JAPPERS、真っ当な感性と飽くなき探究心が結実した新作『formulas and libra』を語る

2009年頃高幡不動で結成し、下北沢スリーを中心に活動を行う6人組ロック・バンド、Jappers。この度、KiliKiliVillaより、待望の2ndアルバムをリリースする。このバンドの魅力は……いみじくも下記の文章でライターの渡辺裕也が言い表しているため、そちらに譲るとしよう。とにかく現在、最もこの国のインディ・ロック・シーンでプロップスを集めるレーベルのひとつ、KiliKiliVillaの勢いを証明するクールなバンドのひとつだというのは間違いないだろう。OTOTOYでは、Jappersの新作をハイレゾ配信! さらには前述のように渡辺裕也による新作『formulas and libra』についてのインタヴューを公開。榊原聖也(Vo)、武藤英成(Dr)の2人に話を訊いた。インタヴューでは、そのサウンドを後ろで支えている、その分厚い音楽愛に裏打ちされた、その音楽的ルーツから、現在のバンドの姿まで話している。

待望の2ndアルバム登場!


JAPPERS / formulas and libra

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(24bit/48kHz) / AAC
>>>ハイレゾとは?

【配信価格】
(単曲) ALAC,FLAC,WAV : 349円(税込) / AAC : 277円(税込)
(まとめ買い) ALAC、FLAC、WAV : 2,333円(税込) / AAC : 1,701円(税込)

【収録曲】
1. In Proper Place
2. Praise The Moon
3. If You Needed Another One
4. Just For You And Me
5. Lies
6. Amy Lou
7. Rock’n' Roll Music
8. War
9. Intro
10. One Plus One
11. Come On Now


JAPPERS/Praise The Moon


INTERVIEW : JAPPERS

いいミュージシャンの家には、いいレコード・コレクションがあるーーストリーミング・サーヴィスが普及する現代においては、少しばかり古臭いたとえ話かもれないけど、それでも僕はいまだにこういう考え方が好きだ。実際、この『formulas and libra』というアルバムを聴いていると、僕の脳裏にはとても充実したレコード棚が自然と浮かんでくる。たとえばそこには、クラウト・ロックの重要作はだいたいあるし、デルタ・ブルースの古いジャケットとか、よく名前のわからないアシッド・フォークのアルバムなんかもたくさん見当たる。当たり前だけど、ビートルズとヴェルヴェット・アンダーグラウンドのディスコグラフィだってぜんぶ揃ってる。そういう芳醇なレコード棚の匂いが、JAPPERSというバンドの音楽には確実に宿っているのだ。

ただ、念のために断っておこう。このバンドはマニアックな懐古主義者の集まりとかでは決してない。むしろ、彼らはそうした古いレコードと並べて、ダーティ・プロジェクターズも、サンファも、カニエ・ウェストも、普通に楽しんでいるはず。つまり、そうした2017年に生きる若者たちの真っ当な感性と、生粋の音楽好きとしての飽くなき探究心が見事に結実したのが、この『formulas and libra』なのだ。この最高のセカンド・アルバムを作り上げた彼らと久々に話してみたくなり、さっそくインタヴューを持ちかけてみた。取材に応えてくれたのは、ヴォーカルの榊原聖也と、ドラムの武藤英成。では、ぜひ最後までお楽しみください。

インタヴュー&文 : 渡辺裕也
写真 : 佐藤裕紀

もっと直接的というか、外向きにキレていこうかなと(笑)。

──まずは『Imaginary Friend』のことをすこしだけ振り返らせてください。今回のアルバムとはムードの異なる、非常にメロウな質感の作品でしたよね。

榊原 : あのアルバムを作っていた頃は、ちょうど僕とギターの(竹川)天志郎が高尾に住んでたんですよ。で、やっぱり聴くものって環境によって変わるじゃないですか。だから、当時は山に合うような音楽をよく聴いてたんですけど(笑)。

──(笑)。カントリーとか?

