静かな音に、耳を澄ませて――中島ノブユキ、ピアノ一台で挑んだ新作をDSD配信

2013年のNHK大河ドラマ「八重の桜」で音楽を担当し、一躍その名を世間に知らしめた中島ノブユキ。そんな彼の最新作『clair-obscur』がDSD 5.6MHzの高音質で配信開始されました。前作『Cancellare』から2年、ピアノ一台のみを使い、自身の楽曲のみで構成されたという本作は、削ぎ落とされた音とシンプルな和声を用いて、私たちに静かに語りかけてくれます。ホール録音による豊かな響きを、DSDならではの繊細なサウンドでお楽しみください。

中島ノブユキ / clair-obscur (5.6MHz dsd+mp3)

【配信フォーマット / 価格】
DSD+mp3 : 2,200円(まとめ購入のみ)

【Track List】
01. lost corner
02. perpetuum mobile
03. reflection #1
04. prologue epilogue
05. aria
06. reflection #2
07. clair
08. obscur


静かな気持ちで音楽に耳を傾けることの快楽

再生ボタンを押したとき、少しだけ戸惑った。スピーカーから流れてくる音が、あまりにも小さく感じたからだ。だが、すぐにそれは間違いだったと気づく。大きな音で音楽を聴くことに知らず知らず慣れてしまい、小さな音に耳を澄ませることを忘れていたのだ。中島ノブユキの新作『clair-obscur』の核心にあるのは、小さな音に対する深い愛情、そして絶対的な信頼なのではないか。少なくとも筆者はこの作品を聴いて、静かな気持ちで音楽に耳を傾けることの快楽を思い出すことができた。

映画「人間失格」(2010)、アニメーション「たまゆら」(2010)、NHK大河ドラマ「八重の桜」(2013)など、中島ノブユキはこれまでに多くの劇伴を手掛けてきた。そのためか、彼の音楽は私たちに寄り添うように、静かに語りかけてくれる。誰もが口ずさめるメロディーがあるわけではない。心をかき乱すような展開があるわけでもない。だが、削ぎ落とされた音とシンプルな和声で構成された楽曲には、音の響きそれ自体を楽しみ、じっくりと味わうことのできる奥行きがある。いわゆるクラシックに分類される作品を除いて、ピアノ一台だけでここまで聴かせてくれるアルバムに久しぶりに出会った。

そんな中島の音楽を聴いていると、ひとりの作曲家の名前が頭に浮かぶ。アルヴォ・ペルト(1935-)だ。彼はエストニア出身の作曲家で、「ティンティナブリ」(=鈴の音)と呼ばれる作曲法で知られている。この作曲法の特徴は、少ない音数で構成される短い旋律、そこに付随するシンプルな三和音、それらが少しずつ形を変えながら、ただ一定のリズムで静かに繰り返されるというもの。ドラマチックさは一切ないが、未来永劫、脈々と繰り返される生命の営みのようなものを感じさせるスタイルだ。ペルトほどミニマルではないものの、中島の新作からは、それにかなり近い意図を感じることができる。

いずれにせよ本作は、ピアノの響きそのもの、そしてその余韻、あるいは音がふと消えていく瞬間、そういったものを楽しむべき作品に違いない。それはまさに、DSDのフォーマットで聴くのに最適な一枚だ。(text by 長島大輔)

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PROFILE

Photo by Kenichi Aono

中島ノブユキ
作曲家、ピアニスト。東京とパリで作曲を学び、以降、クラシックやジャズ、ポップスなど、さまざまなフィールドで活動を続ける。2005年頃より、菊地成孔、持田香織、畠山美由紀、ゴンチチらの作品に編曲家として参加。また、映画「人間失格」(2010)、アニメーション「たまゆら」(2010)、NHK大河ドラマ「八重の桜」(2013)の音楽を担当する。これまでに5枚のソロ・アルバムを発表し、現在は自身のライフワークとして「24のプレリュードとフーガ」を作曲中。

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