2017/03/03 23:40

【REVIEW】どこまで歌っても歌の途中──京都在住SSW、長野友美が3rdアルバムをリリース

長野友美

京都在住のシンガー・ソングライター、長野友美が2011年にリリースした2ndアルバム『春への落下』から6年ぶりとなるアルバム『時のたてがみをつかんで』をリリース。ふちがみとふなとの船戸博史氏をプロデューサー、そして様々なゲスト・ミュージシャンを迎えて作られた今作は、ただの弾き語りに留まらないバラエティに飛んだ曲が並ぶ印象的なアルバムに仕上がっている。OTOTOYでは今作のレヴューを掲載。瑞々しく広がっていく彼女の歌の世界に、是非とも触れてみて欲しい。


長野友美 / 時のたてがみをつかんで
【Track List】
01. うたの途中
02. 春
03. なのに愛は
04. めばるつり
05. 夕暮れに湖面を歩く
06. 時のたてがみをつかんで
07. ほうき星のうた
08. こもかぶりの歌
09. 滑走路
10. 羽根がはえるよ
11. 片想哀歌

【配信形態 / 価格】
16bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 216円(税込) / アルバムまとめ購入 2,160円(税込)

【REVIEW】長野友美『時のたてがみをつかんで』

「どこまで歌っても歌の途中ーー」そんな一節から始まる長野友美6年ぶりとなる『時のたてがみをつかんで』は、古くから歌われ続けて来たような民謡や、70年代以降の日本のニュー・ミュージック、それらを思い起こさせる耳に馴染む美しいメロディと歌が閉じ込められた1枚となっている。

豊かな低音でどこまでも伸びていきそうな凜とした歌声と、ハッとするような耳に残る歌詞、彼女が弾くアコースティック・ギターが鳴らすメロディの良さという彼女の実力だけでも十分魅力的ではあるが、そこにゲストによるピアノやコントラバスなどが加わることによって彼女の歌の世界の色がより濃くなっているのがとても印象的。中でもクラリネットとスティールパンが参加している曲たちは、聴く人たちの望郷の念を思い起こさせるような仕上がりになっている。

そんなアルバムの中でも耳を引くのは、表題曲「時のたてがみをつかんで」と、アルバムの最後に収められている「片想哀歌」の2曲だろう。「時のたてがみをつかんで」は今作で唯一のバンド・アレンジの楽曲で、アルバムの真ん中に置かれ、タイトルになっていることからも分かるように、アグレッシヴなドラム・プレイとメランコリックなギターの音色に乗る彼女の力強い歌声はこのアルバムのピーク・ポイントであるのは間違いない。そしてアルバムの最後に収められている「片想哀歌」はアルバム全体に見られる凛とした彼女のイメージではなく、少しぶっきらぼうに1人の人を思いながら歌われているのが印象的な1曲。この曲だけがどこか場末の酒場感を感じさせるのがなぜだか心地よく、彼女の表現の幅の広さに驚かされる。

彼女も好んで聴くというアイルランド民謡や、70年代以降の日本のニュー・ミュージックが今もなお多くの人々に愛され、歌い継がれているのと同様に、このアルバムもまた時間の経過で良さが失われることのない瑞々しさとしなやかさを持ちあわせた1枚であろう。(Text By 高木理太)

LIVE SCHEDULE

ソロ・ワンマン・ライヴ
2017年3月11日(土)@京都府 喫茶のん

長野友美3rdアルバム「時のたてがみをつかんで」発売記念ソロ・ライヴ
2017年4月1日(土)@京都府 西院ネガポジ

長野友美3rdアルバム「時のたてがみをつかんで」発売記念ライヴ
2017年4月11日(火)@京都府 京都磔磔

【サポートメンバー】
船戸博史(Contrabass)
岡林和歌(Clarinet)
栗本英明(E.guitar)
森部直枝(Flute)
Takuji Itou(Drums)
めめ(Piano,Steelpan)

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PROFILE

長野友美

長崎県佐世保市出身、京都市在住。
2008年春、1stアルバム「何もない日々」をMIDI Criativeより発表。
2011年初夏、2ndアルバム「春への落下」を西沢和弥氏のレーベルDANCING PIG RECORDより発表。
2017年3月、3rdアルバムをMIDI Criativeより発表。

Official HP : http://naganotomomissw.info/
Twitter : https://twitter.com/tomomi_nagano

[レヴュー] 長野友美

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