榊原 : そうですね。で、そうしたら自分のつくる曲もおのずとそういうものが増えていって。前作のミックスは天志郎がやってるんですけど、全体的な音の感触としても、夜に聴けるような感じにしようと。たしか自分たちのなかでも、「なんか、サード・アルバムっぽいよね」なんて話をしてましたね。で、そこから僕が蒲田の町工場みたいなところに引っ越したら、また聴く音楽が変わって、結果として今回はこういうアルバムになったっていう(笑)。今はまた別のところに住んでるんですけどね。

──前作をつくったことの反動よりも、生活環境の変化による影響のほうが大きかったってこと?

榊原 : あぁ、そう言われるといろいろ思うこともあったのかもしれないです。というのも、前のアルバムを出してみて思ったのが、「やっぱりメロウな感じのものは流されちゃうんだな」ってことで。それこそ前作って、ヴェルヴェッツでいうと3枚目(69年作『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド』)みたいな感じだったと思うんですけど、やっぱりああいう感じって、わかるひとにしかわからないというか。なので、次はもっと直接的というか、外向きにキレていこうかなと(笑)。

──なるほど。ちなみに、今回のアルバムはヴェルヴェッツのディスコグラフィに例えると何枚目になるんですか。

榊原 : やっぱりセカンド? (68年作『ホワイト・ライト / ホワイト・ヒート』)

──アルバム終盤のノイジーな展開は、まさにそんな感じですよね。

武藤 : でも、今回は1枚めから4枚めくらいまで、ぜんぶ入ってる感じじゃない?

榊原 : たしかに。曲ごとに要素がバラバラというか。

武藤 : あと、いま思うと前作は「ルーツに回帰する」みたいな意味合いが強かったような気もしていて。あの頃は自分たちのルーツにあるものを素直に表現したかったから、それこそスティール・ギターを導入してみたりとか、土っぽい雰囲気をだすために上野がドラムを叩いてみたりとか、けっこういろんなことを試してたんですよ。で、今回は逆にそれっぽくないものをやりたかったというか。それこそスティール・ギターを歪ませたりして、「いかに自分たちが新鮮に感じられるものをつくるか」みたいな考え方に変わったような気がします。

榊原 : うん。以前は何かしらの雰囲気に沿うような感じだったけど、今回はもっと好き勝手にやれてたと思う。それこそ6人もいれば、各メンバーのモードもそれぞれ違うわけで、その混ざり方でバンドの音も変わってきますからね。前作とのいちばんの違いはそこなんじゃないかな。特に1曲目の「In Proper Place」なんかは、あんまりカッチリ固めずにやったら、おのずとああいう感じになったので。

武藤 : でも、俺らとしては特に凝ったこともせず、好き勝手に参照源そのまんまみたいな感覚でつくった曲でも、「昔のルーツ・ミュージックを今の時代に沿った形でアウト・プットしている」みたいに受け取ってくれるひともけっこう多いんですよね。自分たちでもその理由はわからないんですけど、そんなふうに感じてくれるひともいるんだなって。

表層じゃない部分を大事にしたかった

──じゃあ、単純にリスナーとしてはここ最近どんなものをよく聴いてましたか。

武藤 : そうだな…。たとえば1年くらい前だと、〈ミシシッピ・レコーズ〉のブルース系とかをいろいろ聴いてました。で、その時期に思ってたのが、「現代のエッジーで激しい音楽とおなじくらいに気分が高揚するような音楽を、40年代の人たちはアコギ1本でやってたんだな」ってことで。

榊原 : そうそう。音圧が違うだけなんだよね。それこそ戦前のブルースとか、ホント最高。

武藤 : だから、俺たちも表層じゃない部分を大事にしたかったというか。上っ面をなぞるんじゃなくて、自分たちの気分が何に左右されてるのかってことを、より敏感に感じ取れるようになったと思う。

榊原 : あと、去年の今頃だったかな。俺、アメリカとメキシコに行ってきたんですよ。で、アメリカに関しては「とりあえず一回あそこに行かないと死ねないな」みたいな場所をいろいろ回ってきたんですけど。

──いいですね。どんなところを回ったんですか?

