2016/03/24 12:31

静岡発、ターニング・ポイントを経て掴んだ2つの軸──Jam9、ニュー・アルバム配信開始

左から、Giz’Mo、イシノユウキ、MOCKY

Giz’Mo(bass& rap& chorus)、MOCKY(turntable)、イシノユウキ(guitar& vocal)からなる3人組、Jam9(ジャムナイン)が4thアルバム『SKETCH』をリリース。結成から13年、メジャー・デビューから6年経つ今も静岡県内に在住し活動する他、人気アーティストへの楽曲提供も行なっている彼らにインタヴュー。

Jam9 / SKETCH
【配信形態】
ALAC / FLAC / WAV / AAC / MP3

【配信価格】
単曲 258円(税込) / まとめ購入 1,700円(税込)

【Track List】
01. NEXT!! / 02. ONE -we're SHIMIZU S-PULSE- / 03. バイバイ / 04. 巡会歌 -feat.MIKU from CLEEM- / 05. RESTART / 06. LIFE 〜10年後のアナタへ〜 / 07. breath / 08. 月照歌 -feat.曽根由希江- / 09. ハシリダセ / 10. island melody -2nd mix-

「ハシリダセ」 プロモーション動画
「ハシリダセ」 プロモーション動画

INTERVIEW : Jam9

自分たちの武器であるメロディを最大限に活かすため、楽器の担当や、フィーチャリング、曲作りを突き進めてきた静岡県在住の3人組、Jam9。話を訊けば、これまでリストラにあうなど、何度も挫折しかけないシチュエーションに遭遇してきている。それでも音楽を続けてきたのは、必ず彼らのメロディが支えになってきたからだ。Jam9が作曲をしたAAAの「愛してるのに、愛せない」が、2015年のレコード大賞で優秀作品賞を受賞したことは、彼らの信じているものが間違っていなかった結果の1つといえるだろう。おもしろいのは、そこからさらに自分たちの曲を客観視することで、メロディを向上させる努力を惜しまないところだ。Jam9が音楽へ向かいあう姿勢、そして『SKETCH』について、3人に話を訊いた。

インタヴュー : 西澤裕郎
構成 : 鶯巣大介

それがJam9をスタートしたときのコンセプトになりました

ーーまず、これまでのJam9の活動について訊かせてください。ユウキさんとGiz’Moさんはご兄弟ということですが、MOCKYさんとはどういう経緯で知り合ったんでしょう。

Giz’Mo : 僕のバイト先にMOCKYが入ってきたのがきっかけで出会ったんです。そもそも僕らは兄弟でバンドをやっていて、ほかにドラムとヴォーカルのメンバーがいたんですけど、そいつらが抜けるって電話をバイトの休憩室で受けたんですよ。奇跡的な話なんですけど、それがMOCKYの初出勤の日で。初対面だったんですけど、着替えながら僕の電話を聞いていて、電話を切ったあとで「こんちわっす、音楽やってるんですか? 俺DJやってるんですよ」って話かけてきたんです。

MOCKY : 空気が重たいですよね(笑)。だから、どうしよう… それを言うしかないと思って。

ーーあはははは。

Giz’Mo : それで、メンバー2人を失った直後に「お前、俺のバンド入らない?」って誘ったんです(笑)。ものすごいツアーのスケージュールを組んだあとだったので、ツアーを乗り越えるために「DJだったらなにかできるんじゃないか」と思って。

イシノユウキ(以下、ユウキ) : 僕らは、その当時すごく流行っていたミクスチャーというか、ハードロック・バンドみたいな音楽をやっていたんですよ。だから、DJっていうものについて、ほとんど知らなかったんです。逆に、一緒にやったら何ができるんじゃないかって、すごく興味をそそられたんですよね。

ーー偶然の出会いがあってJam9は結成されたわけですね。そこからどういう形態で、楽曲を演奏していったんでしょうか。

Giz’Mo : 鍵盤を入れたバックトラックを組むことに初めて挑戦していきました。いまでこそ、バックトラックなんて当たり前のものなんですけど、当時僕らはバンド側の人間だったので、13年前の僕らにとってはすごく新しかったんです。

