【REVIEW】ジョーン・オブ・アークのポストロック×インダストリアルな新作に驚く──ハイレゾ先行配信

シカゴに数え切れないほどのバンド・プロジェクトを立ち上げ新たな音楽の可能性を切り拓き続ける、キンセラという二人の兄弟がいる。彼らはポストロック/エモというジャンルを軸に唯一無二のサウンドを鳴らし続けてきた。そんな彼らが主軸を担うバンド、ジョーン・オブ・アークは、昨年3月に活動20周年を記念して京都・名古屋・松本・東京を巡る来日ツアーを敢行し話題を呼んだ。節目を祝い、新たなフェイズに入るや否や彼らは衝撃的な怪作を発表する。それが最新作『He's Got The Whole This Land Is Your Land in His Hands』である。OTOTOYでは、この衝撃的な問題作を、レビューを付してハイレゾ先行配信する。

ジョーン・オブ・アークの最新アルバムをハイレゾ配信!

Joan of Arc / He's Got The Whole This Land Is Your Land in His Hands

【収録曲】
1. Smooshed That Cocoon
2. This Must Be The Placenta
3. Stanged That Egg Yolk
4. Full Moon and Rainbo Repair
5. Cha Cha Cha Chakra
6. Grange Hex Stream
7. Two Toothed Troll
8. New Wave Hippies
9. Never Wintersbone You
10. F Is For Fake
11. Ta Ta Terrordome
12. The Keys to KIngdam(日本盤ボーナス・トラック)
13. Theme from Rainbo(日本盤ボーナス・トラック)

【配信形態】
24bit/48kHz(WAV / FLAC / ALAC) / AAC

【配信価格】
単曲 180円(税込) / まとめ価格 1,800円(税込)


REVIEW : ジョーン・オブ・アーク

ジョーン・オブ・アーク

ポストロックだとかエレクトロニカやノイズといった音楽は、前衛的で複雑なものが多いように感じる。難解でなかなか腑に落ちない音楽を聴いていると不安に駆られることだってあるだろう。しかし、決してコード進行がメロディアスでもなければリズム構成が単調でもないのに、耳から体にストンと落ち着く音楽もあるようだ。

ジョーン・オブ・アークの新作『He's Got The Whole This Land Is Your Land in His Hands』のことだ。鬼才キンセラ兄弟を中心にアヴァン / ポストロックの雄としてシカゴから世界にその名を馳せるジョーン・オブ・アーク。もう結成から20年を優に超えるベテラン・バンドである。この20年彼らは、直感的に情緒を刺激するエモや変態性を帯びるポスト・ロックといった音楽を鳴らし続けてきた。オリジナル・メンバーでシンセサイザーを担当していたジェレミー・ボイルが約15年ぶりに復帰した今作は、彼が最後に関わった4thアルバム『How Can Any Thing So Little Be Any More?』がフォーキーで比較的穏やかな楽曲が占めていたのに比べて、エレクトロニクス感を帯び、ビート性を重視した作品になっている。地を這いずり回るかのように深遠をうねるベース、極限まで音を歪ませて姿を眩ますギター、そして不気味にさえずり響く電子音の数々が生み出す音像はもはやロックというジャンルを超越している。

キンセラ兄弟は各々様々なプロジェクトを抱えている。もちろんポストロックやエモというジャンルを軸にしているのだが、キャップンジャズを皮切りにオウルズやメイク・ビリーヴといったポストロック的アプローチに特化したバンドで制作をしているかと思えば、弟であるマイク・キンセラはオーウェンというソロ・プロジェクトでメロディアスかつフォーキーなアコースティック作品をリリースするなど、それぞれのバンド・プロジェクトで方向性の違う創作を重ねている。そのカオスな制作状況が彼らの独自性を醸成させているが、今作はその一つの集大成と言えそうだ。

