2015/05/12 14:57

of Montrealも出演を決めた、金沢の雄"noid"主催〈Magical Colors Night〉成功の鍵とは?ーー鼎談 : エイジ(noid)×ゆーきゃん×岡村詩野

noid

ケヴィン・バーンズ率いるof Montrealの来日ツアー。2015年6月3日の静岡・浜松公演を皮切りにした全8公演のなかで、ひときわ豪華なメンツがずらりと揃った公演がある。メジャー進出したばかりで勢いのつくザ・なつやすみバンドをはじめ、noidLLama王舟ROTH BART BARON、cassette tape echo、ゆーきゃん。DJにはclub snoozerを主催する田中宗一郎(the sign magazine)と、ラジオ・パーソナリティもつとめる音楽評論家、岡村詩野。それが6月7日、石川県の金沢AFTER HOURS公演〈Magical Colors Night〉である。

今回はof Montreal北陸記念として、本公演をブッキングした〈Magical Colors Night〉主催者であるnoidのエイジ、そして出演者のなかからゆーきゃん、岡村詩野と、3人の鼎談をお届けする。いちバンドの自主企画という枠を超え、金沢を代表するイベントへと成長した〈Magical Colors Night〉成功の鍵とは?

〈Magical Colors Night -Day1-〉
日時 : 2015年6月6日(土) 開場/開演15:30
会場 : 富山フォルツァ総曲輪

出演 : noid / ザ・なつやすみバンド / LLama / 王舟 / ROTH BART BARON / cassette tape echo / ゆーきゃん
DJ : 田中宗一郎(snoozer/the sign magazine) / Kawai(DIFFERENT DRUM)

予約2,500円 / 当日3,000円
学生1,500円(当日会場受付にて学生証等のご提示願います) ※要1ドリンク・オーダー

〈Magical Colors Night -Day2- of Montreal JAPAN TOUR -KANAZAWA-〉
日時 : 2015年6月7日(日) 開場13:30 開演14:00
会場 : 金沢AFTER HOURS

出演 : of Montreal (U.S.A) / ザ・なつやすみバンド / noid / LLama / 王舟 / ROTH BART BARON / ゆーきゃん
DJ : 田中宗一郎(snoozer/the sign magazine) / 岡村詩野

予約3,800円 / 当日4,300円
学生2,800円(当日会場受付にて学生証等のご提示願います) ※要1ドリンク・オーダー
6月6日、6月7日の2日通し券(予約のみ、枚数限定) 5,500円 ※2日通し券の方は、初日のみドリンク代をいただきます

予約/問い合わせ : magicalcolorsnight@gmail.com
※ご予約送信の際【1. お名前 2. 連絡先 3. 公演日 4. 枚数】を明記お願いします。

特集記念! 期間限定フリー・ダウンロード

noid / STARS
【配信形態 / 価格】
WAV / ALAC / FLAC / AAC / mp3 : 無料

【期間】
2015年5月10日〜2015年5月31日まで

〈Magical Colors Night〉主催のnoidより「STARS」を期間限定フリー・ダウンロード! ジャケットを手がけたのはジャケット・デザインはSOHHEI NUMATA (OLDE WORLDE)。

鼎談 : エイジ(noid)×ゆーきゃん×岡村詩野

きみはnoidを知っているだろうか。北陸新幹線の開通で沸く古都・金沢を拠点に活動する5人組だ。活動歴は11年、東京での知名度は正直まだまだながら、昨年リリースのセカンドアルバムはレコードショップ大賞・北陸ブロック賞を獲得し、地元では大きな支持を得ている実力派、月並みな表現が許されるとすれば、まさに「北陸の雄」と呼ぶにふさわしいバンド。しかし、noidを語るときにそれだけでは足りないーー彼らの主催するイベント〈Magical Colors Night〉を抜きにしては。メロメロポッチ、アートグミといった市内のライヴ・スペースを会場にしたこのイベントにはこれまで、U.S.A.のPainted Palms、カナダのTOPSといった海外アーティストや、ROTH BART BARON、OLDE WORLDESOURといった国内インディー・シーンの実力派が多数出演してきている。来たる6月6日、7日、この〈Magical Colors Night〉が金沢AFTERHOURS、富山フォルツァ総曲輪という2都市2会場にわたって開催されることとなった。ザ・なつやすみバンドや王舟といった豪華ラインナップもさることながら、驚くべきは7日の金沢編がU.S.インディの巨星of Montrealの来日公演ということだ。of Montrealクラスの「外タレ」が金沢のような1地方都市を訪れる、しかも地元アーティストの自主企画にブックされることは非常に稀なケースであろう。全国的にも注目を集めるイベントの開催を前に、noidのプライベート・スタジオにて、頭脳であり顏であるギター・ヴォーカル、エイジと、盟友ゆーきゃん、さらには金沢編にDJで出演が決定している音楽評論家、岡村詩野による鼎談(岡村はSkypeでの参加)が行われた。

