2012/10/22 00:00

サイケデリックな中にもポップさが光るサウンドとシニカルで独特な詞世界が特徴的な4人組バンド、踊ってばかりの国。去年は1st full album『SEBULBA』、2nd full album『世界が見たい』を立て続けにリリースし、全国ツアーも大盛況のうちに終えた彼らだったが、今年はライブの本数を絞り、制作モードに突入。そんな彼らから待望の3rd mini albumが届いた! 彼らの真骨頂であるサイケデリックサウンドはもちろんのこと、その音楽的探究はアシッドフォーク、ジャズ、そしてアイリッシュパンクまでに広がり、彼らにしか出せないサウンドに更なる磨きをかけている。今の時代に彼らが投げかけるメッセージは、そのサウンドと絶妙に溶け合うことで、より深く、聴く人々の心に突き刺さる。彼らが選択した活動休止は、新しい踊ってばかりの国の始まりなのだ。

2012年、鳴らすべくして鳴らされた、言葉と音
踊ってばかりの国 / FLOWER

【Track List】
1. 話はない / 2. シャンソン歌手 / 3. tonight〜intro〜 / 4. tonight / 5. coke / 6. Hey-Yeah / 7. 切りがない / 8. セシウム

【販売形式】mp3 / WAV

【販売価格】1,200円 / 1,600円

楽しいだけでは終われない

下津光史という、圧倒的な存在感を放つフロントマンを擁する4人組、踊ってばかりの国。2枚のフルアルバムを経てリリースされたミニ・アルバム『FLOWER』は、辛辣な歌詞をポップなメロディーで、リヴァーブの利いたサイケデリック・ロックに乗せて歌うというこれまでのスタイルにとどまらず、楽曲の幅が大きく広がったことで、更にはっきりと彼らの「攻め」の姿勢が伝わってくる作品だ。

前作『世界が見たい』の時点でもサウンド面で様々な試みを見せてはいたが、多数のゲストも迎えての今作には、日本のサイケデリック・ロックの枠をはみ出した楽曲がいくつもある。ホーンセクションを加えたスウィング・ジャズ歌謡風の「シャンソン歌手」や、フジロックのグリーンステージが目に浮かびそうな高揚感を持つ「Hey-Yeah」などが出色の出来栄えであることを思うと、新しいことにチャレンジしたというよりも、音楽家としてやりたかったことをようやく出せた結果なのかもしれない。いっぽうで歌詞の辛辣さは多少後ろに下がったようでもあるが、この何よりもまず音楽的に面白いことをやる、やりたいことを貫くという態度こそが、下津の歌うメッセージの説得力を増すこととなっている。今の時代にこういう音を出すこと自体が、彼らの強い意志表明であることに気付かされるのだ。

そして最後に収録された「セシウム」では、今作の中では最も率直な言葉が並ぶ。繰り替えされる<息一つするたびにセシウム溜めて生きるだけさ>というフレーズは、俺たちは常にその違和感がある中で生きているんだ、それを忘れるなよ、という自覚を促しているように思える。それは我々同世代のリスナーにとって、安易に共感できるような感覚ではないだろう。だからこそはっきりと「突きつけられている」と感じるし、聴き終えたときに無視できない心のざわつきが残るのだ。

すっかり夏フェス中心となった音楽シーンで安易な“踊れる音楽”が流行する中、そうしたリスナーも振り向かせることのできるポップさを持ちながら、最後には大きな問題提議を突きつける。楽しいだけでは終われない、音楽に頭を殴られるような感覚を、是非とも体験してほしい。(text by 柳川春香)

※本原稿は、活動休止の発表前に寄稿されたものです。

LIVE INFORMATION

踊ってばかりの国【FLOWER TOUR】

2012年11月20日(火)@愛知 名古屋アポロシアター
2012年11月24日(土)@東京 代官山UNIT
2012年11月30日(金)@大阪 大阪Shangri-La

踊ってばかりの国の配信音源をチェック!!

>>>小林祐介(THE NOVEMBERS)×下津光史(踊ってばかりの国)対談
>>>下津光史(踊ってばかりの国)×有馬和樹(おとぎ話) 対談

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PROFILE

踊ってばかりの国
2008年神戸にて結成。下津光史(Vo,G)、林宏敏(G)、柴田雄貴(B)、佐藤謙介(Dr)からなる4人組バンド。2009年3月に自主制作盤1st mini album『おやすみなさい。歌唄い』を自主制作し、東京、名古屋にてツアーを敢行。好評だったため自主盤の制作が追いつかずメンバーでの手売りを断念。7月に全国流通盤を出し、各CDショップバイヤーや各媒体に好評価を得る。2010年3月に2nd mini album『グッバイ、ガールフレンド』をリリース。このリリースをきっかけに、ライブオファーが殺到。FUJI ROCK FESTIVAL’10、RUSH BALL2010などの大型フェスへの参加により、名前が全国区に広がる。2011年には3月に1st full album『SEBULBA』、11月に2nd Full Album『世界が見たい』を立て続けにリリース。その間に、初のワンマン公演も含めた全国ツアーを敢行、大盛況となる。2012年になると同時に、新作制作に着手。3月には「裏の仕業ツアー」を東名阪にて行い、東京と大阪はソールドアウトとなる。

踊ってばかりの国 HP

[レヴュー] 踊ってばかりの国

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