2016/11/23 16:45

ペイヴメント meets ニール・ヤング&クレイジー・ホース的大陸サウンド、フラットライナーズの2nd先行配信

漫画家・浦沢直樹の弟子であった石川俊樹(Ba, Vo)を中心に結成された日本語インディー・ロック・バンド、フラットライナーズ。リアルな世相を歌いながらも、どこか第三者視点であり漫画的である歌詞世界、ペイヴメントとニール・ヤング&クレイジーホースとが合体したような骨太な楽曲に、bloodthirsty butchertsの吉村秀樹を彷彿とさせる繊細な歌声。そんな魅力を持つ彼らが1stアルバムから4年ぶりに、アルバムを完成させた。WEARE!、Hello Hawk、my ex、Ohayo Mountain Roadらの作品を送り出ししてきた〈POWER ELEPHANT!〉からのリリース。エンジニアにLOSTAGEなどを手掛けたKCこと岩谷啓士郎を迎え、ライヴ感と繊細さの同居する仕上がりとなった本作を、1週間先行、さらにハイレゾ音源にて配信がスタートした。

フラットライナーズ / 4WD
【Track List】
01. 4WD
02. 君は悪くない
03. 都落ち
04. ホライズン
05. ただの星屑
06. おかいもの
07. スプリングソング
08. ボーイズ&ガールズ世界大会
09. 思い出
10. ワイルドライフ

【配信形態 / 価格】
24bit/48kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 199円(税込) / アルバム 1,620円(税込)
※AACのみ単曲 150円(税込) / アルバム 1,296円(税込)
アルバムご購入で歌詞ブックレットのPDFがつきます

INTERVIEW : 石川俊樹(フラットライナーズ)

東京・名古屋在中のメンバーにより結成されたフラットライナーズがセカンド・アルバム『4WD』を完成させた。ファースト・アルバムにあった衝動、焦燥はやや影を潜め、地に足の着いたテンポ、サウンドがまず心地よい。歌詞はより日々の営みを切り取りながらも苦みと柔和さが増した。パンクともオルタナともグランジともちょっと違う、ライヴ感がありつつも繊細さが光る録音もグッド。普段は大学講師として漫画について教鞭を振るってもいるベース/ヴォーカル、石川俊樹に話を聞いた。

インタヴュー&文 : 板垣周平(perfectlife)

「生涯1枚この作品だけ」というような気持ちで作っていたので… セカンド・アルバムが作れるとは思っていませんでした(笑)

──前作のファースト・アルバム『不運な人』より今回のセカンド・アルバムまで4年間という歳月が経過しましたが、その間の活動は?

まずは、前作を発表したあとにしばらく曲が作れなくなりまして。1年間位は試行錯誤してたんですね。で、結局リリース前の1年間くらいで今作の収録曲の約半分を作って。残りの曲はファースト・アルバムを作っていた時期にすでに出来ていたものを収録した感じです。

──今作に収録された曲がファーストアルバムから漏れた理由などはありますか。

当時はとにかくファースト・アルバムという意識よりも「生涯1枚この作品だけ」というような気持ちで作っていたので… セカンド・アルバムが作れるとは思っていませんでした(笑)。でも、ファーストのリリース後にライヴで少しづつアレンジも変えながらファーストには入れなかった曲も演奏していたので、その内にだんだんしっくりくるようになってきて、今回収録に至ったという感じです。

──「生涯1枚」という気持ちで作ったアルバムのあとに、またフル・レングスを作る気持ちになったのは、レーベルからリリースの打診があったことが大きかったのでしょうか。

そうですね。レーベル・オーナーの矢田さん(POWER ELEPHANT!)はファーストのリリース後、割と早い段階から声を掛けてくださっていたので。しかし、リリースの打診があった当時は曲もまだ揃ってなかったのでフル・レングスという考えは全然なくて。基本、ライヴが決まるとスタジオに入ってライヴのセットリストを練習するのですが、その合間で少しずつ新曲をメンバーの反応を見ながら(笑)、歌ったりして、イケそうな雰囲気になったらまたセットリストの合間でアレンジを固めてって感じでしたので少し時間は掛かりましたが、ファースト時代の曲のリアレンジと新曲とが出揃い、セカンド・アルバムとしてのレコーディングに臨みました。

──レコーディングはいつごろから? 録音環境はいかがでしたか?