榊原 : (ロサンゼルス郊外にある)エリオット・スミスの『フィギュア8』の壁があるところとか。あとはニューオリンズでジャズを聴いたりとか。いやもう、最高でしたよ。やっぱり、音楽を聴いてるときもリアリティがぜんぜん違うというか。たとえば、メンフィスのモーテルでアレックス・チルトンの「モーテル・ブルース」を聴いたり、ミシシッピ川のほとりで「ドック・オブ・ベイ」を聴いたりすると、やっぱり腑に落ちるんですよ。それこそメンフィスってけっこう治安が悪いんですけど、そういうどんよりした暗い感じのなかでも、ビール・ストリートだけがきらびやかで。本当にちいさな繁華街なんですけど、きっと現地の人たちにとってはここが救いんだろうなって。まあ、それが今回のアルバムに直接的な影響を与えたわけではないんですけどね。僕はアレックス・チルトンが好きなんで。

──最高の経験ですね。あと、今回のアルバムは〈キリキリヴィラ〉から出すじゃないですか。きっと制作環境にも変化があったと思うのですが。

榊原 : そうですね。今回はエンジニアの柏井日向さんにお願いしたおかげで、録り音がものすごくよかったので、曲ごとにやれることの選択肢もグッと増えたんです。それこそ以前は音圧とか録り音云々よりも、ムードや空気をどう拾えるかが重要だったけど、今回はちゃんとしたスタジオも使わせてもらえたから。

武藤 : 前作をつくったときは、自分たちで完成させるのがベストだと思っていたんですよ。それこそバンド内の価値観を外の人と共有しながら作り上げていくのは、なかなか難しいんじゃないかなって。だから、今回〈キリキリヴィラ〉から誘ってもらえたときも、最初は「大丈夫かな?」と思ってたんです。でも、自分たちが内に閉じこもってるという自覚も少しあったから。やっぱり外とつながらないと、自分たちの音楽も広がっていかないじゃないですか。だから、今回はそのきっかけとしてこういう形で作らせてもらったんです。そうしたら、ものすごくやりやすかった。

──実際、音像の雰囲気もだいぶ変わりましたよね。前作はもっと燻んだ印象だったけど、今回は全体的に輪郭がはっきりしているというか。

榊原 : 今回はもっと立体感を出したかったんですよ。前作がモワッと煙ってくる感じだとしたら、今回はもうすこしバキッとした質感というか。

武藤 : 前作と比べると、上野と俺のリズム隊もだいぶ太くなったような気がしてます。そうやって俺らが演奏の根っこを支えれば、他の上モノがより自由にやってもらえるので、今回の曲にはそのへんの感じも現れてるんじゃないかな。

信頼できる人たちが喜んでくれることをやりたい

──今回のアルバムには、2013年に7インチで出した「Praise The Moon」も再録されてるじゃないですか。このふたつのヴァージョンを聴き比べると、バンドの成長は明らかですよね。

榊原 : そもそもあの曲、今回のアルバムに入れようと思ってなかったんですよ。でも、レーベルの与田さんと、あとはCAR10のかわちゃん(川田晋也)が「あの曲入れてよ」と言ってくれたんで、それなら入れようかなと(笑)。それもまた、外への意識ですよね。まわりの意見も受け入れるべきところは受け入れたいし、やっぱり僕らとしても、信頼できる人たちが喜んでくれることをやりたいから。それに、あの曲は最近のライヴでも7インチの頃とはまた違った感じで演奏できてたんで。

──それは先日のBlock Partyでライヴを見たときにもすごく感じました(JAPPARSが定期的に出演している下北沢THREEのフリー・イヴェントのこと)。あの深夜のイヴェントにレギュラーとして出演してきたことも、現在のJAPPERSにとっては非常に大きいと思うんですが。

榊原 : めちゃくちゃでかいです。ある意味、あそこは今の僕らのホームっていうか。店長のスガナミ(ユウ)さんも「好きにやってくれていいよ」と言ってくれるので、それこそ自分たちの企画を毎回やらせてもらってるような感覚でやらせてもらってます。ホント恵まれてると思う。そもそも金曜日の夜にフリーで遊びにいける場所自体、今はなかなかないし。

