【独占配信】透き通るような音色と繊細なタッチを11.2MHz DSDで収めた、ピアニスト林正樹によるライヴ・レコーディング作品
菊地成孔、椎名林檎など多くのジャンルのアーティストと共演し、寵愛を受けるピアニスト、林正樹。彼が、徳澤青弦(Cello)など5名の演奏家を迎えて発表した新作『Pendulum』では、ジャズやクラシック、はたまたアンビエントを独自の観点で折衷した、魅惑のアンサンブルが展開されている。今回、この『Pendulum』に収録された楽曲をもとに、〈Red Bull Studios Tokyo〉で行われたライヴ・レコーディング作『 Pendulum——Live Recording at Red Bull Studios Tokyo』をOTOTOY独占で配信。現状最高フォーマットと呼ばれる11.2MHz DSDで録音、リリースされた本作には、『Pendulum』にも参加した電子音楽家、Fumitake Tamura(Bun)とのセッションも収録。透き通るような音色と繊細なタッチ、そしてDSDでしか味わえない音の“鳴り”をお楽しみいただきたい。
林正樹 / Pendulum ——Live Recording at Red Bull Studios Tokyo(11.2MHz DSD+mp3)
【Track List】
01. Teal
02. Flying Leaves
03. Jasper
04. Pendulum
【配信形態】
11.2MHz DSD+mp3
※ファイル形式について
※DSDとは?
【価格】
まとめ購入のみ 2,000円(税込)
【レコーディング機材協力】
iFI-Audio
11.2MHz DSDの再生方法
11.2MHz DSDの音源は、以下の対応USB DAC / 再生ソフトを組み合わせることで簡単に再生することができます。
簡単再生ガイド
1. OTOTOYから音源をダウンロード
2. お使いのPCもしくはiPhoneと11.2MHz対応のUSB DACを接続
3. 接続したUSB DACのドライバを再生ソフト上で選択
4. 再生ソフトから11.2MHzの音源を開く
※3は再生ソフトごとに設定の方法が多少異なります。詳しくはそれぞれのソフトウェアの使用方法をご参照ください。
11.2MHz DSDのネイティヴ再生対応USB DAC
再生ソフト
Windows
- foobar2000 (ASIO方式)[無償]
- HQ Player ver.3 (ASIO方式)[18,000円前後、為替相場により変動]
- JRiver Media Center 19 (ASIO方式)[$49.98]
MAC OS
- Audirvana Plus (DoP方式、ver.2.0.1で11.2MHzの再生に対応)[$74]
iOS (iPhone / iPadなど)
- Hibiki (DoP方式)[500円]
- ONKYO HF Player (PCM変換)[DSD再生には1,000円の「HDプレーヤーパック」が必要]
INTERVIEW : 奥田泰次(サウンド・エンジニア)
“コンポーズ”を主眼に、クラシック、ジャズ、ワールド、アンビエントなど多様な音楽のエレメントを、独特の諧謔を含ませたハーモニーと実験性により織りあげられた、ピアニスト・作曲家、林正樹のあらたなフェーズのはじまりを告げるフル・アルバム『Pendulum』。
9月2日にCDでリリースされ、すでに熱心な音楽ファンの間で傑作との呼び声も高い『Pendulum』の完成から程なくした7月初旬、〈Red Bull Studios Tokyo〉にて、構築的に制作された『Pendulum』の楽曲を11.2MHz DSD/1bitでライヴ・レコーディングするという意欲的な試みが敢行された。
このセッションでは、アルバムの大きな特徴のひとつとなっている、“生楽器のアンサンブルとエレクトリック・サウンドの融合”において重要な役割を果たした電子音楽家、Fumitake Tamura(Bun)が、林の代表曲「Teal」(『Pendulum』にも収録)に即興性を多分に含んだ形で参加、その他にアンサンブルで収録された楽曲などがソロでライヴ・レコーディングされている。
以下のインタヴューでは、『Pendulum』の録音を担当し、またリリース元であるレーベル〈SPIRAL RECORDS〉の全作品にエンジニアとして携わり、昨年10月には11.2MHz DSD/1bitで世界に先がけ商用配信された丈青『I See You While Playing The Piano』のレコーディングも手がけた奥田泰次に、今回のセッションとアルバム・レコーディングの両面について、〈Sound & Recording Magazine〉の國崎晋が迫った。
インタヴュー : 國崎晋
「弾き易さ」のようなものを重視したほうが、音楽としてうまく録れるかなと考えているんです
——奥田さんは林さんのアルバムに関わるのは、これが2回目ということでよろしいですか。