もともとウチの井上君とバンドメイトで東京の頃から知り合いだったエンジニアの岩谷啓士郎さんが奈良に移住し、そちらで録音できるというお話をいただいたところから奈良で録音したのですが、とてもやりやすかったです。

──かなりの早録りですね…。

なんていうか「サイコーじゃん?」みたいな感じでメンバーみんな割とすぐ納得しちゃうんですよね(笑)。

──録音に際して参考にした音源などありましたでしょうか。

エンジニアの岩谷さんがLOSTAGEのライヴ・アルバム(『LOSTAGE AT SHIBUYA CLUB QUATTRO』)を録音されていてそれがめちゃくちゃ格好良く録れていて、メンバーとも「こんな感じで録れたらいいね」って話はしてました。

──なるほど。確かに今作はライヴ感のある仕上がりとなっていますね。

ですね。あと、前作が割と自分の中ではアメリカン・パワーポップ! みたいな仕上がりだったのに対し、今回の収録曲はもう少しポップな感じの曲が多い気がしたので、繊細な部分も残したい気持ちもあり、その辺の塩梅も岩谷さんがうまくまとめてくれました。ファーストのエンジニアである柏井日向さんがブッチ・ウィグだとすると岩谷さんはジム・オルークって感じで(笑)。ライヴ感と繊細さの同居といいますか。

4WDのジムニーを買ったってところから膨らんだもので。四駆ってやっぱりグイグイ走るんですよ。その感じが、なんかイイなあって…

石川俊樹

──今作は1曲目の「4WD」からしてファーストとは違う印象を受けます。ミッドテンポな曲で幕を開ける感じからして。

自分はベース・ボーカルなので、最初にメンバーに曲を聴いてもらう時はベースで弾き語りするんですけど… 単音だからメジャーコードなのかマイナーコードなのかも分からない(笑)。この曲も最初にスタジオで披露したときは「ボツかなぁ…」って感触だったのですが、メンバーが素晴らしいアレンジをしてくれたのでいい感じの仕上がりになって良かったです。

──このドッシリとした始まりには風格すら漂っています… テンポがゆったりなので歌詞も明瞭で、刺さってきますね。

歌詞は曲名の通り、4WDのジムニーを買ったってところから膨らんだもので。四駆ってやっぱりグイグイ走るんですよ。その感じが、なんかイイなあって… 歌詞もアルバム・ジャケもそのまんまじゃねえか! って話ですが(笑)。

──一転、2曲目の「君は悪くない」は急にジュンスカ感全開で少し驚きました(笑)。

(笑)。この曲もちょっとストレート過ぎるかなあと自分にはためらいがありましたが、メンバーが意外と気に入ってくれていたのでいいかなと。

──このアルバム冒頭の2曲でもう、時代とか流行とかとは遠く離れた場所で音が鳴らされている感じがあって、掴まれました。

そう言って頂けると嬉しいです。

──3曲目「都落ち」、4曲目「ホライゾン」辺りから、やっと今までのフラットライナーズぽくなってきますね。

本当は「ホライゾン」を1曲目にしようと思っていたのですが… 曲順に関しても今回は岩谷さんの意見をだいぶ取り入れまして。曲順くらい自分たちで決めろよって感じですが(笑)。

──そうなんですね(笑)。この曲は完璧じゃないディレイタイムのギターが「人間味のあるU2」みたいな印象を受けました。

U2感ありますよね。リズムも揺れまくりなんですけど、ニューウェイブっぽい楽曲なのかなと。

発売前にすでに何人かの方に今作を聴いてもらったんですけど、「おかいもの」は評判良かったですね

──5曲目「ただの星屑」、6曲目「おかいもの」、この2曲はアメリカンな楽曲の仕上がりですね。何だかクレイジーホースみたいな。ライヴを何度か拝見させていただいた時はこういった大陸的なサウンドのイメージがなかったので新鮮でした。

確かにこの2曲はライヴでは披露してませんでしたね。自分の中ではこの2曲は小曲って感触があって、ライヴではやっぱりカマしたいという意識が毎回あるので自然とセットリストからは外れてましたね。

──ライヴ映えしそうですけどね。

メンバーは気に入ってるんです。特にメンバーのイソネエ(磯たか子 / Dr)は「"おかいもの"を今回収録しなかったらアルバム作らない!」と言っていたくらいで。小曲だと思っていた自分としては「え! そこまで!」って(笑)。

──メンバー間で温度差がある楽曲なんですね。でも、作曲者よりもメンバーの方が気に入ってる曲っていうのは「曲が独り立ちしている」ってことでもあるので、名曲だったりしますよね。

なるほど、そうですね… 発売前にすでに何人かの方に今作を聴いてもらったんですけど、「おかいもの」は評判良かったですね。

──「ボーイズ&ガールズ世界大会」はダイナソーJr.とかの匂いもあります。

この曲は実はファーストの録音の時にレコーディングまでしていたんですよ。レコーディングまでして前作からは漏れた唯一の曲です。矢田さんからこの曲を入れてほしいとのリクエストも頂きましたので、今回再録音しました。

