2013/10/31 00:00

2012年1月に結成され、京都を中心に活動する、弱冠21歳の3人組"プログレッシブ・ポップ"・バンド、宇宙コンビニが、デビュー・アルバム『染まる音を確認したら』をリリース。プログレッシブでエモーショナルな楽曲から、エヴァーグリーンなアコースティック・ソングまで、宇宙コンビニのPOPが詰め込まれた作品となっている。ポスト・ロックをよりポップに消化し、浮遊感のある歌声とともに独自の世界観を産み出す若き才能は、これからの音楽シーンに強烈な風穴を開けてくれること間違いなし。インタビューとともに、フレッシュなサウンドにぜひ触れてみてほしい。


宇宙コンビニ / 染まる音を確認したら
【配信形態】
mp3

【価格】
単曲 200円 / まとめ購入 1,200円

【Track List】
1. Pyramid / 2. 8films / 3. tobira / 4. Compass / 5. strings / 6. 裁判にかけられた男 / 7. 体温

INTERVIEW : だいじろー、えみちょこ、なずお

宇宙コンビニの音を初めて聞いたとき、「あ、これは確かに宇宙コンビニだ」と思った。バンド名しかり、“宇宙のように壮大、かつコンビニで流れていそうな音楽”というコンセプトしかり、“プログレッシブ ポップ”という音楽性しかり、言い得て妙! といちいち太鼓判を押したくなる。テクニカルなギターに変拍子のリズムという一見とっつきにくいポスト・ロック、マスロックの無機質なインストゥルメンタルの上を、温かく透き通った女性の声が有機的に響く。それがなんの違和感もなく大衆性のあるポップスとして聴こえるのは、彼らの「多くの人に自分の音楽を伝えたい」という意識が明確なビジョンとなって、またサウンドとなって描けているからだろう。結成から約1年10か月、若干21~22歳の3人がいかにしてこの発明とも呼べるサウンドに辿り着き、構築しているのか。1stミニアルバム『染まる音を確認したら』リリースのこのタイミングに話を聞いた。

取材 & 文 : 峯大貴

左から、だいじろー、えみちょこ、なずお

宇宙のように壮大で、コンビニでも流れてそうな身近な音楽

――最初に気になったんですけど、なずおさんって本名は祐人さんですよね?

なずお(Dr) : なずおは、ハンドルネームみたいなもんですね。3人とも本名の名前を並べたらポップすぎるかなと。だからえみちょこも「えみ」じゃなくてえみちょこなんで、お願いします(笑)。

――わかりました。そんななずおさんは今年の6月に入ってから正式に加入して、それまではサポートだったと伺いました。最初はだいじろーさんとえみちょこさんのお二人で2012年1月に活動をスタートしたということで、お二人が出会ったきっかけってなんですか?

えみちょこ(Vo,Ba) : 高校の時に私はあるシンガーさんをベースでサポートしていて、そのバンドにギターがいないってことで呼ばれたのがだいじろーさんだったんです。アコギ、ベース、ピアノでアコースティックなポップスをやっていました。

――そのときに、だいじろーさんは音楽活動なさっていたんですか? YouTubeにソロ・ギターで押尾コータローさんのカバーなどをアップされているものを拝見したんですけど。

だいじろー(G) : そうですね。ソロ・ギターで活動していたり、バンドもちょくちょくやっていました。

――そして同じサポートという立場で二人が出会って、宇宙コンビニという活動に発展していくと。

だいじろー : 僕がちょうど前やっていた“宇宙コンビニ”っていうバンドが解散して…。

――え!? 宇宙コンビニって前のバンドの名前だったんですか?

だいじろー : はい、今とは違ってちょっとロック寄りな3ピースで。それが終わってしまって、また新しいバンドやりたいなーってということで、えみちょこを誘ったんです。

――宇宙コンビニに初代があったとは! その際にドラムとか他のパートを入れることを考えていなかったんですか?