奥田泰次(以下、奥田) : そうですね。ソロ名義では2回目ですね。
——エンジニアの奥田さんからして、林さんのピアノの特徴というのはどういうところにありますか。
奥田 : 小さい細かなニュアンスが繊細に出ていて、手の柔らかさとか、フレーズの細やかさが際立った人なんじゃないかなと思います。
——ピアノの小さな音というのは、エンジニア的に録音するのが難しいのではないですか。
奥田 : 小さいから難しいというより、小さいところから大きいところまでのダイナミクスの差があるのが難しいというのはありますよね。
——小さい音は小さく、大きい音は大きく録るというのが難しいと。
奥田 : 「録る」ということよりは、演奏のし易さが一番大事といいますか。林さんの音がなぜ柔らかいかというと、林さん自身がもともと演奏家として持っているものなので、よい環境として作り出せば、自然と演奏もそうなると思います。だから大きいところを叩いて、小さなところを持ち上げる、ということではなくて、「弾き易さ」のようなものを重視したほうが、音楽としてうまく録れるかなと考えているんです。
——世の中のエンジニアさんというと、マイクを選んで立てて、エフェクターなどを使って音量を調整するのが仕事、という風に思ってしまいますけど、今の奥田さんのお話を聞くと、それ以外にも演奏家が演奏し易い環境を作る、これも仕事だと。
奥田 : そうですね。それが一番だと思いますね。今回だと楽器もそうですし、ピアノでいうと調律師さんという最も重要な方がいて、演奏者の方がいて、その場ではよい音が鳴っている、というなかで、自然になれない普段と違う空気感、違和感のようなもので、ストレスを与えたくないなと。
——ピアニストは日々ヘッドフォンをしないで生音を聴いているわけで、それがレコーディングのときにヘッドフォンをしなくてはいけない状況になったときに、そこから聴こえてくる音が演奏家にとって心地よく、弾き易い音にしなければいけないと。
奥田 : そこが演奏家にとって全てですし、自分が弱く弾いたのに弱くヘッドフォンに返ってないと分からないですよね。弱く弾いたのに強く返って、強く弾いたのに強くなかったら演奏し難いと思うんです。もちろん細かなセッティングもこちらではあるんですが、例えばマイクをいろいろ立てますけど、1本だけ強めのコンプをかけたものを置いておくとニュアンスが変わるんですよね。ステレオ、L-Rではすごくダイナミクスが付いているんですが、センター成分だけは、先ほどとは真逆なことをいってしまうんですが、大きいところはぐっと抑えて、小さい音はぐっと持ち上げるのを効果的にできて。センターにそういう音があるのは違和感がないんですよね。どうしてもL-Rに意識がいくので。L-Rをフラットな質感にして、センターでぐっと抑える、というのやっていますね。あまり演奏者にはいっていないですけど(笑)。
——そういうふうにモニターのバランスをきちんと作っていると。よいピアノ、よい調律があって、そこによいモニター環境を作ってあげることで、よい演奏ができると。
奥田 : はい。
2010年代のオリジナルを作りたい
——アルバム本編はDSDで録られているんですか。
奥田 : アルバムはPCMで〈Pro Tools〉で録っています。
——今日のスペシャルなセッションはDSDで録っていると。奥田さんのなかではPCMとDSDとの使い分けというのはあるんですか?
奥田 : アルバムでいうとブラジルのミュージシャンとのデータのやりとりでの利便性というのもあり、音的にはDSDとは真逆なんですが、PCMの32bit float/44.1kHzでレコーディングしています。このフォーマットが個人的に好きだったりもして。CDをメインアウトプットとして考えたときに、リバーブのニュアンスがあまり変わらない状態を録音で作れるというのがあって。
——つまり最終的にリスナーが聴く音にしっかり合わせ込んで作れると。
奥田 : ハイレゾで例えば192kHzとか96kHz、88.2kHzとかで録音すると、少し明るいですよね。ピークも出て。そうするとCDにしたときにどうしても違和感が出てしまうというのがあって。結局スタジオで聴いている音が一番よいかもしれない、という状況がある。特にボーカルがあるJ-POPではよく思っていたことではあって。おもにピークですかね、ハイの。痛いところがわりとハイレゾの場合は目立つので。そこがミックスで云々というよりは録音で、もっと言うとフォーマットで、なんとかできないかなと。
——なるほど。
奥田 : 最近、32bit floatというのが使えるようになって、これはすごくアドバンテージになっていて。サンプリング・レートが高いよりはビットレートが高いほうが、特に低域まわりとか奥行き感とかに有利だなと思っていて。ここ1年ぐらいで使い始めて今回もそれでやってみようかなと。
——そして今日のレッドブルでのスタジオ・セッションはDSDの11.2MHzという現状では最高のフォーマットですが、これのメリットというのは?
