2012/12/05 00:00

2012/12/5~12/11の注目2作品をレビュー!!

早いところはすでに忘年会が始まる時期ではないでしょうか! お酒呑むのに忙しい毎日がやってきそうです。そんなことにはお構いなしに、新たな素晴らしい音源たちが続々とリリースされています。ただ、数が多い! 興味はあるけど、全部は聴いていられない! そんなあなたのために、このコーナーでは、OTOTOY編集部がオススメする今週の推薦盤を2~3枚ピックアップし、ライターによるレビューと共にご紹介いたします。音源を試聴しながらレビューを読んで、ゆったりとした時間をお楽しみください。あなたと素敵な音楽の出会いがありますよう。

tricot『バキューンEP』


tricot / バキューンEP

【配信形式】
mp3

【価格】
単曲 200円 / まとめ購入 600円

『小学生と宇宙』配信 & tricot 全員インタビュー

「若い人たちが部屋にいるだけで、そのエネルギーで教室の温度があがるんだよ」。筆者が中学生だったころ、真冬の教室で年老いた先生がそんなことを話していた。京都の4人組バンドtricotの音楽を聴いていると、若さゆえに溢れ出るエネルギーというのが本当にあるんだなと知らされる。彼女たちの楽曲は、ポスト・ロックやマス・ロックといった2000年代に中心を担ったオルタナティヴ以降のロックだ。しかし、彼女たちにとってそんなこと関係ないのだろう。押さえきれないエネルギーを、電気を通した楽器を使って放出する。そこではみ出ているエネルギーというのがtricotというバンドの本質であり、我々を熱狂させる元となっているのだ。前作『小学生と宇宙』から約半年、そのエネルギーは衰えることはない。しかし、どこかにエネルギーをコントロールできるようになりつつあるようにも見える。それをどう使いこなすか。彼女たちの表情が変わっていくのはここからだ。(text by 西澤裕郎)

daoko『HYPER GIRL -向こう側の女の子-』


daoko / HYPER GIRL -向こう側の女の子-
【価格】
wav 単曲 200円 / アルバム 1,500円
mp3 単曲 150円 / アルバム 1,500円

既にネット上で話題の15歳の少女「daoko/だをこ」によるファーストアルバム "HYPER GIRL:向こう側の女の子" 完成!アルバムタイトル「HYPER」とは「向こう側/超越」という意味で、彼女のリアルを飛び越えた想像世界との交差が描かれている。ポエトリーリーディング、美しいコーラスワーク、ラップ、バランス良く絡む絶妙な彼女の表現は圧巻。

DJみそしるとMCごはんや泉まくらなど、若手女性ラッパーの登場が話題になった2012年、その締めくくりに相応しい、ひと味違った鋭さを持つ女性ラッパーがデビューした。ニコニコ動画への動画投稿が話題になり、デビューに至った15歳の新人ラッパーdaoko(だをこ)は、女性らしい繊細な声と、どこか影のあるラップが持ち味だ。想像世界との交差が描かれているというアルバム『HYPER GIRL -向こう側の女の子-』では、曲の中の”彼女”が見た情景や感情が包み隠さず語られている。躊躇ない感情の吐露と、細やかな情景描写の表現は、色鮮やかなトラックに映えていて、1本の映画を観ているような感覚を覚える。流れるようなリリックと、吐息混じりのコーラスはとても10代の表現とは思えない。しかし、彼女の語りには10代の不安定さが見え隠れする。大人でも子供でもない帰属感の無さを、毎日のインスタントな楽しさで紛らわしていること。大人が作る制約の中で日々を楽しみつつ、自分が大人側に立つことを想像すると不安を感じること。そんな感情もそのまま言葉にしている今作は、15歳の”今”のdaokoにしか作れない、鋭い作品。daokoを通して彼女の生活を覗き見て、独特の浮遊感に身を任せてみないか。(text by 櫻井希)

クリンペライ『petites pieces indelicates - 気の利かない小品集 -』


クリンペライ / petites pieces indelicates - 気の利かない小品集 -
【価格】
wav 単曲 150円 / アルバム 1,500円
mp3 単曲 150円 / アルバム 1,500円


ドアの鍵、木魚、ガラガラ、いびき。音が鳴る全てのものは楽器になり得る。思いつきとユーモア、そして少しの偶然でできているトイ・ミュージック。そんなトイ・ミュージックの専門レーベルNovel Cell Poemから、フレンチ・トイポップの代表格、Klimperei(クリンペライ)の最新フル・アルバムが発売された。トイ・ピアノ、リコーダーやギターのメロディーをベースとして、身の回りにある様々なおもちゃを使って、愛らしくも切ない音楽を奏でるクリンペライ。アナログ感溢れる懐かしい音の重なりと、ヨーロッパらしいノスタルジックなメロディーが特徴的だ。八重奏のオーケストラを意識して作られたという今作は、トイ・ミュージックとは思えない壮大さを持ちつつ、どこか間の抜けた音が紛れ込んでいたり、くすりと笑ってしまう音に出会える一枚。おもちゃ楽器の良さを生かしつつ、新境地を開拓しているクリンペライの意欲作を、ぜひ聴いていただきたい。(text by 櫻井希)

[インタヴュー] ZENDAMAN

TOP