──9曲目の「思い出」はアコースティック・ナンバーです。

これもかなり古い曲です。以前、マイスペースにこの曲のデモ・ヴァージョンをアップしたところ大変に反響が良かったのが頭の片隅にあって。ファーストにはこういう感触の曲はなかったので、今回収録してみたいと思いました。岩谷さんがこの曲を素敵にパッケージしてくれる予感もありましたので。

──歌詞についてもお聞きしたかったのですが、石川さんの声の質感や楽曲からはどうしてもフォークシンガー的・私小説的な雰囲気が漂うのですが、歌詞の内容は全く違いますね。歌詞の中の登場人物の物語として成り立っていますし、フレーミングされています。特にこの曲の主人公は女性を想起させますし。

この曲は確かにアルバムの中でも1番フィクションの要素が強いですね。この年になると自身の現実は全然ドラマティックではないですしね(笑)。あと、以外とメロディ先行というよりは歌詞が先行している箇所もありまして。言葉がハマるようにメロディの方を変えたりもしますね。あとはベースを弾きながら歌うのが難しかったりして、自然とセンテンスが短くなったりもしますね(笑)。

──そういう過程全てがロック・ミュージックという気がします(笑)。

ベースのフレーズを弾くと歌がおろそかになるんですよ(笑)。

──(笑)。

ベースがハイポジションに移行するとメロディもつられて上がっていってしまったり…

──なるほど(笑)。最後の曲「ワイルドライフ」は歌詞が英語のフレーズで始まります。この英語での歌い出しがアルバムの締めとして効いていますね。

「思い出」でアルバムが終わってもいいかなと作る前は思っていたのですが、メンバーから「寂しい感じで終わるのは嫌だ。アルバムの最初の曲に繋がるような終わり方にしたい」との提案があり、この曲を最後に持ってきました。

──では最後に、発売後のツアー予定、活動の展望など。

メンバーがリズム隊が名古屋、ギター二人が東京なのでその2都市ではレコ発を行う予定です。共演も素晴らしい方達を予定しておりますので、是非とも遊びに来て下さい!

過去配信中の作品

フラットライナーズ / 不運な人

ペイヴメントやスーパーチャンク、ピクシーズなどに憧れ、その衝動を抱えたまま純粋にロックを奏でる。歌詞は一貫して"貧乏"、"恋愛“(失恋)、"仕事(のつらさ)"。普段、誰もが抱えているような悩み、哀しみ、怒りなど様々な想いを繊細に、時に暴力的に、そして感傷的に叫ぶ不器用な男のロックが詰まった1枚。今作のレコーディング/ミックスはアナログフィッシュやキリンジ等も手掛ける柏井日向が担当。

LIVE INFORMATION

スイートサロン ロックの友達
2016年12月17日(土)@吉祥寺MANDA-LA2
出演 : SweetSunshine / MINAKEKKE / 田渕ひさ子 / フラットライナーズ

M☆N☆T新年スペシャル企画
2017年1月9日(祝月)@六本木VART

POWER ELEPHANT! & フラットライナーズ企画 フラットライナーズ『4WD』リリース記念ライヴ
2017年2月4日(土)@下北沢Basement Bar
出演 : DIRTY SATELLITES / オハヨーマウンテンロード / toddle / フラットライナーズ

PROFILE

フラットライナーズ

2001年頃東京で結成、メンバーチェンジを経て2006年に現在の石川俊樹(b/v)佐藤誠司(g)井上雄介(g)磯たか子(d)に固まる。メンバーそれぞれ音楽的趣向は微妙に違うが、全員ピクシーズやペイヴメントに代表されるUSインディーロックを愛するところで団結。コードオンリーのベースと控えたドラムのリズム隊に乗っかるツインリードの分厚いギターアンサンブルが特徴。石川と佐藤は元浦沢直樹氏のアシスタント。井上はtoddleの小林愛さんとswarms armで活動していた。磯は自分のメインバンドsweetsunshineでも活動、シティポップ、AORがメインで本職は鍵盤である。2008年石川と磯が名古屋へ引っ越し、東京と東海圏でマイペースに活動する事となる。2012年YOUTHレーベルから1stアルバム「不運な人」を発売。エンジニアは柏井日向氏。その後も主に東京、名古屋、京都で地道なライブ活動を続けて2016年11月30日POWER EREPHANT !レーベルよりエンジニアに岩谷啓士郎氏を迎え2stアルバム「4WD」を発売するに至る。

>>フラットライナーズ オフィシャル・サイト

[インタヴュー] フラットライナーズ

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