2014/04/25 18:01

あの東京の異端児、トリプルファイヤーがH MOUNTAINSの1stフル・アルバム『GOLD MEDAL PARTY』を大解剖

ニューウェイヴ、サイケ、プログレ、ポップス、あらゆるジャンルを呑み込んだオルタナティヴ・ロック・バンド、H MOUNTAINSの1stフル・アルバムがついにリリース!! リード曲「なんか落ちていないか」の超先行配信とともに行った大森靖子との対談はもうご覧いただけたでしょうか? そこで大森に「ヴォーカルをのぞけばいい音源ですからね(笑)。ほかは本当に完璧だと思います」と言われたことから、今回、OTOTOYではあえてインスト音源をまとめ購入特典に。CDを買ってしまった人には、インスト ver.のみをまとめたアルバム(カラオケ版!)も販売!

さて前回は大森靖子による愛のこもったダメ出しと鋭い視点でH MOUNTAINSを紐解きましたが、今回はあの、東京に現れた異端児トリプルファイヤーによる全曲解説で『GOLD MEDAL PARTY』を大解剖!! トリプルファイヤーの冴えた言葉とともに、記念すべき1stフル・アルバムをお楽しみください。

>>畠山健嗣(H MOUNTAINS)×大森靖子の対談はこちら<<

H MOUNTAINS / GOLD MEDAL PARTY
【配信価格】
wav / alac / flac / mp3 : 単曲 200円 まとめ購入 : 2,000円

【Track List】
01. お魚天国 / 02. ハッピーファットサンシャイン / 03. 天国 / 04. ききたい / 05. でっかいオブジェ / 06. ウエスタンラリアット / 07. なんか落ちていないか / 08. (whrere is) bad boy / 09. パキパキマン / 10. 近視眼くん / 11. 草 / 12. 江の島 / 13. U2
☆まとめ購入者特典
アルバムを購入されるお客様には、M14~23に全曲のインスト ver.と、CDと同様の歌詞ブックレットがPDFでついてきます。

COMMENTED BY ジョニー大蔵大臣(水中、それは苦しい)
謎が謎を呼ぶ謎のギタリスト畠山くんは、いつ見てもいつ聴いても、まずほとんどコードを弾かない。全てのフレーズが意味深でトリッキーで、でも全く泣けなくてそこがとてもいとおしい。
僕はギターのコードしか弾けないタイプで、コード中心にできた曲をコードを頼りに歌うタイプなので、一緒にプレイしても全くぶつかることない畠山くんとは、いつか一緒にプレイしたいと思っていたら、こんなすごいバンドをやっていたなんて!
当分ちょっかいは出せないと思った。
けれどやっぱりいつか絶対セッションしたいです。一緒にバンドやりたいです。

唯一無二の変態オルタナポップH MOUNTAINSを聴いて、はてなマークをたくさんつけたまま、世界のH MOUNTAINSをみんなで登り降りして遊んでいたいと思った。
CDを買ってしまった人には、インスト ver.のみをまとめたアルバム(カラオケ版!)の購入をおすすめします(ワンコイン!)。
H MOUNTAINS / GOLD MEDAL PARTY instrumental

【配信価格】
まとめ購入のみ 500円

異端のロック・バンド、トリプルファイヤーによる全曲解説!!

トリプルファイヤー

左から、吉田(Vo)、鳥居(Gt)、大垣(Dr)、山本(Ba)

2006年結成、2010年に現在の編成となる。「高田馬場のJOY DIVISION」「だらしない54-71」などと呼ぶ人もいる。ソリッドなビートに等身大の歌詞をのせていてかっこいい。人気がある。メンバーはみな性格が良く、友達が多い。

>>2014年初のアルバム『スキルアップ』特集
>>トリプルファイヤーOfficial HP

1. お魚天国――なるほど、金メダルと金目鯛がかかっているのか

『GOLD MEDAL PARTY』のオープニングを飾るのは「お魚天国」です。「お魚天国」とは一体何事でしょう。お魚といえばやはり金目鯛。なるほど、金メダルと金目鯛がかかっているのか。

「わーん、とぅー、わーん、とぅー、すりー、ふぉー」という合図によって歌と演奏が始まるわけですが、曲が進むにつれて段々とテンポが速くなり、音の数も増えていきます。後半などは演奏も目まぐるしく、マグロ並の速さで海の底を突き進んでいるかのようです。色とりどりのお魚ももはや極彩色の残像となってしまいました。(鳥居)