地方ごとにきちんと盛り上がりがあるってことは知識としてわかってたけど、ふたりの話を聞いてると、日本にもあるんだ! って思えてきた

岡村詩野(以下、岡村) : ふたりはいまどこにいるの? 金沢?

エイジ(noid) : 金沢のさらに奥? の、川北町というところです。noidのメンバーがスタジオをもっていて。

岡村 : すごい、れっきとしたとしたスタジオなの?

ゆーきゃん : アメリカっぽいですよ、車庫がスタジオになってるんです。

岡村 : ガレージ・スタジオってやつね。自分たちで機材も準備したのかあ。もう何年もやってるの?

エイジ : 2年くらいになりますね。

岡村 : そういう話、東京じゃ考えられないね。東京だとよっぽどのお金持ちか、音楽家として成功してないと難しいもんね。

エイジ : ドラムのさんちゃんの持ち物なんです。

岡村 : さすが! 医者はやっぱり羽振りがちがう。

一同 : (笑)。

ゆーきゃん : 時間の制約なしに、思いついたアイディアを全部試せるってすばらしいことですよね。

岡村 : そうだね。アメリカっぽいって、そういうところにも言えるよね。そういえば、こないだ富山でゆーきゃん主催のイベントに呼ばれたとき、車で迎えに来てもらったじゃない? そのとき運転していたスタッフさんに「こっちじゃ一人一台なの?」ってきいたら、そうだって。家族4人だったら4台あるってことだよねってきいたら、またそうだって(笑)。停めておく場所はあるの?

エイジ : そうです。ほぼ無限にありますよ(笑)。

岡村 : 無限かあ! あの日も、イベントが終わってお店を出るころには23時過ぎてたじゃない。「終電は?」って聞いたら、みんな「終電なんてとっくにないです。車で来てますし」って、けろっと(笑)。「遅くなって、飲みたくなったらどうするの?」って聞くと今度は「代行ってものがありますから」って。その感覚も東京じゃ考えにくい。土地の広さもそうだし、決められた時間通りにきちっきちっとやっていかなくちゃいけない、っていうのが東京とは違うよね。スケールの大きさっていうか。京都は自転車もしくは徒歩っていう手もあるけど、コンパクトだからね。だいたい代行なんてないし。

ゆーきゃん : 富山はタクシーより代行のほうが多いですよ。

岡村 : そうなんだ、やっぱり行ってみないと、その町の感覚ってわかんないもんだよね。ところで、いまふたりがいるスタジオは何市? 金沢市になるの?

エイジ : ここは、能美郡です。能美郡の中の河北、っていうところになります。

岡村 : へえ。スタジオから電話くれてるんだ。週末の夜、ガレージ・スタジオに車で集まって練習して… そういうのもアメリカっぽいよね。

エイジ : ぼくら、普通ですけどね(笑)。

岡村 : 地方のアーティストでいうと、アメリカにはたとえばポートランドにエリオット・スミスが、シアトルにニルヴァーナがいて、なんて話があるでしょ。みんな地元でレーベルを持ってて、ほらワシントンにキル・ロック・スターズが、アセンズにエレファント6とかさ。そして地元密着のメディアがそれぞれの町にあって、サブポップがあるシアトルでは〈Yo Yo A Go Go〉っていうイベントが始まって、全国のみならず日本からblood thirsty butchersがやって来る。そういう話も、アメリカの場合「そうだよね、広いし、アメリカだし、そんなことあるよね」ってすんなり受け入れられるし、地方ごとにきちんと盛り上がりがあるってことは知識としてわかってたけど、ふたりの話を聞いてると、日本にもあるんだ! って思えてきた。東京とか京都とか、都市に住んでいると、ほかの地方にはなかなか目が行かないでしょ。〈Magical Colors Night〉にあんなに人が集まって、noidのライヴがあんなに盛り上がるっていうのも、しっかり活動して、スタジオまで持ってて、地盤を築いてるのを、実際に行ってみたり、話を聞いてみたりしたら、そりゃそうだよな。って。