だいじろー : 二人で組んだんですけどなかなかドラムが決まらなくて、しばらくサポートを入れてやっていました。それも加入には至らなくて何人か替わっていきまして。そして、また次のサポート探さなあかんなってときに、えみちょこが大学の先輩を連れて来たんですよ。その方が前作EP『廻る景色のなかに』の出た、今年の1月31日までしばらく手伝ってくださっていました。なずおはえみちょことその方と同じ学科だったんです。
なずお : 僕はえみちょこと同期でこれまでもドラムの先輩の日程が合わないときにサポートとして入っていました。

――じゃあ、なずおさんはこれまでもドラマーとして活動していたんですか?

なずお : いや、僕は全然やっていないですね。バンドも高校生のときに遊びでやっていた程度で本格的なバンド活動は宇宙コンビニが初めてです。大学の専攻がえみちょこがベース学科で、僕がドラム学科だったのでプレイヤーとしてはやっていました。そこで前の方が手伝えなくなった1月以降は本格的にサポートとして入って、いつの間にかメンバーに…。
だいじろー : ずっと手伝ってくれていて、メンバー内でもどうしようかって話はしていたんですけど、宇宙コンビニに対して、めっちゃ熱意を持っていてくれたので、6月のライヴで正式に入ってもらいました。それがこれまでの経緯ですね。

――だいじろーさんのやっていた前のバンドの名前を、新しいバンドでも引き継ぐっておもしろいですよね。しかしいまの宇宙コンビニのサウンドをうまく表現しているバンド名だと思います。

だいじろー : 個人的にとても気に入っていたので、えみちょこに推して継続して使っています。でもコンセプトは前のバンドと違って「宇宙のように壮大で、コンビニでも流れてそうな身近な音楽」というのに沿って曲を作っているので、その雰囲気はバンド名からでも感じられるんじゃないかなと思っています。

ポップさをかなり意識しています

――そのコンセプトであるテクニカルで変拍子も用いたインストゥルメンタルに、しっかりとした「歌」が同居しているという宇宙コンビニのサウンドは、結成当初からのものだったんでしょうか?

だいじろー : サウンドとしては変わりないんですけど元々はインスト・バンドのつもりで組んだんですね。でも、やっていくうちに歌もほしいなと思って、ボーカルを探していたんですけれども、なかなか見つからなくて。そこで、えみちょこの歌っている音源を第三者から入手しまして(笑)。
えみちょこ : 高校は専門学校行ってたんですけど、REC実習で歌った音源がなぜだか流出しちゃって…。
だいじろー : ボーカルというか「歌ってみた」のようなラフな感じだったんですけどすごい声がよくて、「歌ってみいひん?」って提案しました。

――えみちょこさんは、それに対してすんなり受け入れられましたか?

えみちょこ : それまではカラオケで歌う程度だったんで、人前で歌詞を伝えたり歌ったりすることに恥ずかしさも少しはありました。

――インスト・バンドとして始めたけども、歌も乗せることになって曲の作り方とかは変わりました?

だいじろー : 元々はギターをいじってフレーズができたらそこから広げていくという作り方だったんですけど、歌ものにも取り組むようになってからはヴォーカルのメロディからコードつけて作っていく曲も出てきたり、作り方はバラバラですね。「tobira」の作り方は特殊で。唯一、えみちょこが詞を書いているんですけど、その歌詞から僕が歌メロを付けました。
えみちょこ : 私がぱっと歌詞を持っていって、そのときに作っていた曲にちょうど合ったんです。
だいじろー : ギターの伴奏だけ全部できていたんですけど、そこに詞がばっちり合って。なんかトイレで書いたって。

――なんでまたトイレで(笑)。

なずお : あ! (トイレの)「tobira」!?
えみちょこ : それもあるかもしれない(笑)。特にその曲の伴奏に合わせるわけでもなく、大学入って忙しいときにぱっと自分の中に出てきたもの思いつくままに本当に3分くらいで書いて、次の日に持っていきました。
だいじろー : 本当にえみちょこの書いたまま一文字も削ったり調整もせずに伴奏に合ったのでなかなか奇跡でした。

――「tobira」と同じくPVにもなっている「8films」などリフから作る曲に関しては、だいじろーさんが初めからかなり作りこんでからメンバーに持っていく形ですか?

