2016/11/29 15:26

【REVIEW】川本真琴、20周年を記念したピアノ弾き語りセルフ・カヴァー・アルバムをハイレゾ配信

川本真琴がデビュー20周年を記念したセルフ・カヴァー・アルバム『ふとしたことです』をリリース。デビュー曲「愛の才能」、大ヒット作「1/2」をはじめ、描き下ろしの新曲「ふとしたことです」など全10曲を収録。全てピアノ弾き語りのアコースティック・アレンジがなされ、まさに川本真琴のシンガー・ソングライター人生が浮かび上がるような同作をハイレゾで配信し、レビューと共にお届けする。

20周年を彩るハイレゾ配信

川本真琴 / ふとしたことです (24bit/96kHz)
【配信形態】
24bit / 96kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC

【価格】
単曲 399円(税込) / アルバム 3,000円(税込)

【収録曲】
1. アイラブユー / 2. fish / 3. 愛の才能 / 4. gradation / 5. OCTOPUS THEATER / 6. ドーナッツのリング / 7. やきそばパン / 8. タイムマシーン / 9. ふとしたことです / 10. 1/2

※ファイル形式について

REVIEW : 衰えることのないヴォーカルと楽曲の魅力を感じる傑作

川本真琴、デビュー20周年。人気写真家・川島小鳥が手がけたジャケット&アーティスト写真には、ロングヘアでこちらをこちらを見る大人っぽい彼女がいる。ピアノ弾き語りによる初のセルフ・カヴァー・アルバム『ふとしたことです』は、デビュー当時にアコースティック・ギターを抱えて元気に歌っていたショートカットでボーイッシュな彼女のイメージとは対照的だ。ピアノとギター、ロングヘアとショートヘア。そんなところにも20周年という時の流れを感じさせつつ、いささかも衰えていない歌声がここにある。

20周年という節目に、有名ミュージシャンをゲストに集めて賑々しくヒット曲を収録することもできたかもしれないが、あえて自身初のピアノ弾き語りを中心にまとめるあたりには、デビュー時からメジャーで華々しく脚光を浴びていたにも関わらず、ポピュリズムとは一線を画した活動を経由してきた彼女らしい気がする。

川本真琴デビュー20周年記念 短編映画 第一章
川本真琴デビュー20周年記念 短編映画 第一章

率直に言って、やはり聴きどころは岡村靖幸作曲(作詞は川本)による1996年のデビュー・シングル「愛の才能」、1997年の3rdシングルにして現時点での自身最大のヒット曲「1/2」だろう。「愛の才能」の、恋愛におけるドキドキ感というにはあまりにもダークな、何か得体のしれない感情に苛まれているような歌の世界観がアコースティック・ギターによるオリジナル・アレンジとは好対照なピアノの演奏でむき出しになっている。比較的クールに歌っているヴォーカルとは裏腹にピアノがダイナミックに抑揚をつけて感情を表現しており、終盤に向かうにつれて高まり緊張感を増す息詰まる展開はスリル満点だ。ラストのサビでブレイクするピアノの間隙を縫って早口で炸裂するヴォーカルがハイライト。はっきり言って原曲アレンジを大きく上回る大傑作である。

「1/2」に関しては2012年10月に新宿歌舞伎町風林会館で行われた「フェアリーチューンズ」レコ発ライヴで観た光景が浮かんでくる。この日、川本は「1/2」も「愛の才能」も歌わなかったのだが、三輪二郎と別の曲をデュエットしている途中で自ら三輪に「1/2」を歌うように言い、三輪がサビの一節を歌った。その一瞬だけで観客もドッと沸いた覚えがある。それだけこの曲の持つキャッチーさは格別なものだ。今作ではラストに収録されており、川本のピアノに加えアコースティック・ギター、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、パーカッションによる演奏でミディアム・バラード調に仕上げ、新たな曲の魅力を聴かせている。こんな大胆なアレンジができるのも、曲の良さがあってこそだろう。また、デビュー・アルバムからは「やきそばパン」「タイムマシーン」も取り上げられており、いずれも表現力豊かな歌声を聴かせている。

近年の活発な活動から生まれた「アイラブユー」、「gradation」と言った素朴で感動的な曲の息遣いまで聴こえるところや、今作のために描き下ろされた新曲「ふとしたことです」で使われるトイピアノの響きが楽しめるのも、臨場感のあるハイレゾ音源(24bit/96kHz)ならでは。デビュー当時から川本真琴を知るファンも、近年の活動で知ったリスナーも、まったく原曲を知らない人でも、一聴すれば彼女が書くメロディの良さと、ヴォーカリストとしての力量を感じることができる今作。アーティスト・川本真琴の魅力にとりつかれるはずだ。(text by 岡本貴之)

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川本真琴 / Remix

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ぱいぱいでか美 / レッツドリーム小学校

川本真琴のデビュー前、Lupino時代の伝説の未発表曲を提供したぱいぱいでか美の歌手デビュー・アルバム。川本真琴の他にもマイネームイズうがい(どついたるねん)、澤部渡(スカート)、植野隆司(テニスコーツ)、三輪二郎、宮崎貴士(図書館/グレンスミス)、佐藤優介(カメラ=万年筆)、牧野琢磨(NRQ)、藤井洋平、三沢洋紀+大島輝之が参加している。

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LIVE SCHEDULE

川本真琴withゴロニャンず

年忘れ感謝祭、グルーヴするでぇ、川本真琴withゴロニャンず!
2016年12月27日(火)@shibuya 7thFloor
時間 : OPEN 19:00 / START 19:30
料金 : 前売り 3,000円(+1drink) / 当日 2,500円(+1drink)

PROFILE

川本真琴

1974年1月19日生まれ。福井県出身。

1996年、ソニーレコードよりシングル『愛の才能』(岡村靖幸プロデュース&作・編曲)でメジャー・デビュー。キュートでスピード感のある独特の歌唱とオリジナリティ溢れるソングライティングでヒット・シングル(アニメるろうに剣心・主題歌「1/2」など)を連発し、1stアルバムはミリオンセラーとなった。2000年代初頭よりプライベートオフィスを設立し、メジャー / インディにとらわれない活動で、自由に作品を発表し続ける日本の女性シンガー・ソングライターとしては稀有な存在。

近年は「mabanua」「佐内正史」「神聖かまってちゃん」らとのコラボレイト作品や「竹達彩奈」「ぱいぱいでか美」「嶽本野ばら」「峯岸みなみ」への楽曲提供、絵本の原作、CMの歌唱など活動の幅を広げている。

また〈SUMMER SONIC〉〈YATSUI FESTIVAL〉〈JOIN ALIVE〉〈ボロフェスタ〉〈残響祭〉〈夏の魔物〉など様々なフェスにも積極的に参加している。

川本真琴 Official HP

[レヴュー] 川本真琴

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