〈Magical Colors Night〉
金沢を中心に活動するnoidが、2005.3月から不定期に開催しているイベント。2013年12月のnoidレコ発からは、年に2〜3回の開催となり、国外のアーティスト(Garda、Painted Palms、TOPSなど)をヘッドライナーに迎え、東京始め、県外のアーティストも定期的に参加するようになる(OLDE WORLDE、Turntable Films、SOUR、ROTH BART BARON、王舟、LLama、セカイイチ、ゆーきゃん、岡村詩野… 他多数)。2015年6月より金沢だけでなく、富山県でも開催される。今後定期的に開催予定。

〈Magical Colors Night〉の情報はnoidのTumblurへ

ゆーきゃん : エイジくんに訊きたかったことがあるんです。〈Magical Colors Night〉がいま盛り上がっていて、noidが地元の音楽ファンに支持されていること、それは確実わかるんですけど、それ以外の現場は、金沢の町自体はどのくらい盛り上がっているんですか。バンドの数とか、お客さんの規模とか、どんなもんなんでしょう。

エイジ : ぼくもそんなに多くのバンドを知っているわけじゃないんですけど、各ジャンルごとに、ぼくらと同じような動きをしているいいアーティストはいます。県外に出てライヴもするし、県外からアーティストを呼ぶようなイベントをやっているし、きちんと流通音源もリリースしている。ぼくらはそういうバンドと仲良く… というか、つかず離れずの距離で、お互いがんばっていると思っています。そういうアーティストたちを中心とした動きの中で、町としての盛り上がりはちょっとずつ出てきていますし、そこがつながってもうひとつ大きなことをやろうっていう流れもできてきているような気がしますね。

ゆーきゃん : お客さんの数や層は? ライヴハウスやクラブに出入りするひとは、どんな人たちなんですか。

エイジ : 分母でいうと、まあ間違いなく東京や京都にはかなわないですよね。お客さんも、20代30代の社会人がメインだと思います。学割チケットを作って統計を取ってみたんですが、学生さんがそんなに多いわけではないです。

岡村 : そんな小さな町の中で、こつこつやっているひとたちが繋がっていくっていうのが、地方のいいところなのかもね。ASUNAくんも、加藤りまちゃんも、数年前まで東京にいたでしょ。彼らがいま金沢に戻ってきて、幅を広げようとしていることもおもしろいなあって思う。金沢感はまだ薄いから、noidの大事にしているローカリズムと結びついて、交流し合ったら、また伝わり方も広がっていって面白いんじゃないかな。

エイジ : ASUNAくんはイベントに出てもらったこともあります。ぼくらにはできない切り口の企画をしていて、いつもすごいなあって思っています。加藤りまさんは今度共演なんですよ。楽しみです。

自分たちのバンド、音楽をプロモートするだけじゃなくって、自分たちのやっている「こと」を伝えたいっていう姿勢がすばらしいって思う

ゆーきゃん : 〈Magical Colors Night〉っていうイベントはいつからやっているんですか。

エイジ : 2005年の3月からですね。

岡村 : バンドが去年10周年でしょ。バンドをはじめて、すぐに企画もスタートしたの?

エイジ : そうなんですよ。最初は、自主音源を作ったので、そのレコ発をやろうって話だったんです。

ゆーきゃん : スタート当初から、こんなふうにゲスト、というか、県外のバンドをたくさん呼んでたんですか。

エイジ : いや、はじめは地元の仲間のバンドばっかりを集めた企画でした。それからも年に1~ 2回のペースで開催しながら、でも、東京にも全国にも好きなバンドがいっぱいいたので、いつか呼びたいって思ってたんです。

岡村 : 県外勢がたくさん出てくれるようになったのは、いつごろから?

