流を持つようになったきっかけを聞かせてください。また自分の作品のプロデュースを岩出さんに任せようと思ったのはなぜでしょうか?

天川 : 初めて会ったのは埜口と同じく2015年5月のネガポジでの共演です。岩出が僕らに興味を持ってくれたみたいで、あちらから話しかけてくれたと記憶しています。その時の本日休演のライヴは圧倒的でした。僕らの演奏も悪くなかったと思いますが、正直比べものになりませんでした。あらゆる点で今までに見たどんなバンドとも違っていてパフォーマンスもおもしろく、笑えた。とても好きになりました。岩出にプロデュースをしてもらうというのは、岡村詩野さんのアイデアだったと思います。僕としては願ってもない話でした。

──では実際に一緒に作品を作ったことでギリシャラブ、また天川さんにとって、岩出さんに引き出された、もしくは今までになかった新しい刺激はありましたか?

天川 : 彼と一緒にやる前は典型的なワンマン・バンド、僕が言ったことをそのまま受けいれるという流れで曲作りをしていたのですけれど、今回彼は一切の忌憚なくはっきりと僕に意見を言い、僕もまたはっきり言うタイプなので、自ずと2人が意見を言い合う形で曲作りが進みました。他のメンバーもそれに触発されて、少しずつですけれど自分の考えを明らかにするようになりましたね。僕自身バンドをやるのがとても楽しくなりました。

左から坂口雄一(Dr.)、天川悠雅(Vo.)、取坂直人(Gt.)、埜口敏博(Ba.)

──本作で岩出さんの意見・アイデアが顕著に活かされた部分はありますか? 岩出さんが手がけたことによって具体的に変わった部分など。

天川 : 申し訳ないのですが、リハーサルでもレコーディングの場でも常に意見を言い合っていたので、どれが岩出の意見だったのかはっきりと覚えているものはほとんどないです。「ヒモ」のアレンジは岩出が積極的にもっと色々やろうと言って変わっていったような記憶はあります。埜口がキーボードに回って、ベースは最後のパートまで入ってこないというのも岩出のアイデアだったような、定かではないのですけれど……。

──本日休演とは同じ京都を拠点にしているということもありますが 、天川さんにとって京都で音楽活動をすることに意識的な部分はありますか? また自分と考え方が近かったり、共鳴するような京都のバンドや人物はいますか?

天川 : 京都で音楽活動をすることに意識的な部分は正直に言ってあまりないです。ただ僕は音楽のことを抜きにしても京都という街が大好きなので、出来ることならずっと住みたいと思っています。例えば東京の方が音楽をやるための土壌が整っている土地だとしても、東京に行こうとは思いません。今は単純に好きな街に住んで音楽をやっているというありがたい状況です。

京都の音楽シーンは全然詳しくなく、時々いいなあと思うバンドはいます。she said(京都の男女4人組インディー・ロック・バンド)とか。でもギリシャラブはどんなシーンにも属せていないですね。それがいいと言ってくれる方もいるのですけれど、仲間がいなくて少し寂しい気持ちもあります。共鳴するようなバンドや考え方が近いバンドも本日休演をほとんど唯一の例外としていないですね。むしろ教えてほしいくらいです(笑)。

──では音楽関係なしに京都にずっと住みたいというほどの魅力はどこにありますか?

天川 : 京都のいいところはいくつか挙げられます。よく言われることですけれど自転車でどこへでも行ける。町並みが美しい。建物が低い、などキリがないような気もしますし、もう挙げられないような気もしますけれど。ただ京都のどこが好きなのか決定的な理由はないと思っていて“住めば都”という言葉が僕の場合にもそのまま当てはまります。まぁ京都は僕が住む1000年以上前から都でしたが、(生活者としての)僕にとっては僕が住むまで都でもなんでもなかった。先ほど東京に引っ越す気はないと言いましたけれど東京が嫌いというわけではなく、今好きな街に住んでいるから引っ越したくないというだけの話です。

そもそも京都に引っ越してきたのも京都の大学に通っているというのが理由だったわけで、恋愛と同じで好きだから付き合うのだけれど、本当に好きになるのは恋人になってからで、一緒にいる内にどこが好きかどんどんわからなく、どうでもよくなってきて、ただある時から好き / 嫌いの問題ではなく、ともかく離れがたくなっている、というのが僕と京都との関係にも言える気がします。

──最後に天川さんが音楽を作る上での基本姿勢として「こういうものが備わってないといけない」というようなこだわりや意識はありますか? また自分の音楽は「こういうものでありたい」というような理想はありますか?

天川 : こだわりや意識はないです。あえていうなら「~でなければいけない」というような自分の中のこだわりや意識から自分を解放するようなものが、僕にとって音楽を作ることなのかもしれません。僕らの音楽を聴く人は皆それぞれに日常──仕事、学校、遊びなどなど──を生きている中でいつも突然に僕らの音楽を聴くことになるわけです。なので彼らが僕らの音楽の世界に入ってきやすいように、日常に対して開かれている音楽、そして僕らの世界の中を生きられるような音楽が、僕の今の理想です。

──日常に対して開かれている音楽、また先ほどは常に変化させていくことが音楽において重要と仰っていましたが、今後ギリシャラブは本作を経てどのような方向に変化させていこうと考えていますか?