奥田 : PCMの44.1kHzのCDというのは箱があってそこに収める、というイメージなんですが、本当に箱もなく、まったく縛られた感じのないピークのない音。人間の可聴範囲のサンプリング・レートをとっくに超えているんですが、聴こえないところも感じるという意味ではすごく天井の上がった、なめらかで瑞々しいというか、もっというと録音っぽくないというか。自分がレコーディングの場で聴いている音がそのまま収められている、そういうイメージがありますね。
——録音というのはある時代までは何かが変わること、その変わり方が面白い、面白く変えよう、ということだったと思うんですけど、11.2MHzのDSDだと、何も変わらない、スタジオで聴いているままに録れていると。
奥田 : そのなかで、違和感を持たせない為にどうするか、というのはあるんですけど、ゴールがそこにあるので、向かっていきやすいというのがあって。例えばマイクの個性、ヘッド・アンプの個性が出やすく、SNも悪いところはすごく悪く聴こえてしまうので、気をつけないといけないことも増えるんですが、その辺りとうまく付き合えば、オーディオとしての聴いたことのない音が作れる。聴いたことのない音を作るというのが自分のなかでずっと思っていることで、2010年代に現役でエンジニアをやらせてもらっている以上は、何かのリバイバルではなくて、新しい技術をうまく取り込んで、もちろん古いものも使うんですが、自分のオリジナルというか、2010年代のオリジナルを作りたい、という意識が高いですね。
すごくスムーズに着地できたかな
——先ほどマイクのお話が少し出ましたが、今日のセッションでは個性的な、普段の奥田さんのセッティングでは見かけないマイクがありましたが、少し解説していただけますか。
奥田 : ステレオでは、隠れているんですがピアノ・マイクと言われる、無指向のコンデンサー・マイクがあって。
——これはいつも使われている〈Earthworks〉の。
奥田 : そうですね。あれはL-R / LOW-HIGHときれいに録れるので「使える音」というか、ベーシックとして押さえておきたい、というところで。それで頭の上に立っていたのが〈ROYER〉のリボン・マイクで、アクティヴなんで少しレベルも出力も高めな、これは空気感というかアンビエンス感を。
——あれはステレオの〈ROYER〉ですね。
奥田 : そうですね。あとはMonoで2本、〈SHURE〉57の古いタイプと〈ALTEC〉のリボン・マイク、あれは1950年代のもので、昔のジャズはあれ1本で録っていたというマイクです。センターで音のトーンが決まっていくと思うんで、そこにキャラが出易いマイクを、L-Rには安定感のある音を置いていく、というのが今日のイメージですね。
——〈ROYER〉は、どちらかというとアンビエンス的な使い方ですか?
奥田 : そうですね。アンビエンスのL-Rで、〈Earthworks〉がL-Rのクローズな音という組み合わせでL-Rが成り立っていて、センターにキャラのあるビンテージ・マイクがある、というセッティングです。
——それらの混ぜ具合、組み合わせでピアノの音色を作ってらっしゃると。そのなかで、今日メインで聴こえているというのはどのマイクということはいえますか?
奥田 : イーブンといえばイーブンなんですが、調律師の狩野真さんとのディスカッションのなかで、もう少しツヤがあったほうがよいということになり、実際にピアノの音を聴きながら調整して、実際は〈ALTEC〉のマイクを3dBくらい上げたら、よいバランスになって、そのセッティングでレコーディングをしました。
——なるほど。普段はピアノをレコーディングする際は、グランド・ピアノが多いかと思いますが、今日は〈Steinway〉のアップライトが使われていました。アップライトというのはどうでしたか?
奥田 : アップライトは身近な音というか、音のリリースが特に濃厚過ぎず、今回の楽曲の雰囲気にも合っているし、はじめてDSDで録ったんですが新鮮でした。
——Bunさんとのセッションでは、お互いの音の交ぜ方はどのようにしましたか?
奥田 : 探りながら徐々に交ぜていく感じでしたね。
——ある種、奥田さんもセッションっぽい感じでと。
奥田 : Bunくんの音はこちらで2ミックスでまとまっているので、音色的に何かをやっているということはないんですが、それこそ環境的に違和感なく演奏してくれれば、というのを考えましたね。
——DSD仕事というのは、構築というよりライヴPAに近い感じですよね。
奥田 : そうですね、あとで何かできない分、インプットで決めないといけないことが多いので。
——今日のセッションを録り終えて、いかがでしたか?