だいじろー : そうですね、僕がギターで作ったものを二人に雰囲気を伝えて自由に肉付けしてもらう感じです。3人でやっていてこっちの方が楽しいな、気持ちいいなってところは調整して「8films」はより複雑になりました。歌を乗せる前に曲の伴奏とか、インストを作る場合も、インストの時点で素直にいいなって思える部分を詰め込んで、ポップさをかなり意識しています。複雑なリフも多いですけど、シンプルな部分も僕らにはかなりあって、一歩引いて聴いてみて複雑になりすぎてないか、ちゃんといいと思えるかの判断は3人でしっかりしています。

毎回新しいことをやっていかないといけない

――歌詞は抽象的だけど、どこか共感できるところがあるなと思ったんですけれども歌詞については?

だいじろー : 僕は結構暗い歌詞のように見えて最終的に救いのあるメッセージを込めていますね。えみちょこの歌詞は、自分のことを書いているのかなって思うんですけど。
えみちょこ : 私は自分の想いもあるんですけど、色んな解釈ができるように書いています。

――二人の歌詞って並べてみてもあんまり違う人が書いているように見えないですよね。思考が似ているのかなと思ったんですが。

だいじろー : 音楽の好みとか入口は違うけど、ずっと一緒に音楽やってきたことでどこか共有している部分があるからだと思います。同じ方向を向いているから、似た部分もできてきたような。

――なずおさんの思考はどうでしょうか?

なずお : 毎回ギターのデモ音源を聴くところから曲作りが始まるんですけど、「あ、これ名曲きたわ」って思っているので。
だいじろー : 僕も思っています(笑)。

――似ていて、かなりお互い信頼していますね(笑)。

だいじろー : 信頼はしている分アレンジの面では、かなりぶつかっています。
なずお : 変拍子が多いので、フレーズを付けるのが難しいんですよね。ドラムのフレーズだったり、音楽のいわゆるテンプレートに当てはまらないので、毎回新しいことをやっていかないといけない。
だいじろー : 僕は、曲をいわば作って二人に「置いている」感じなんですよね。すると、ここのリズム隊二人(えみちょことなずお)でまた兼ね合いが出てくるんです。ドラムのフレーズを付けたら、ベースのフレーズは限られてしまうので、そこは苦戦しているんじゃないかなと二人を見ていて思いますね。

――曲作りに関しては模索しながら色んな方法を取っていると。影響受けた音楽とかありますか? 先日はASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんがツイッターで、宇宙コンビニを聴いたと呟かれて(10月19日のツイート)、そのときにはアメリカン・フットボールを引用してらっしゃいましたが。

だいじろー : アメフトは僕が元々めちゃめちゃ好きで。でもえみちょこは俺と出会ってから知ったと思う。でも多分俺が影響受けているのはわかっているので、そういう雰囲気に沿ってたまにベースを弾いてくれると思うんですけど。でもアメフトはベースあまり目立たないし、ちょっと違うかな…。
なずお : バンド・サウンドとしてはアメフトもありますけど、楽器ごとに影響元はかなり違うと思いますね。僕だったらプログレがすごい好きやったり。
だいじろー : ギターであればアイリッシュも大好きですし。
えみちょこ : 私のきっかけはBUMP OF CHICKENとかアジカンとかRADWIMPSとかから音楽好きになり始めて。そこからアメフトとかプログレとか色んな音楽を聴いていきました。

――では先週のゴッチさんのツイートはなおさら嬉しいですよね。

えみちょこ : もうやばかったです。寝れませんでした(笑)。
なずお : 反響もタイムラインに溢れましたね。

――そのゴッチさんのツイートも含めてなんですけど、今年1月に最初の自主制作EP『廻る景色のなかに』を出して600枚を売り、そして今回のミニ・アルバム発売とかなり順調に活動の幅が広がっているなという印象なんですけれども、多くの人に聴いてもらえるようになったきっかけとかなにかありますか?