武藤 : ホント不思議な場所ですよ。深夜帯に毎回あれだけのひとが集まって、どこからきたのかもわからない人たちがみんな盛り上がってくれるんだから(笑)。

榊原 : この前もシカゴからきた外人から「今日はJAPPARSを観にきたんだ! 」って言われたり(笑)。BLOCK PARTYはそういうことが起こる場所なんです。それこそ普段から遊んでるやつらと一緒にイヴェントやれたら楽しいじゃないですか。で、そこにまた他の人たちが混ざってきて、そこでまた仲良くなるっていう。そういう自然なつながりがあそこで生まれる場所。スガナミさんがやってるバンド(GOLO GOLO)もかっこいいですからね。やっぱりかっこいい音楽をやってる人たちのことは信用しちゃうから(笑)。それに、ああやって定期的に深夜のイヴェントに出ていると、いろんなアイデアも見つかるし。

──それは今回のアルバムがアグレッシヴな作風になったことにも関係してる?

榊原 : あるかもしれないですね。それこそ午前3時とかに音を出すとなったら、「そりゃ思いっきりファズ踏むっしょ!」みたいな(笑)。そういう感じは、今回の音源にも入りこんでると思います。

──「War」とかは、まさにその過剰さが出ていますよね。

榊原 : たしかに、あれは深夜帯のドロドロで不健康な感じにしたかったというか(笑)。あと、ここ1~2年はよくカセットで音楽を聴いてるんですけど、それこそアメリカで買ってきた古いブルースのカセットって、けっこう音が揺れたりするんですよね。で、その感じがほしいなと思って、わざとBPMを落としてみたり。結局、聴く音がすべてだから、気持ちよければそれでいいんですよ。そういう部分を今回のレコーディングでは事故的に出せたんで、それをうまい具合に採用した感じですね。

──すべてコントロールしてこうなったわけじゃないと。

武藤 : そうですね。決まった正解に近づけていくようなレコーディングではなかったので。1曲ずつ、イメージを伝えながらやらせてもらえたので、それはホントありがたかった。

榊原 : うん。それこそ最近の音楽って、形式に則ったままのものもけっこう多いじゃないですか。音が作られすぎてるというか。

──それに比べると、このアルバムはものすごくイビツですよね。でも、ロック・バンドのレコードって本来こういうものだよなって。

武藤 : うん。平均化されたものにならなくてよかったなと思ってます。

榊原 : それこそ今って、ヒップホップとかR&Bのほうがいいものは多いじゃないですか。それは僕も普通にそう思うんですよ。それこそビヨンセとか最高だし。でも、俺はやっぱりビッグスターのほうが好き(笑)。しかも、そこは音楽性云々とかではない部分でもあるんで。

武藤 : 実際、時代性とかもあんまり意識してないよね?

榊原 : うん。いい音楽は時代を越えるしね。それこそ戦前のブルースを聴いてると、そこでなんとなくパンダ・ベアを思い出したりとかするじゃないですか。で、そういうのって、文脈的な意味合いもあると思うんですけど、僕らは評論家でもないですからね。ただ、楽しめればいい。だから、自分たちがいいと思うものをやるっていう。もう、それしかないんですよね。

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LIVE INFORMATION

2017年3月11(土)@高崎club FLEEZ
2017年3月16日(木)@下北沢THREE
2017年4月1日(土)@立川A.A.Company

PROFILE

JAPPERS

2009年頃高幡不動で結成した6人組。2012年に『Lately EP』、2013年に3ヶ月連続7インチ・シングルのリリースを経て、2014年にDead Funny Recordsより1stアルバム『Imginary Friend』をリリース。 下北沢スリーを中心に活動、同世代のミュージシャンの間で大きな話題となる。70年代の感性、90年代のリズム、アメリカ的な大きいサウンドと自在なメロディー、いまの日本にはまったくいないタイプのバンドとして頭角を表す。ペダル・スティールを自在に展開させ、リズムは重くしなやか、そしてボーカルの歌声は深く力強い。

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