ユウキ : ドラム・レスなんだけど、DJが入ることで新機軸を打ち出せないかってことをすごく考えました。当時対バンしていたバンドで、そういう形でやってる人はほぼいなかったので。

Giz’Mo : その前やっていたバンドでは、手数や演奏の面白さみたいなものを追求し続けてきたので、ドラムがいなくなることで、それが難しくなるわけじゃないですか。あとは何が残るのかと考えたらメロディで、それがJam9をスタートしたときのコンセプトになりました。

ーー3人になったことによって浮かび上がってきた武器が「メロディ」だったと。

Giz’Mo : そうですね。Jam9に変わったことが、僕らのなかでの転換期でした。余分なものを捨て切って、曲を活かすために何をやるかを考える時期だったんです。だからこそ、テクニカルな部分は全部捨てたし「曲を活かすためにサビはお前が歌ったほうがいいよ」ってことを話したり、個人的な主張が一切なくなった瞬間だったというか。自分たちがそれぞれ得意なものを把握したうえで、曲を作れるようになっていきましたね。

ーー音楽は自己表現する場でもありますよね? そうした部分から逃れて、そうした曲の作り方ができるようになったのは、すごいことですよね。

Giz’Mo : それは規制があったからだろうね、やっぱり。

ユウキ : あと逆に、できなくなってしまったっていうのが大きかったですね。僕らは元々歌ったこともなかったので、歌いながらはそんなに弾けないってことに初めて気がついて。必要最小限を弾いて、あとはしっかり歌わないと、僕らが大事にしているメロディは絶対伝わらないと思ったんです。

ーーそうした駆け出しでバンドをやっている状態から、音楽で食べていくんだと切り替わったポイントはどこにあったんでしょう。

Giz’Mo : デビューする1年前が、ターニング・ポイントでした。「派遣切り」って言葉が流行った時期なんですけど、まさに仕事がなくなっちゃって。たまたまそのタイミングで、ドリーミュージック・がうちで音楽をやってみないか声をかけてくださったんです。1年間トライアル期間があったんですけど、その期間に無職のまま突入するっていう、本当に人生をかけた瞬間でした。

ユウキ : そんな状態だったので「これでだめならしょうがないな」と思えたんです。あと、最初にデビューの声をかけてくれた人が「作家にならない? 曲がすばらしいんだよ」って言ってくれて。そのとき、「あぁ、やっぱり曲だけはほかの人たちに劣ってないものが作れてるんだ」と思うことができましたね。

いま歩いているこの瞬間を切り取るものであるべきだと感じたんです

ーー今作についても訊いていきたいのですが、『SKETCH』というタイトルには、どういう意味が込められたのでしょうか。

Giz’Mo : 最近、大人になってきたなと思うことがあって、物事を点じゃなくて線で考えられるようになってきたんですね。「アルバムを出すぜ!」ってところに点を置いて向かっていくんじゃなくて、通過点を超えて、その先で何をするかって考えられるようになっていった。そうしたら、今回出すアルバムは、いま歩いているこの瞬間を切り取るものであるべきだと感じたんです。だったら『SKETCH』だねっていうことで、このタイトルをつけました。

ユウキ : いまこの年齢で歌わなくていいことだったら、歌わなくていいんじゃないかって思えるようになったんです。僕らがいま自分で生きている時代を映さなかったら、人の時代を映す曲にはならないないと思うので。

ーーみなさんは作家としての活動において、2015年だけでも、名だたるアーティストに10曲近く楽曲提供をされていますよね。自分たち以外のアーティストに作る曲と、Jam9として作る曲では、制作方法に違いはありますか?

