2015/09/04 19:10

オリジナル曲を凌駕するほどのオリジナリティーー結成30年! ヨ・ラ・テンゴ、カヴァー曲を軸としたニュー・アルバムをリリース

1984年の結成から、数多くの作品とポップス、オルタナ、フォークなどのあらゆる音楽性で聴くものを魅了してきた3人組、ヨ・ラ・テンゴ。今年で結成30周年を迎えた彼らが、初期メンバーであるデイビット・シュラム(Gt)を迎えての新作『Stuff Like That There』をリリースした。本作にはザ・キュアーやパーラメントなどのカヴァー曲を軸とし、2つの新曲が収録。彼らにしか出来ない温かみに帯びたサウンド、そしてオリジナル曲のイメージを一新してしまうぐらいのオリジナリティーをぜひお楽しみいただきたい。

Yo La Tengo / Stuff Like That There
【配信形態】
ALAC / FLAC / WAV / AAC / mp3
ファイル形式について

【価格】
単曲 257円(税込) まとめ購入 1,543円(税込)

【Track List】
01. My Heart's Not In It / 02. Rickety / 03. I'm So Lonesome I Could Cry / 04. All Your Secrets / 05. The Ballad of Red Buckets / 06. Friday I'm In Love / 07. Before We Stopped To Think / 08. Butchie's Tune / 09. Automatic Doom / 10. Awhileaway / 11. I Can Feel The Ice Melting / 12. Naples / 13. Deeper Into Movies / 14. Somebody's In Love

↓まずはザ・キュアーのカヴァー曲「Friday I'm In Love」をお聴きください。↓

Yo La Tengo - Friday I'm In Love
Yo La Tengo - Friday I'm In Love

きっとたくさんの人の心を木漏れ日のようにキラキラと照らす

ざわめく木々の隙間を通り抜ける風を感じ、重なり合う葉の間からこぼれる太陽の光は、閉じている瞼を透かして赤く流れる血液を感じる。ヨ・ラ・テンゴの新作『Stuff Like That There』は、そんな木漏れ日のような音楽だ。

長い音楽人生の中で、彼らはドリーミーなポップ・ソングからシューゲイズやプログレッシヴ・ロックを感じる曲まで、様々な音楽を生み出してきた。今回収録されているセルフ・カヴァー曲「The Ballad of Red Buckets」や「Deeper Into Movies」は、発表された当時は、エフェクティヴなギターの歪みやノイズを含んだシンセの音色が胸をざわつかせる、サイケデリックなものだったが、今作ではアコースティックの音色が際立っていて、自然に囲まれて寝転んでいるような、心が落ち着く温かな音色に生まれ変わっている。また、ザ・キュアーやハンク・ウィリアムスから、あまり名前も知られていないようなインディーズ・バンドまで幅広いアーティストのカヴァーをしている。例えば「Somebody's in Love」、原曲は1955年に発表されたコズミック・レイズとサン・ラの共作で、厚みのある歌声に圧倒されるドゥ・ワップ。ヨ・ラ・テンゴの手にかかると、スキップするように軽やかなカントリー調のギター、柔らかく包み込まれるベースの低音、リラックスしたドラム、溶け合うように重なる歌声。どの音も主張しすぎることがなく互いに混ざり合い、ナチュラルな質感が耳に体に心地よく馴染んでいき、ヨ・ラ・テンゴ自身の音楽になる。みんなが知っていようがいまいが、年代だって関係ない、心地の良い音楽は分け隔てなく好きなんだという、音楽への温かく深い愛情を感じる。

そして、今作を聴いていると彼らの初期の楽曲の質感を思い出すのだ。結成30周年という大きな節目を迎え、当初のメンバーであるデイビット・シュラム(Gt)が再びレコーディングに迎えられたことからも、このアルバムは原点回帰の一枚なのだろう。始まりを見つめ直すことによって、これまでの音楽の歩みを振り返る。新曲として収録された2曲「Rickety」「Awhileaway」も『Stuff Like That There』を通して憶える、アコースティックで懐かしいぬくもりをまとっていて、結成30年というヨ・ラ・テンゴの懐の深さ、豊かな人間味を感じることができた。音楽への愛が溢れるこの作品は、きっとたくさんの人の心を木漏れ日のようにキラキラと照らす。(Text by 及川 季節)

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PROFILE

ヨ・ラ・テンゴ

ニュージャージー州ホーボーケンにて1984年に結成。当時音楽ライターをしていたアイラ・カプラン(Vo,G)とジョージア・ハブレー(Vo, D)を中心に結成される。91年にジェームズ・マクニュー(Vo, B)が加入し、現在のスリー・ピースの形となる。ライヴやアルバムのリリースを着々と重ね、ついにオリジナル8枚目である97年発表の『I Can Hear the Heart Beating as One』で世界中で大ブレイクし、CMJチャート1位を獲得し日本でもその名前を知らしめ、高い評価をうける。13年、前作『ポピュラー・ソングス』以来 約3年半ぶり、通算13作目となるスタジオ・アルバム『フェイド』をリリースし、夏にはフジロック・フェスティバルにも出演した。14年5月、約5年振りとなるジャパン・ツアーを行った。

ヨ・ラ・テンゴ Official HP

[レヴュー] Yo La Tengo

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