なずお : やっぱり、いっぱいライヴをしていたからってのが一番大きいんじゃないですかね。継続して月に6本はやっていますし、いろんな場所でいろんな人に聴いてもらったのがまずあります。またホームとなるライヴハウスがあるバンドも多いんですけど、僕らにはそれがなくて関西では均等にやっています。

――京都発とありますが、他のバンドに比べてシーンの色がそれほどこだわっていないというのも特徴ですよね。今回のアルバム収録曲というのは、これまでライヴでやってきた曲の中から選んだんでしょうか?

だいじろー : 7曲中6曲はそうですけど、1曲「strings」は今回のための新曲ですね。

――今回のレコーディングにあたって準備したこととかはありますか?

なずお : 「8films」と「tobira」は前作のEPにも収録されていますが、反省とかではないんですけど、ちょっと変わっていますね。「8films」はテンポあがっていたり、「tobira」はしっとりまろやかに。
だいじろー : ライヴでやっていて、こっちのほうがしっくりくるなということを前作以降に確かめていった結果ですね。特別な楽器も今回はストリングスを重ねて入れたくらいで、基本はいつもの編成でやりました。
えみちょこ : やっぱり、1stミニアルバムってことで多くの人に聴いてもらえるので、このレコーディングにあたっても、1曲1曲のアレンジを今一度練り直しましたね。

――お話を聞いていて、コンセプトや曲作りのスタイルなどやりたいことがしっかり固まっていることがよく伝わってくるんですけど、今は自分のやりたかったサウンドを存分に表現できている状態ですか?

だいじろー : ぶつかることはもちろんありますけど、3人とも自分のやりたいことをやった結果、曲が出来ている状態で。僕の最初に出したデモからかなり変わるんで、各々の色はよく出ていると思います。
なずお : これまであんまり言ってないんですけど中学生の時から「女性ボーカルのプログレは売れる!」って勝手に思っていたので、もうこのバンドは願ったり叶ったりですね。

――今の「売れる!」という発言にもありますが、趣味嗜好を深く突き詰めていくようなものではなく、できるだけ多くの人に聴いてもらいたいという外に向ける思いが強いですよね。

だいじろー : 完全にその通りですね。それは3人でしっかり共有しています。
なずお : その意識が曲のポップさであったり、ボーカルを入れたところとかにも繋がっているんで。僕とえみちょこは大学はやめていますし、だいじろーさんも就活しなかったので(だいじろーは現在関西学院大学4回生)。やる気満々です!

LIVE SCHEDULE

みつあみレコード presents 2cakes for 3persons
2013年11月9日(土)@京都MOJO

宇宙コンビニ アコースティックミニライブ&特典お渡し会
2013年11月16日(土)@タワーレコード京都店

宇宙コンビニ アコースティックミニライヴ&特典引き換え会
2013年11月30日(土)@タワーレコード新宿店 7F イベント・スペース
2014年1月11日(土)@あべのROCKTOWN
2014年1月19日(日)@京都・二条GROWLY

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PROFILE

宇宙コンビニ

2012年1月結成、京都発3ピース ”プログレッシブ・ポップ”・バンド。 ポスト・ロックをよりポップに消化し、独自の世界観を産み出す。

Gt.だいじろーとDr.なずおによるテクニカルなインストゥルメンタル、 そこにふわっと薫るように存在するVo. / B.えみちょこの透き通った歌声。

1st DEMO『廻る景色の中に』はライヴ会場限定にも関わらず 発売半年ですでに600枚を販売。自主企画では150人を動員。 2013年3月に行われた10代のバンド限定イベント 『十代白書@BIG CAT』に出演、実行委員会賞を獲得。

平均年齢20~21才とは思えない驚きの才能が、 音楽シーンに登場する。

宇宙コンビニ official web

[インタヴュー] 宇宙コンビニ

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