天川 : 今回のアルバムはかなりラフな録音でしたけれど、次はもう少し綺麗な音で録るのもいいかなと思っています。それから隙間を生かしたアレンジや音作りというものを、『商品』の頃から割とドラスティックな形で実践してきたのですけれど、それを活かしたまま演奏をパワフルにビルドアップするにはどうすればいいのかなということを今考えているところです。ギリシャラブは基本的にヴォーカル、ギター、ベース、ドラムの4人のアンサンブルで演奏を組み立ててきました(場合によってギターのオーバーダブや、ウクレレなど他の楽器の使用をすることはありましたが)。少人数編成は音と音との隙間を生かした演奏をするのにはもってこいの編成です。ただ楽器の数を増やしても隙間を活かした演奏ができるんじゃないかというのが今の目論見です。まぁこういうことは、休日の計画と一緒で、実際にやってみるとそのほとんどが達成できなかったりするのですけれど。夕方まで寝ていた、なんてこともあるでしょう(笑)。

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この作品に関する特集ページはこちら

LIVE SCHEDULE

『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』レコ発ライヴ
2017年3月18日(土)@二条nano
時間 : OPEN 18:00 / START 18:30
出演 : ギリシャラブ / ラッキーオールドサン / yoji & his ghost band
詳しくはこちら

ギリシャラブ / 接近!UFOズ 合同インストア・イベント
2017年3月22日(水)@タワーレコード京都店 店内イベントスペース
時間 : START 19:00

PROFILE

ギリシャラブ
2014年結成、京都で活動する4人組バンド。2015年、SIMPO RECORDSより1stミニ・アルバム『商品』を発売。2016年には、同作品収録の楽曲『無人島』が、無名にも関わらずInter FMがオススメするニュー・リリース「Hot Picks」に選出される。同年、Helga Pressより発売された京都の若手音楽家のコンピレーション・アルバム『From Here To Another Place』に参加。
理想郷でみる悪い夢のように、魅惑的で危うい音楽。
『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』では、本日休演の岩出拓十郎がプロデューサーとして参加。

アーティスト公式HPはこちら

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by 西澤 裕郎
【ライブ・レポート】京都の若きノスタルジー・バンド、バレーボウイズ
[REVIEW]・2017年04月19日・【ライヴ・レポート】京都の若きノスタルジー・バンド、バレーボウイズ いま京都では、ギリシャラブや本日休演、台風クラブなど、ノスタルジックなサウンドで懐かしさを醸し出しているバンドが1つのムーヴメントになりつつある。京都のインディー・シーンは今、彼らの話題で持ち切りなのだ。かつてくるりやキセルなど、京都の音楽シーンに注目が集まっていた時代があった。そんな時代の再来を期待させるような火種が、京都には転がっている。そしてその火種の1つに名乗り上げようとしているのが、超若手の7人組ノスタルジック・ロックバンド、バレーボウイズである。avex、DUM DUM LLP.、HOT STUFF、lute、ULTRA-VYBEが合同で開催し、特別審査員として中尾憲太郎(ex.ナンバーガール、Crypt City)、松田“CHABE”岳二(LEARNERS、CUBISMO GRAFICO)、MC.sirafu(片想い、ザ・なつやすみバンド)が参加した無差別級ライヴ・オーディション「TOKYO BIG UP! 」ではグランプリを獲得するなど、着々とその名を広めるバレーボウイズのライヴ・レポートをお届け。 テキスト : 水上健汰
【ハイレゾ配信】8年ぶりの新作『async』について訊く──坂本龍一メール・インタヴュー
[CLOSEUP]・2017年04月17日・坂本龍一『async』について語る──メール・インタヴュー 8年ぶりの新作アルバムとしてリリースされるや、OTOTOYでも一気にチャートを駆け上がった坂本龍一の『async』。往年のファンはもちろんのこと、現在のアンダーグラウンドな電子音響のファンまで、広く聴かれるべき刺激的な作品となっている。OTOTOYでは本作をハイレゾで配信するとともに、アルバムまとめ購入には坂本龍一自らが書き下ろしたライナー、そしてクレジットなどが掲載された、CDと同様の内容のPDFライナーが付属している。そして、ここに坂本龍一からのメール・インタヴューが到着した。 24bit/96kHzハイレゾ+ブックレトPDF付きで配信坂本龍一 / async(24bit/96kHz)'【Track List】01. andata 02. disintegration03. solari04. ZURE05. walker 06. stakra 07. ubi08. fullmoon09. async10. tri 11. LIFE, LIFE12. honj13. ff14. garden【配信形態 / 価格】''24bit/96kHz WA
by 八木 皓平