ポストロックとノイズ/インダストリアルとポピュラー性の邂逅

例えば、「Smooshed That Cocoon」は工場で響く機械音のようなドラムが楽曲の骨組みを構成しているし、「Ta Ta Terrordome」で奏でられる不協和で打撃的なギターは金槌が鳴らす打響音にも聴こえる。これらに限らず本作は、アルバム全体を通して、ポストロックやエレクトロニカよりも混沌を極めるノイズ / インダストリアルという言葉も冠することができるだろう。しかし、そのような難解なトラックに、ボーカルが紡ぐメロディも違和感なく同居しているのが本作の興味深い点である。メンバーそれぞれのプロジェクトで精錬させているポップ・センスやエモ・センスが、「ポストロックかつインダストリアルなトラック」と「ボーカルのメロディ」という同居し難いものを、リンクさせることに成功している。つまり本作は、「歌モノ」としても咀嚼することができるインダストリアル・ポストロック楽曲が揃っているため、前衛的であるにもかかわらず日常に落とし込めるほど聴きやすい不思議な作品として完成しているのだ。

鬼才キンセラ兄弟率いるポストロック・バンド、ジョーン・オブ・アーク。彼らは、彼らにとって一つの集大成であり一つの実験でもある本作『He's Got The Whole This Land Is Your Land in His Hands』でアヴァン/ポストロック界に新たな可能性を提示した。エッジな音楽を求めて歩み続けて20年を経過した今も、彼らの創作意欲はとどまることを知らない。(Text by 椿 拓真)

RECOMMEND

ジョーン・オブ・アーク / Flowers

1996年に結成以来、ティム・キンセラを中心とした不定形グループとして、別ユニットやソロ・アルバムなども含めると、優に50枚以上のアルバムを生み出し続けているシカゴのポストロック~EMO シーンの最重要バンド。痛々しいほどにエモーショナルだった前作に比して、人生を俯瞰して見つめる視線が感じられる、より穏やか、かつ大胆な作品となった。常に音楽的に、文学的に、進化することをやめないティムの尽きない創造性が、また1つの高みに達した。
>>特集ページはこちら

ジョーン・オブ・アーク / Life Like

96年に結成以来、ティム・キンセラを中心とした不定形グループであり、シカゴのポストロック~EMOシーンの最重要バンドの最新作。キャップン・ジャズの再結成ツアーにより、オウルズ以来、10年ぶりに再会したヴィクターをギターに迎えたエッセンシャルな4人で、USとヨーロッパにてツアーを敢行。強靭に鍛え抜かれた楽曲をもって、ツアー終了直後からエレクトリカル・オーディオ・スタジオに入り、スティーヴ・アルビニによって、バンドの最良の状態を捉えた9曲。
>>特集ページはこちら

オーウェン / NEW LEAVES

シカゴのポストロック・シーンの支柱的存在ジョーン・オブ・アーク。その中心であるティムの実弟でありドラマーでもあるマイク・キンセラがその素晴らしい唄声を披露するソロ・ユニット。すでに3度の来日を果たし、日本でも確固たる人気と評価を誇る。3年ぶり5作目となる本作は、前作同様、ネイト・キンセラやブライアン・デックといった巧みなサウンド・デザイナーらの協力のもと、3年間かけてSomaやEngineといったスタジオから母親の家まで様々な場所で断続的に録り貯め続けてきた珠玉の作品集。父親になるという人生における大きなイヴェントもはさみ、益々温かみ、優しさを纏っていくマイクの唄心が十二分に味わえる。まさに円熟を感じさせる10曲。

PROFILE

Joan of Arc

シカゴのポスト・ロック~EMOシーンにおける先駆的な存在としていまや伝説の域にあるキャップン・ジャズ。そこから果てしない数の素晴らしいバンドが産み落とされた。プロミス・リング、アメリカン・フットボール、owen、Make Believe、マリタイム、アウルズ、フレンド/エネミー、エヴリワンド、ヴァーモント…まだまだある。そんな広大なファミリー・トゥリーの、限りなく中心に近い場所に君臨するバンド、それがティム・キンセラ率いるJoan of Arcだ。別ユニットやソロ・アルバムなども含めると、優に50枚以上のアルバムを生み出し続けている。