2. ハッピーファットサンシャイン――スピッツでも恥ずかしくなりそうな歌詞をさらっと歌っちゃう

この曲は、H MOUNTAINSの青春ソングだと思っている。

変わろうなんて思わなくても勝手に自分も身の回りも変わっていくこと、ふと気付いたら「大人」と呼ばれる年齢になっていたこと、青春と呼ばれる時期はいつの間にか終わっていたのかもしれないこと、すべて気付いてしまっても起きて眠って起きて太っての繰り返しの人生はまだまだ続く。

そんな生活の中で「声を出して少しだけでも 素直になれるなら 巡り巡ってこんな俺でも良いって気がしたよ」なんて、若いころのスピッツでも恥ずかしくなりそうな歌詞をさらっと歌っちゃうKJは素敵だ。(山本)

3. 天国――やはりカヴァーというのは原曲からの飛距離を感じてこそ

来来来チーム「天国」のカヴァー。

カヴァーが3曲目というのも冒険的だと思うが、この曲の場合は「あえてそうした」という力みは感じられない。

そう言えばDevoのストーンズ「satisfaction」カバーもアルバム2曲目だった。確かに、それに匹敵するレベルでこの「天国」はH MOUNTAINSの曲になっている。

でもやはりカヴァーというのは原曲からの飛距離を感じてこそのもの。原曲を聴いたことのない人はそちらも聴いてみることをお勧めしたい。(吉田)

4. ききたい――海の曲が大得意といった世にも稀なMOUNTAINS

もうなんでもいいからとりあえず海に連れて行ってほしいという気持ちになることがたまにあります。海に行ったら絶対に楽しいはずだという期待があるからです。そんな期待感だけを濃縮して5分20秒間に定着させた曲として勝手に聴いています。

イントロからしてもう”Breezeが心の中を通り抜ける”といった感じで堪りません。後半部のスキャット部分なんかは水平線が眼前に広がったときの高揚と同等のものが得られます。海の曲が大得意といった世にも稀なMOUNTAINSなのであります。(鳥居)

5. でっかいオブジェ――歌詞は不条理、楽器は条理

印象に残る歌詞といっても色々あるが、H MOUNTAINSの歌詞の特徴は一聴しても意味がわからない点にある。この曲は、その不条理な言葉のパワーで印象に残る曲である。

「オブジェ」というものにはそれ自体に不条理性が宿っているし、実際街中にあるオブジェというものは、日常風景に突然の違和感を与えてくれる。(ツェッペリンの『Presence』のジャケットに映り込むオベリスクがまさにそれである)

ライヴではこれまで何度も聞いていたが、改めて歌詞を目にするとやはりよくわからん。カフカの『流刑地にて』の拷問器具なんかをイメージしたが、それも違うような気がする。

そんな不条理な歌詞で聞き手側が違和感を覚えるなかでの、アイアンメイデンばりのトリプルギターがとても印象に残る。

歌詞は不条理、楽器は条理。それがH MOUNTAINSを貫くものであると思う。この曲はまさにそれらを体現した曲であると思う。(大垣)

6. ウエスタンラリアット――ご存知スタン・ハンセンの必殺技

せっかく歌詞の話をしていたのにいきなり歌詞のない曲である。

ウエスタンラリアットと言えばご存知スタン・ハンセンの必殺技である。ハンセンといえば乱暴者で、入場時にロープを振り回して観客もバシバシしばいて入場してくる姿は、まさに暴れ牛であった。しかしそんな彼もプロレスラーになるまでは教師だったらしい。凶暴性の中にある知性。ハンセンらしいエピソードである。

きっとのこの曲はそんなハンセンのことについての曲なのだろう。ウィー! (大垣)

7. なんか落ちていないか――「なんか」に期待する気持ちに溢れている

会話する相手もなく、ただ周りの景色を捉えつつ、一人夜の街を歩く曲である。華やかな週末の街を一人歩く。雑踏にはあんなに人間が沢山いるのに、自分を呼ぶ者はいない。

そんな群衆に対してなのか自問自答なのか、どっちともつかないような「なんか落ちてないか」という呟きだけが繰り返される。

積極的に関わるでもなく、孤独に内に篭るでもなくどっちつかずだけれど、「なんか」に期待する気持ちに溢れている。空の上から女の子が降ってくるのを待つような、受け身ながらも何かが起こって欲しくて仕方がない、まさに金曜日の夜のような曲である。(大垣)

8. (whrere is) bad boy――KJに布施明なみの歌唱力と説得力があれば

このバンドの持ち味である、緻密なバンドアレンジが冴えわたる一曲である。

サビで一度演奏がストンと落ちて、そこから口火を切るようにジワジワとドラムの手数が増え、妙な高揚感とともに間奏で一番やかましくなるという不思議なアレンジだ。しかし演奏ばかりに集中していると、歌が頭に入ってこない。