エイジ : ごく最近で、セカンド・アルバムをリリースしてから、ですかね。ぼくらの所属しているレーベルMOOR WORKSは、海外のバンドもいっぱい呼んでいるんですが、そのつながりで、ドイツのGardaってバンドが金沢にやってきて、その時に京都からLLamaを呼んだんです。その次はU.S.A.のPainted Palms、ほら岡村さんにもゆーきゃんにも出ていただいたアートグミのイベントです。そのときにROTH BART BARONが来てくれて…。

岡村 : じゃあ、ちょうど今、浸透してきたって、感じなんだね。

エイジ : そうなんです。やっとどんなライヴオファーのメールも帰ってくるようになりました(笑)。実はROTH BART BARONもホームページから直接連絡したんですよね。でも、快く受けてくれて、共演したら意気投合して…。 お客さんも、ローカルだけでやるイベントって、友達のバンドばかり出演して、結局は内輪だけでやっている感じになってしまいますよね。でも今は、ぼく、お客さんとほとんど面識ないんです。そういうところにも広がってきたっていう実感はあります。

岡村 : 身内のパーティからスタートしたものが、石川じゅうの音楽を共有できる人たちを少しづつ集めていって、そこでまた新しいつながりができていくっていうことだよね。手作りでそんなふうにネットワークを築いてきたのはすごいことだと思う。ほら、〈Magical Colors Night〉って、ホームページもないでしょ(笑)。

エイジ : そうなんです(笑)。

岡村 : そういうところにも表れてるなあった思うんだけど、東京のバンドって、戦略をすごく大事にするじゃない。売れるためにどうするか、どう見せていくかってことをすごく考える。でも、noidにはそれがないよね。欲がないっていうか。

ゆーきゃん : ホームページもない、自分のバンドのタンブラーの更新も遅れたりするのに、イベントはサンプラーCD-Rつきのフライヤーを作って、街中に配って、全出演者の音源を聴けるようにするっていう。無謀といえば無謀ですよね。

岡村 : あれはうれしいよね。持っていく人多いでしょう?

エイジ : はい。すぐにハケます。

ゆーきゃん : 自分たちのバンド、自分たちの音楽をプロモートするだけじゃなくって、自分たちのやっている「こと」を伝えたいっていう姿勢がすばらしいって思うんです。

岡村 : そういうふうに、誰それを呼んだから、みたいなカタチから入らないで、内容をしっかり伝えようとするところに、ゆーきゃんも、私も、それから今だったらタナソー(田中宗一郎)なんかも共感して、だんだん輪が広がってきたんじゃないかな。今回は特にオブモン(of Montreal)でしょ。金沢にオブモンが来る、しかもメンツがすごくいい、そしてプロの手を借りずにとことん自力でやっている、そういうことって、地方の1アーティストにそうそうできることじゃないと思う。だからこそ、記録に残しておく必要があるというか、イベントのホームページを立ち上げて、フライヤーデータや、出演者、写真なんかのアーカイブもアップして、noidやMagical Colors Nithtがどんな姿をしているのかわかるようにしてゆく必要があるんじゃないかな。海外のオブモンのファンがサイトを見に来たりもする可能性もあるわけじゃない。

of Montreal
ケヴィン・バーンズを中心に、1996年アメリカはアセンズで結成。元々エレファント6の一員であった彼は、当時からインディー界で異彩を放つ。

1997年『Cherry Peel』でデビューを飾ると、その後コンスタントにアルバムを量産。作品がヒットを続け、ついに2007年『Hissing Fauna, Are You the Destroyer?』で爆発する。

このアルバムにより不動の地位を獲得した彼らは、日本を含め世界的人気ポップ・バンドへと成長。過激な化粧を纏い、劇のようなパフォーマンスは名物となる。その後もコンスタントにアルバムをリリース、ライヴも精力的に続け、現在はよりバンド・サウンドに拘った編成へと落ち着く。

>>of Montreal HP

ゆーきゃん : 地方のイベント、地方のカルチャーって、じつは歴史も物語もすごく充実しているのに、語る人が少なくて音楽史の表には出てこない、記録も残ってない、ということが多いような気がします。文字以前の文明みたいだなあって。

エイジ : (笑)。

刺激的なカルチャーに飢えた北陸のリスナーが渋谷WWWに行かなくても、俺たちにはアートグミがあるっていうことに気づく、みたいな

ゆーきゃん : それにしても、金沢のような1地方都市にTOPSが来てof Montrealが来て… よく呼べましたよね?

エイジ : それはもうMOOR WORKSとぼくらの関係のおかげです。MOOR WORKSが来日をやるとき、ありがたいことに、彼らはいつも「金沢がハイライトだ」って言ってくれるし、日程も、社会人バンドがちゃんと企画できるように土日に設定してくれるし。レーベルとして、招聘元として採算が取れてるのかはわかんないんですけど。

ゆーきゃん : イベントとしては?