>>Joan of Arc official HP

o

 
 

"REVIEW"の最新アーカイヴ

goodtimes、前代未聞な企画《12ヶ月連続音源配信》の第1弾を配信
[REVIEW]・2017年03月15日・goodtimes初音源「beyond」フリー配信開始 突如、アーティスト写真もなく素性のいまいち知れない2人組のギターロックバンドが現れた。彼らの名前は「goodtimes(グッドタイムス)」。バンド名にポエム調なものが多く見受けられる昨今、なかなか潔い名前だという印象だった。彼らは前代未聞の《12ヶ月連続音源配信》をOTOTOYにて予定している。そんなぶっ飛んだ企画をスタートさせた彼らの初音源「beyond」のレビューを掲載する。 goodtimes初音源、無料配信(只今無料配信は終了し、有料配信中)goodtimes / beyond '【配信形態】WAV、ALAC、FLAC、AACフリーダウンロード【収録曲】''1. beyond REVIEW : ストレートすぎる歌詞が内なる気持ちを逸らせる 意味もなく夜更かししてしまった深夜。ひたすらネットサーフィン、聞こえるのは面白くもない深夜番組の声で独り取り残された気持ちになる。気づけばカーテンから青白い光が漏れ始め、もっと清々しい気持ちでこの朝日を浴びたかったな。なんて思ったりする。夜更かししてしまうのはその日に満足していない自分がいるからじゃないだろ
by 宮尾茉実
【REVIEW】Joan Of Arc新作レビュー~ポスト・ロック/エモとインダストリアルの邂逅
[REVIEW]・2017年01月17日・【REVIEW】ジョーン・オブ・アークのポストロック×インダストリアルな新作に驚く──ハイレゾ先行配信 シカゴに数え切れないほどのバンド・プロジェクトを立ち上げ新たな音楽の可能性を切り拓き続ける、キンセラという二人の兄弟がいる。彼らはポストロック/エモというジャンルを軸に唯一無二のサウンドを鳴らし続けてきた。そんな彼らが主軸を担うバンド、ジョーン・オブ・アークは、昨年3月に活動20周年を記念して京都・名古屋・松本・東京を巡る来日ツアーを敢行し話題を呼んだ。節目を祝い、新たなフェイズに入るや否や彼らは衝撃的な怪作を発表する。それが最新作『He's Got The Whole This Land Is Your Land in His Hands』である。OTOTOYでは、この衝撃的な問題作を、レビューを付してハイレゾ先行配信する。 ジョーン・オブ・アークの最新アルバムをハイレゾ配信!Joan of Arc / He's Got The Whole This Land Is Your Land in His Hands'【収録曲】1. Smooshed That Cocoon2. This Must Be T
電子音楽×ブラックメタル-VMO最新アルバム『Catastrophic Anonymous』が実験的に誘う
[REVIEW]・2016年11月11日・【REVIEW】電子音楽×ブラックメタル-VMO最新作、『Catastrophic Anonymous』が魅せる驚異の深淵 Vampilliaの別編成プロジェクトとして始動したVMOは、ノイズやテクノ、ブラックメタルがクロスオーバーしたサウンドとストロボを使用した前衛的な演出が話題となっている。OTOTOYでは、そのVMOのファースト・アルバム『Catastrophic Anonymous』をハイレゾ配信。彼らの実験的な処女作をしっかりと吟味しよう。 VMOの1stアルバムをハイレゾ配信VMO / Catastrophic Anonymous(24bit/48kHz)'【収録曲】1. The Beginning of Fortune feat Chip King(The Body) 2. Acts of Charity3. In Favor Of Cruelty4. Divorcer feat Attila Csihar(Sunn O))),Mayhem)5. Halved feat Chip King(The Body)6. One Day Less7. At The Bank8. Brick Wall