歌の下手っぴさと豪華絢爛なトリプルギターの絡み合いによって、KJの作詞スキルがライヴでは伝わりきっていないフシはあると思う。KJに布施明なみの歌唱力と説得力があれば、一瞬でスターダムに登りつめることも出来ると常々思っている。

めでたくアルバムが完成したこの機会に、あったかいお茶でも飲みながらゆっくりと歌詞カードを手に取り、しげしげと眺めてほしい。(山本)

9. パキパキマン――「ふざけているわけではありません。まじめにやっています」と話していたその典型

パキパキマンはとりあえず歩いている。だけど、何がしたいのかはよくわからない。そういう人は意外とたくさんいるのかもしれない。

「大きな穴の 空いたポケットに 一体何を 詰め込んでたんだろう」

この曲はこの一節に全部詰まっていると思う。考えれば考えるほど、深いような、そうでもないような、でも誰にでも当てはまるようなフレーズである。

いつかのライヴのMCで、KJが「ふざけているわけではありません。まじめにやっています」と話していたのはとても印象的だった。この曲はその典型だと思う。(山本)

10. 近視眼くん――台風が近づいてきたときの、みぞおちあたりがザワザワする感じ

この曲を聴いていると、台風が近づいてきたときの、みぞおちあたりがザワザワする感じを覚えます。南太平洋の匂いが漂っているようにも感じられますが、おそらく台風によって運ばれてきたのでしょう。「さんはい!」という野太い掛け声に導かれて合いの手を入れる謎のコーラス隊も台風の道連れでしょうか。一体どういう集団なんでしょう。

強風で自動車や電話ボックスなどが宙を飛び交っているような演奏と楽器の定位も楽しい曲です。(鳥居)

11. 草――どんな草でも天ぷらにして食う人を思い出した

リズムが把握しにくいベース・フレーズは一曲を通してずっと同じ。多分1コードの曲ということになるんだと思うが、アレンジの妙のせいか単調さやストイックさは感じられず、ポップに仕上がっている。

けどやっぱかなり変な曲。

「その草は食べれんのか」「草食ってゴー」という言葉を聞いて、以前テレビで見た、どんな草でも天ぷらにして食う人を思い出した。(吉田)

12. 江の島―― 一瞬の煌めきを掬い上げることに成功した。名曲

人は綺麗な物語が好きだ。

物語として整理される過程で、筋と関係ないしょうもない出来事は切り捨てられてしまうだろう。

そんな中にあって、「物語の結末なんてどうでもいい」「こんな俺たちの言葉はすぐにどこか消えてしまおう」という言葉は、意味もなく存在する今を捉えようとする積極的な態度となる。

彼らは音楽という手段で、物語になれない、忘れ去られていくだけの一瞬の煌めきを掬い上げることに成功した。名曲。(吉田)

13. U2――多分本人たちはそんなつもりはない

曲名が基本的に適当っぽいH MOUNTAINSの中でも、11曲目の「草」とこの「U2」というネーミングは際立っている。ひねくれた曲の多い彼らにしてはストレートめなNew wave感がある曲。

その辺がU2なのかも知れない。U2あんま聞いたことないけど。

ラストナンバーであるこの曲はアニメのオープニング風に唐突に終わる。1stの最後ということで「ここからが始まりだ」という意味を込めたのかとも思ったが、多分本人たちはそんなつもりはない。(吉田)

LIVE INFO

2014年5月6日(火祝)@秋葉原GOODMAN
w/ moools、壊れかけのテープレコーダーズ

2014年5月16日(金)@小岩BUSHBASH
w/ LOOLOWNINGEN & THE FAR EAST IDIOTS、Limited Express(Has Gone?)、左右、kumagusu、chifs

H MOUNTAINS「GOLD MEDAL PARTY」レコ発大阪編!
2014年5月18日(日)@梅田HARDRAIN
w/ スーパーノア、and Young...、o'summer vacation

2014年5月27日(火)@下北沢basementbar&three
w/ オワリズム弁慶、mothercoat、いったんぶ and more

my letter企画 H MOUNTAINS「GOLD MEDAL PARTY」レコ発京都編!
2014年6月15日(日)@京都nano
w/ my letter、HOSOME、littlekids

PROFILE

H MOUNTAINS

畠山健嗣(Vo,Gt)、チバソウタ(Gt,cho)、GOGATECH(Gt,cho)、シントタカシ(Ba)、ヤノアリト(Ds)

Far Franceの畠山健嗣を中心に結成。オルタナ界のくせ者どもの出す音は、あれ? なんかPOP!?

>>H MOUNTAINS Official HP
>>Facebook
>>Twitter

[レヴュー] H Mountains

TOP