エイジ : ギリギリです。いつも数千円の黒字、赤字って感じで。

岡村 : 予算はかつかつでも、続けてきたっていうことが大きいと思うのよ。noid自身がオーガナイズ力をつけていって、内容も少しづつ充実させて、結果も残しているっていうこと。会場のキャパシティも、呼ぶアーティストの半径も広がっているわけでしょ。音楽以外にもフードを出したり、進行や構成にも回を重ねるごとに工夫がある。

ゆーきゃん : 〈Magical Colors Night〉、どんなに大きなゲストが来ても、必ず地元アクトが入ってますよね。これだけ豪華なラインナップでも、ehonを出して、cassette tape echo を出して、隣の県だけど、ゆーきゃんを出す。自分たちだけじゃなくて、地元の仲間や後輩をプッシュしたいという思いが入っている。それが大事なことだと思うんです。バンドマンはnoidのそういう姿勢に信頼を置いて、そして俺らもいつか出たい! って思いを抱きながら、遊びに来てるんじゃないでしょうか。で、みんなCD-Rとかカセットテープとかをかばんに詰めてきて、関係者に配る。

エイジ : (笑)。そうだったんですか。知らなかったです。

ゆーきゃん : だって、前回も前々回もいっぱいもらいましたよ。バンド名覚えきれないくらい(笑)。それからもうひとつ、前々回の〈Magical Colors Night〉には、Hearsaysが福岡から来てたでしょ。福岡から金沢って、さらっと受け止めてしまいそうになりますが、全然あたりまえじゃない。東京から有名なバンド、というのはあるけれど、福岡からバンドを呼ぶのも、福岡のバンドにとっては金沢に呼ばれるのも、メリットデメリットを越えた意味があると思います。京都のLLamaはGardaの来日に引き続いて今回も来る。全国的な話題性だけで判断するんじゃなくて、他のローカル・シーンから良質な音楽を引っ張って来る、という意識にすごく共感します。

エイジ : 金沢にもプロのイベンターがたくさんありますけど、そこが決して呼んでこない、採算的にも呼べない、でもいいバンドって、全国にいっぱいいるじゃないですか。どの町にも、それを見たいっていうひとは結構いると思うんですよね。僕自身が見たいですし。たとえ知らなかったとしても、音を聴いたら反応してくれる、潜在的なお客さんというか、そういう自信はあります。ただ、Hearsaysはレーベルのコネクションがあったのもあって、ギャラも度外視で来てくれたんですが、県外からゲストを呼ぶときにリスクもありますし、せっかく来てもらったからには一人でも多くの潜在的なお客さんに足を運んでほしい。だからサンプラーCDを作って配っていて。

ゆーきゃん : あれを聴いて、来たっていうお客さんは多いんですか?

エイジ : 直接は知らないんですけど、とにかくハケるんですよね。1か月で1000枚、ライヴハウスの折込とかは無しで、ただお店に置くだけなんですが、なくなります。手間もお金もかかるんでいっそダウンロードにしたらっていう声もあるんですけど、ぼくはやっぱりレコ屋とか、音楽好きが集まるお店にあるのがいいと思っているんです。地酒みたいに、そこに行かないと手に入らないっていうところが大事だと思っています。

岡村 : 〈Magical Colors Night〉のフライヤーのアートワークって、イラストレーターも、サイズも、毎回統一されてるよね。

エイジ : フライヤーにはこだわりを持ってるんです。信頼できるイラストレーターに描いてもらってるんですが、紙の選び方とか、カドを丸くすることとか、そういうところも、デザインするメンバーにブーイングされながら、どうしてもこれでいきたい! って(笑)。でも、そういう細かなこだわりが、大事に持っておきたいと思わせるんだと。

ゆーきゃん : フライヤー、富山のお店でも見かけます。実際、県外からのお客さんってどのくらいいてはるんでしょう。

エイジ : 予約メールで知るくらいしか方法はないんですが、TOPSが来日したときは、東京とか京都とかから結構来てくれた実感があります。

ゆーきゃん : 大都市からの集客っていうことも素晴らしいですが、それだけではなくて、近隣県からもお客さんが来て、ネットワークが広がっていったらいいですよね。たとえば福井のバンドマンが〈Magical Colors Night〉の噂を聞きつけて遊びに来て、インスパイアされたり、このイベントに出たいと言ってくれたり、逆にnoidを福井に呼びたいって思ってくれたらいいなあって思うんです。そういう点でも、あのフライヤーが、あのサンプラーCD-Rが隣の県に配られるってすごく大事だって。刺激的なカルチャーに飢えた北陸のリスナーが、もうわざわざ渋谷WWWに行かなくても、俺たちにはアートグミがあるっていうことに気づく、みたいな。

