11/3 クラムボン @ 両国国技館

満員御礼の国技館で披露された、クラムボンの過去と未来

歴史を感じさせる蕎麦屋の近くに前衛的なデザインの博物館が建ち、遥か遠くには東京スカイツリーを臨む両国。この20世紀の面影と21世紀の風景が共存する不思議な街は、普段は見かけない若者達で溢れかえっていた。昭和の香り漂う両国国技館が、今回のライブの舞台だ。

ステージと客席が見渡せる2階席に座ると、普段は土俵が鎮座している場所に設けられたステージと、それを取り囲む客席が目に入る。メンバー3人が向かい合えるように機材が配置されたステージは、バンドの一体感を重視したマイルス・デイヴィスのステージを髣髴させる構成だ。一方、客席は「白い服を着てくること」という事前のアナウンスに応えた観客で真っ白に染められている。彼らを愛するファンの多さを象徴する光景だ。

この日のステージは、「両国の幽霊」を名乗る噺家、林家彦いちの前振りで幕を開けた。彼は軽妙な冗談で場を和ませ、手拍子で観客を煽りたてる。そうやって会場が暖められたところに、観客の服装と同じ、白い衣装を身に纏った3人が、和服を模した柄のポンチョに包まれて登場した。ネイティブ・アメリカンを連想させる原田郁子の髪飾りが、白い草原に咲く一輪の花のように会場に華を添えている。

ライブのオープニングは2000年にシングル・リリースされた「シカゴ」。伊藤大助の打ち鳴らすタイトなビートに、ミトのジャジーなベースと原田のサイケデリックなピアノが被さる、幻想的な雰囲気とアグレッシブなスタイルが同居した個性的なアップ・ナンバーだ。このあとも、ビートの切れ味が鋭いポップ・ナンバー「パンと蜜をめしあがれ」、ハードなロック・チューン「ドギー&マギー」など高揚感のあるナンバーを立て続けに披露する。最初から全速力で挑んでくる3人に、観客のボルテージも一気に高まる。

原田郁子が「10年以上前の曲だけど…」と恥じらいながら紹介したデビュー・アルバムの収録曲「GLAMMBON」は10年以上の時を経て、よりソリッドなサウンドに生まれ変わっていた。そのあとも、スモール・サークル・オブ・フレンズの名曲「波よせて」 、グリーン・デイのように陽気でパワフルな演奏に、原田のコケティッシュなヴォーカルが冴え渡るアップ・ナンバー「はなさくいろは」など、力強さとキュートさが同居したポップ・ナンバーが続く。マニアックなサウンドを、わかりやすく噛み砕いて自分たちの音楽に盛り込むセンスは、10年かけてさらに成熟したようだ。一方、照明が暗転したステージの上で、しっとりと始まったミディアム・バラード「コントラスト」では、それまでの可愛らしいイメージとは真逆の、原田のヴォーカルの繊細な一面も顔を見せる。アップ・ナンバーでのハツラツとした姿と、バラードで垣間見える可憐な一面、彼女が魅せるこのギャップ、クラムボンが10年以上、多くのファンを惹きつけてきた秘訣なのだろう。

ライブ途中のMCで「お昼ご飯にちゃんこ(鍋)が出た!!」と笑顔で語る彼らは、1万人の観客と対峙するミュージシャンというより、近所のお兄さん、お姉さんといった雰囲気だ。だが、プログレッシブ・ロックのように幻想的なサウンドが心を揺さぶる「KANADE Dance」、シンプルな編成のバンドらしい、各人の演奏を際立たせた「GOODTIME MUSIC」、「はなれ ばなれ」では一転して本格的なロック・バンドの顔に戻る。MCで見せる飾らない姿と、冒険を恐れない音楽性、このギャップがたまらない。彼らの代表曲「サラウンド」ではイントロだけで大盛り上がり。10年前の曲さえも新鮮に聴かせるセンスに、彼らが現在進行形のバンドであることを再確認させられる。この曲のテンションのまま、ライブはエンディングの「Re-Folklore」まで一気に駆け抜けた。

アンコールではほかの二人に先駆けてミトだけが登場。3月の震災直後に作られた「312」をギター一本で披露したほか、観客の反響の多さに”作戦タイム”を設けて、セットリストになかった曲まで披露するサービス精神を発揮。この予想外の展開に、観客も配られた座布団を投げて大盛り上がり。この光景、大相撲でも滅多に見られないぞ。

10年選手らしい貫禄と、いつまでもフレッシュさを失わない3人の魅力が存分に堪能できたステージ。国技館が巨大なライブハウスに感じられる2時間半だった。

text by 高野裕介
photo by Yoshiharu Ota / Masako Iwasaki

クラムボン@両国国技館

2011年11月3日(木・祝)@東京都 両国国技館
OPEN 15:30 / START 16:30

セットリスト

1.シカゴ
2.パンと蜜をめしあがあれ
3.ドギー&マギー
4.ジョージ
5.GLAMMBON
6.波よせて
7.はなさくいろは
8.コントラスト
9.便箋歌
10.ナイトクルージング
11.あかり from HERE
12.KANADE Dance
13.GOOD TIME MUSIC
14.はなれ ばなれ
15.サラウンド
16.NOW!!!
17.バイタルサイン
18.Re-Folklore

アンコール
19.312
20.ある鼓動
21.tiny pride
22.雲ゆき

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筆者について
高野 裕介 (Yusuke Takano)

東京都在住の音楽好き。中学生のときに、電気グルーヴにはまって以来、マリリン・マンソンにTLC、カーティス・メイフィールドにジミー・スミスと、次々に音楽の趣味を広げて今に至る。

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