Giz’Mo : 制作の感覚やマインドが違うのかなっていうことを思っていて。僕らが歌う曲は、僕らだから歌える曲であって、他のアーティストさんはその人たちが歌うからこそ、すばらしい楽曲になるべきだと思うんですよね。って考えたときに、自分たちが歌えない曲を歌ってもらえるように作っているというか。

ーー楽曲提供したことで、自分たちの制作にフィードバックされたものってありますか。

Giz’Mo : それはすごくありますね。昨年末、レコード大賞で優秀作品賞を取ったAAAさんの「愛してるのに、愛せない」って曲があるんですけど、リリースされて改めて聴いたときに「あ、すげぇいい曲だな」と自分ながら思ったんですよ。すごく聴きこんだあとなのに、なぜいい曲だと感じるんだろうって考えて、それを踏まえて作ったのが、今回のアルバムに入っている「バイバイ」という曲なんです。切ない響きとして、自分のなかで消化できた曲というか。

AAA / 「愛してるのに、愛せない」Music Video
AAA / 「愛してるのに、愛せない」Music Video

ーー「愛してるのに、愛せない」を経て、どういう部分が「バイバイ」に反映されたんでしょうか。

Giz’Mo : 和メロの響きを見つめ直せたんです。AAAさんの曲を書いているときは、和メロがどうなっているのか具体的に考えもせず作っていたんですよね。だけど出来上がったものを聴いて、メロディを鍵盤で触りながら研究したときに「あ、こことここが抜けてるのか」って気がついて。その曲は5音階で組まれていたんですよ。つまり、ドレミファソレシドの7音階じゃなくて、4番、7番が抜けてたんですね。僕らもちゃんと理論を学んだわけじゃないんですけど、例えばドレミファソラシドの4と7を抜くと…。(iPhoneを取り出し、鍵盤アプリで実演)

ーーあぁ、切ない響きになりますね。

Giz’Mo : これだけで懐かしい感じがするんです。どの順番で弾いてもどっかで聴いたことある感じになる。

ユウキ : 「咲いた、咲いた」(チューリップ)とかもそうでしょ? 学校の校歌だったり、童謡とかは4、7を抜いてる曲が多いですね。

ーーそうした理論に自分で書いた曲を研究しているうちに気がつくって、面白い話ですね。その気づきを元に「バイバイ」を制作したと。

Giz’Mo : そうなんですよ。「愛してるのに、愛せない」はサビがそうなっているんですよ。

ーーあと、Jam9の特徴のひとつに静岡を拠点に活動しているという点があります。僕は出身が長野なんですけど、もう東京に出てきてしまっていたり、地元愛はそんなにないんですけど、静岡にいながら活動を続けられる原動力ってなんなんでしょうか。

Giz’Mo : ある種、出てこれた人って、それなりに覚悟を持っている人だと僕は思っていて。だからこそ、そこで覚悟を持って東京に出ていった人に負けたくないって気持ちがあったんです。ライヴで「あの静岡から来てるやつらよかったよね」って言わせてやろうって。積み重ねていくうちに、背負うものが出てきて(笑)。

ユウキ : 最初は意地のほうが強かったですけどね。あと、アマチュア時代は親にすごく支えれらながら活動してきたので、自分たちが生きていくなかで大事なものがある場所だから離れたくないっていうのが1番大きいですね。逆にそういうことに気づけたからこそ、自分たちが作る曲も、家族だとか、自分の身の回りの人をテーマにすることが多いです。

ーー僕は、Jam9の曲ってすごくタフに感じるんですね。それこそさっき話に出てきた派遣切りだったりとか、メンバーの急な脱退とかがありながらも、決してメロディも歌詞も後ろ向きじゃないものを掲げています。

Giz’Mo : まもなく結成13年なんですけど、大変なことを笑いとばしてやってきたんですよね。覚悟はあったし、いまもその気持ちはもってるけど、とにかく周りの人に恵まれていたなと思っていて。派遣切りにあったときも、デビューするチャンスをくれた会社があったり、車のなかで生活しながら全国を回っていたけど聴きたいっていってくれる人がたくさんいたとか。そういう環境がポジティヴでいられた理由なんだと思っています。

ユウキ : デビューが決まるまでは、自分が!! 自分が!! って気持ちだったり、わからせたい、認められたいって気持ちもあったんですけど、そういうところからは離れたかなと思いますね。支えてくれた親のためにも、稼げるようになりたいって思いましたし。

同じ事務所ですけど真逆のところにいる人たちですね

ーーガラリと話は変わるんですけど、同郷かつ同じ事務所のバンド“RED PENCIL TEACHERS” のことは、どう感じていますか?