エイジ : (笑)。アートグミがWWWになったらすごいですよね。

岡村 : こないだ、私が、富山のイベント後で、こういうイベントが福井や長野とも結びついてできたらいいなあってツイートしたら、タナソーがRTしてくれて、それを見た福井のバンドマンが連絡くれたの。わたしは直接面識があるわけじゃなくて、どうやら彼はnoidともゆーきゃんとも違う、ハードコア色の強いバンドをやっているみたいんだけど、北陸というエリアがジャンルを超えて結びついていくチャンスなんじゃないかって思った。福井がどんなところなのか、どんなハコがあって、どんなレコード屋があって、どんなバンドがいるのか、まだ私には未知数なんだけど…。

エイジ : こないだHomicomingsが福井行ってましたよね。こんどは金沢に来ますし、同じ好みをもった人はいるはずです。繋がっていくところはあると思います。

岡村 : エイジくんは社交的だから(笑)、すぐに繋がれると思うよ。北陸がひとつになって、そのうえで、金沢にnoidが、〈Magical Colors Night〉があるっていう旗をきちんと立てること。それが金沢シーンにとっても大きな力になるんじゃないかな。…ところで、これ、どこに載るんだっけ?

ゆーきゃん : 言ってませんでしたっけ! OTOTOYですよ(笑)。

岡村 : そうか、OTOTOYね、OTOTOY拡散力があるから、もっといっぱい頼ったらいいと思うよ(笑)。こういう鼎談やインタビューを取っ掛かりにしながら、〈Magical Colors Night〉のウェブ・コンテンツもアーカイブも充実させていって、日本全国の音楽ファンに、こういうイベントなんだってわかるように、興味をもってもらえるようにしていくこと。さらに、ネットに頼らず、いままでどおり地域密着型のフライヤー作戦も頑張っていくこと。それを続けていけば、金沢にちゃんとオーガナイズしている人が、地元のシーンを支えているバンドがいるんだって、日本中の音楽好きの認知がしっかりしたものになると思う。

エイジ : なにはともあれホームページですね…(笑)。がんばって作ります!

〈Magical Colors Night〉 Day1&Day2 出演者の配信中音源

PROFILE

noid

2004年石川県金沢で結成。2008年にイギリスのレーベルbabyboomと契約。2枚のコンピCDを発売、2009年にファースト・アルバム『the space-elephant arrives at the moon』をリリース。2013年12月に5年ぶりとなるセカンド・アルバム『so are millions of us』をリリースし、第6回CDショップ大賞地方賞 甲信越北陸ブロック賞を受賞した。

US/UKインディーを好み、実験音楽の先鋭性と普遍的音楽の牧歌性が混在したメロディー。衝動、時に幽玄さを孕みがらも、mysterious なのにpop に展開していく楽曲群。ポストロック、エモ、US インディーへの深い敬愛を感じさせるサウンドは、日本語ロックとしての新しい可能性を打ち出している。

>>noid Tumblur


ゆーきゃん

シンガー・ソングライター。

いつだってよい音楽を創りたいと思っているけれど、ときどきはひどいライヴもする。 駄作も書いた。浮いたり沈んだり、妬んだり焦ったり、人前に立つのも嫌な日さえ、ときどきある。

それでも、聞くこと、聴くこと、書くこと、読むこと、見ること、見えること、忘れては思い出して、 眠っては目覚め、歩いては立ち止まり、流れては澱み、生きること、言い切ること、そういうこと、こういうこと、すべてを指してゆーきゃんと言うのだと思う。

>>ゆーきゃん Officail HP


岡村詩野

東京生まれ京都育ちの音楽評論家。『ミュージック・マガジン』『CDジャーナル』『朝日新聞』『VOGUE NIPPON』『FUDGE』などで執筆中。現在「岡村詩野音楽ライター講座」を東京・京都で開講するほか、京都精華大学で非常勤講師を務めている。

>>岡村詩野 Twitter

[インタヴュー] Of Montreal, noid, ゆーきゃん

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