2012/05/25 00:00

Daniel Land & The Modern Painters 『The Space Between Us』

Daniel Land & The Modern Painters / The Space Between Us

ウルリッヒ・シュナウスが電撃加入した事で話題となったマンチェスターの叙情派シューゲイズ・バンド、エンジニアズのメンバー、ダニエル・ランド率いるザ・モダン・ペインターズ。ブライアン・イーノやコクトー・ツインズらの影響を受けたドリーミーな世界観。メランコリックなサウンドに重なる、美しくも儚い歌声。シューゲイズの総本山、英国のClub AC30よりリリースされる新作に未発表曲3曲を加え、日本先行販売!

【価格】
mp3 : 単曲 150円 / アルバム 1500円
WAV : 単曲 200円 / アルバム 2380円

シューゲイズのまどろみに差す、光の歌声

“シューゲイザー”の代表的なアルバム、マイ・ブラッディ・バレンタイン『Loveless』のリマスター版が先日発売されたことが話題になっている。オリジナル盤は1991年に発売されたので、もう20年前のことだ。20年前に発売されたアルバムが、ツイッタ―のタイム・ラインを賑わせている状況(その中には、マイブラをリアル・タイムで追う事ができなかった僕らのような世代のリスナーも多数混じっている)を見ると、90年代にイギリスから発信された“シューゲイザー”という音楽の魅力がどれだけ強力なものであったかが分かる。

今回紹介するDaniel Land & The Modern Paintersも、そんなシューゲイザーに魅せられたバンドの一つ。全体的にリバーブがかったサウンドは先人達の手法をかなり忠実に再現していると言える。サウンドとして一番近いのはコクトー・ツインズだろうか。だが、彼らとは一つ決定的に違うところがある。歌だ。 シューゲイザーのような音楽においては、ボーカリストの能力というのはあまり求められないのが普通だ。深いリバーブがかかった、あまり抑揚のないメロディは、サウンドの一部として扱われる。一番重要視されてきたのは、声量や声域ではなく、リバーブと相性の良い声質であった。 しかし、このバンドのサウンドは、あくまで歌が中心に置かれている。ボーカルを取るDaniel Landのボーカリストとしての力量が、相当なものであることは一聴してわかる。オペラ歌手のように、どこまでも声が伸び、ピッチは乱れることがない。綺麗というよりは、男性であることを活かした、力強い声だ。シューゲイズ・サウンドである割には、荒々しいギター・ノイズがほとんど出てこないのも歌を生かすためのアレンジなのだろう。抑揚を作っているのはあくまで歌。結果として、かつてのシューゲイザーのような攻撃性はもっていないものの、より聴き易く、透明感のあるサウンドに仕上がっている。

ぜひ音量を上げて聞いてみて欲しい。リバーブを駆使したDaniel Landのボーカル・ワークは、「ウォール・オブ・ギター」ならぬ、「ウォ―ル・オブ・コーラス」と言える出来。昔の音楽をただ焼き直したアルバムだと思ってしまうのはもったいない。時計の針はちゃんと20年分進んでいるのだ。(text by 上野山純平)

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V.A / LOVELESS -tribute-

マイ・ブラッディ・バレンタインの伝説の名盤『LOVELESS』の発売から20周年を記念して、エレクトロ・シューゲイザー、ポストロック、フォークトロニカ、アンビエントなど様々なサイケデリックな手法で『LOVELESS』を再構築したトリビュート・アルバムが登場。参加アーティストは韓国のシューゲイズ・バンドたち。既に全米ツアーを成功させたり、アメリカやヨーロッパのメディアなどから絶賛されたアーティスト達が集結。アルバム一枚を通して今の韓国シューゲイザー・シーンがきっと見えてくる。

Mystery Jets / Radlands

徐々に視界の開けていくような音世界。日本でも根強い人気を誇るUKの異端児、Mystery Jetsのおよそ2年ぶりとなるニュー・アルバム『ラッドランズ』。今作では、バンド史上初となるアメリカ・オースティンでのレコーディングを敢行。彼らの原点ともいえる80'sプログレッシヴ・ロック、サイケデリック・ロックの影響を残しつつ、さらにカントリー色も絶妙に交ぜ合わせた、至極のMystery Jets流ポップスが散りばめられた名盤。

Camera Obscura / Let's Get Out Of This Country

メランコリック且つドリーミーな煌めきは、ダニエル・ランドに通ずる部分も。男女混合5人組インディー・ポップ・バンド。パステルズやティーンエイジ・ファンクラブ(現ドラマーのフランシス・マクドナルドはバンドのマネージャーも担当)、ベル・アンド・セバスチャンと多くのバンドを輩出してきた音楽都市グラスゴーにて1996年に結成。2001年にアルバム『Biggest Bluest Hi Fi』でデビュー。どこか懐かしい60年代風の楽曲とさわやかなハーモニー、そしてなにより心の琴線に触れる温かなメロディーで話題に。2nd、3rdがスーパーチャンクのレーベルMERGEからリリースされ、アメリカでも大ブレイクを果たす。今作は、2006年にスペインのエレファントよりリリースされた名盤の誉れ高い3rdアルバムに、5曲のレアトラックを追加収録した貴重なアルバム!

PROFILE

Daniel Land & The Modern Paintersは2007年に英国マンチェスターで、5人組バンドとして結成。その後、レコーディングに2年を費やし、ウルリッヒ・シュナウス、 マーク・ピーターズ(エンジニアズ)の協力を経て、デビュー・アルバム「Love Songs For The Chemical Generation」をリリース。またアルバムから「Within The Boundaries/Benjamin's Room」をイギリスの人気シューゲイズ・イベント"Sonic Cathedral"より7インチシングルとしてリリース。その後、ダニエル・ランドはベーシストとしてエンジニアズに加入。
500年前に作られたコテージでレコーディングされたという今作は、彼が望む透明感、神秘的な世界を見事に表現している。更に今作は現在のシューゲイズ・レーベル総本山と言われ、リンゴ・デススターもリリースしている英国「Club AC30」からリリース。新たに日本盤用にレコーディングされた未発表曲3曲追加し、全編76分以上に及ぶ全12曲入で日本先行発売される。

Daniel Land & The Modern Painters official Myspace

この記事の筆者

[レヴュー] Daniel Land & The Modern Painters

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