奥田 : アップライトも含めて、とてもよかったですね。このスタジオのアコースティックの雰囲気も素晴らしかったですし、DSDの11.2MHzでの録音が去年の9月くらいにできるようになって、僕も色々と思考錯誤してやってきたのがちょうど落ち着いてきたところだったので、そういった意味ではすごくスムーズに着地できたかなと思っています。
RECOMMEND
林の盟友であるベーシスト西嶋徹とのデュオ・アルバム。様々なジャンルの音楽を経てきたなかで、近年演奏することの多い南米音楽のテイストを意識したそれぞれのオリジナル・ナンバーを中心に収録。熟練したコンビネーションと円熟を迎えつつある二人の演奏、オリジナリティ溢れる美しく繊細な作品となっている。
丈青 / I See You While Playing The Piano (11.2MHz DSD + mp3)
SOIL&"PIMP"SESSIONS、J.A.Mのピアニストとして活動する丈青が、初のソロ作をDSD 11.2MHzでリリース。南青山にあるスパイラル・ホールを舞台に、コンサート・グランドの名品「FAZIOLI」を使って録音された本作は、スタンダード、オリジナル、そして完全即興まで、アーティストのスキルと感性が遺憾なく発揮された音源となった。丈青にとって初のソロ作、初のホール録音ということも含め、きわめてチャレンジングな1作と言える。DSD版はOTOTOY限定、CDに未収録の楽曲を3曲収録。
Goro Ito / POSTLUDIUM (5.6MHz dsd + mp3)
ジャズ〜クラシック〜ブラジル音楽など、ジャンルを越境した傑作として賞賛され、ロング・セラーとなった2ndソロ・アルバム『GLASHAUS』につづき、伊藤ゴローが類い稀なるハーモニーへの犀利な感覚により、その透徹した世界を深化させた3rdソロ・アルバム。本作では丈青、秋田ゴールドマン(SOIL&"PIMP"SESSIONS)などとともに、インプロヴィゼーションの閃光と緻密なコンポジションとを共鳴させ、ジャンルの境を踏み破る、あらたなインストゥルメンタルを展開している。
LIVE INFORMATION
2015年9月18日(金)@渋谷JZBrat
2015年9月20日(日)@代官山山羊に聞く?
Special Showcase Live2015
2015年9月23日(水・祝)@スパイラルホール(青山)
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PROFILE
林正樹
1978年東京生れ。少年期より独学で音楽理論を学び、その後、佐藤允彦、大徳俊幸、国府弘子らに師事。ジャズ・ピアノや作編曲などを習得。大学在学中の1997年12月に、伊藤多喜雄&TakioBandの南米ツアーに参加。音楽家としてのキャリアをスタートさせる。現在は自作曲を中心とするソロでの演奏や、生音でのアンサンブルをコンセプトとした「間を奏でる」、田中信正とのピアノ連弾「のぶまさき」などの自己のプロジェクトの他に、「渡辺貞夫カルテット」、「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール」、「Salle Gaveau」、「Blue Note Tokyo All Star Jazz Orchestra」など多数のユニットに在籍。
演奏家としては、長谷川きよし、小野リサ、椎名林檎、古澤巌、小松亮太、中西俊博、伊藤君子をはじめ、多方面のアーティストと共演。多種多様な音楽的要素を内包した、独自の諧謔を孕んだ静的なソング・ライティングと繊細な演奏が高次で融合するスタイルは、国内外で高い評価を獲得している。
2015年9月〈SPIRAL RECORDS〉より“コンポーズ”を主眼に置いたソロ・アルバム、『Pendulum』をリリース。
奥田泰次
上原キコウに師事した後、prime sound studio formを経て、現在studio MSRを拠点とするエンジニア。クラブ・ミュージックから劇伴まで広い音楽性をカバーし、近年ではDSD録音にも積極的に取り組む。
國崎晋
サウンド・クリエイターのための専門誌『サウンド&レコーディング・マガジン』編集長を20年間務め、現在は同誌編集人。ミュージシャンやプロデューサー、エンジニアへの取材を通じての制作現場レポートや、レコーディング機材使いこなしのノウハウなど、プロ / アマ問わず多くのクリエイターに役立つ記事を多数手掛けている。2010年からはPremium Studio Liveと題したライヴ・レコーディング・イベントを開始。収録した音源を最高音質のハイレゾ・フォーマットとして知られるDSDで配信するレーベル活動も展開している。