【RED PENCIL TEACHERS】 Message【赤ペン】
【RED PENCIL TEACHERS】 Message【赤ペン】

注) RED PENCIL TEACHERS… 顔出しNG、静岡発の5人組ラウド・ロック・バンド。圧倒的なパフォーマンス力を誇りながら、よくよく聴いてみるとあまりにもフザケた歌詞が特徴。ほぼ全員がプロ・ミュージシャンという経歴を持つ。

ユウキ : 大人になってから、ふざけた感じでバンドを始められるのは羨ましいですよね。考えようによっては、時間の無駄ですからね(笑)。だってこれ、誰に刺さるか不明じゃないですか。

ーーあははは。彼らがどういう人たちなのかなと特集記事を読んでみたら、赤ペンで質問に答えでいるだけで、なんだかよくわかんなかったです(笑)。ただ、ふざけていることだけは伝わってきました。

ユウキ : どのくらい台無しにできるかっていうのが仕上がりの度合いなんですよね。Twitterとかでも「せっかくかっこいいのに歌詞が…」とか書かれていると「わかってくれたか!」って思うんじゃないですかね。

Giz’Mo : ONE OK ROCKとかMY FIRST STORYとか、いま旬なバンドって英語7割で、そのなかで飛び出してくる日本語の浮きたち方がすごい、そういうかっこよさがあって。同じこと目指しつつ、それをとてつもない言葉で浮き立たせてやろうっていう、ちょっとふざけた発想がありそうですね。

ユウキ : この人たちが若かったら、こういうことはやれていなかったと思います。若かったら、もっとかっこつけたかったというか「孤独が…」とか、内面的なところを歌ったりしたと思うんですけど、中身がなんにもないですからね(笑)。

Giz’Mo : みんなそれぞれが別でメジャー・デビューしてるんで、そこではできないことをやりたかったんだと思います。同じ事務所ですけど真逆のところにいる人たちですね。

ーーあははは(笑)。同じ静岡出身ということでどちらも応援してます!!

RECOMMEND

シクラメン / こんにちは羽田

昨年自身最大規模となる1万2000人を動員した全国ツアーを成功に収めたシクラメンが放つ、ミニ・アルバム!

this is not a business / DEATH MARCH

天狗覆面バンドThis is Not a Businessのサード・アルバム。一度は音楽に挫折した5人のメンバーで結成され、2013年8月のデビューから1年未満でインディーズ・チャートを賑わせる彼等が、前作から僅か4ヶ月でリリース。

RED PENCIL TEACHERS / ATAMAYOKUNAR

赤ペン先生が静岡から放つ、「ミクスチャー」?「エレクトロニカ」?「エモ」?ロック! 全員プロ・ミュージシャン! フザけた歌詞!赤ペン先生は、生徒を絶賛募集中です!

LIVE INFORMATION

2016/04/01(金)@浜松LiveHouse窓枠
2016/04/02(土)@JR徳山駅
2016/04/03(日)@ゆめシティ新下関
2016/04/10(日)@浜松FORCE
2016/05/01(日)@福岡Music space B-THREE

PROFILE

Jam9

2003年結成の静岡県在住の3人組。2010年のメジャー・デビュー後も地元静岡から音楽を発信し続けている。 メンバーそれぞれが複数の楽器を操る等、ミュージシャンとしてのプレイアビリティもさることながら、Jam9の活動と並行して『E-girls』『KARA』『倖田來未』などにも楽曲を提供し、ソングクリエイターとしても注目を浴びている。

Official HP

[インタヴュー] Jam9

TOP