2011/08/08 00:00

音楽的好奇心を突っつく! 目玉レコードがやってきた!

音楽、映像、アート&デザイン、ダンス、演劇、落語やレクチャーなど、ジャンルレスなライヴ/表現を繰り広げ、夜な夜な実験的な空間を生み出し続ける六本木スーパー・デラックスが主催するライヴ・アーカイヴ・レーベル「目玉レコード」がOTOTOYにてDSD&HQD音源配信をスタート! スーパー・デラックスのキー・マークでもある、印象的な目玉のロゴを掲げた本レーベルは、衝撃的かつ刺激的なライヴを最高音質で配信するというもの。多彩なミュージシャンによる一夜限りのセッションに込められたライヴの熱気や臨場感もまるごとお届けします。記念すべき第1弾は、Hair Stylistics(a.k.a. 中原昌也)とCARREによるユニットHair Care! 溢れ出すノイズをとくとお楽しみあれ。スーパー・デラックスで起こっていることを追いかけるべく、OTOTOYでは今後も目玉レコード作品をピックアップしていきます!

Hair Care = Hair Stylistics(a.k.a. 中原昌也) + CARRE!!!!
Hair Care / Slave To The Nihil-Rhythm
1. Jim Jones the Rhythm
2. The Tachishion
3. Okerattack
4. Slave To The Guitarhythm
5. Frog & The Pudding Sex
6. The (ooh the action...)
7. Don’t Cry - It's Only They Nihil-Rhythm
8. Hair Care

【ファイル形式】
1) DSD+mp3 >>DSDの聴き方はこちら
2) HQD(24bit/48kHzのwav)

【販売価格】
1500円

Recorded Live at SuperDeluxe 2011.04.07
Recorded by Masahide Ando (SuperDeluxe)
Artwork by Masaya Nakahara & MTR (MGMD/CARRE)
© & ℗ 2011 medama records
【DSDとは?】
DSDとはDirect Stream Digital(ダイレクト・ストリーム・デジタル)の略称。音声をデジタル化する方式の1つで、音の細かいニュアンスの忠実な再現を目指して開発されました。DSDは通常のCDのPCM方式とはまったく違う1bitのレコーディング形式で、サンプリング周波数は2.8224MHz(CDの44.1kHzの64倍)にも及びます。奏でられた音と会場の空気が蘇るその音質は、アナログ・レコードのような滑らかさと、デジタルならではの透明度を合わせ持っています。

【ダウンロードに関して】
windowsをご利用のお客さまは、標準の解凍設定、もしくは解凍ソフトによっては正常にファイルを解凍できない可能性がございます。その場合、お手数ですが別の解凍ツールを使用し、再度解凍をお試しくださるようお願い致します。7-Zip(フリー・ソフト)での解凍を推奨しています。
※7-zip http://sevenzip.sourceforge.jp/

また、ファイル名が長く操作出来ない場合や、ダウンロードしたファイルに不備や不明点がありましたら、info(at)ototoy.jpまでお問い合わせください。

ノイズ作業報告の報告

ノイズ・ミュージックと言えば、敬遠する人も少なくない。しかし、結論は急がないで頂きたい。ジョン・ケージは彼の仕事において、無音など存在しないこと、我々の体内も含めたこの世界にはあらゆる音が絶え間なく発音し続けられていることを発見した。我々は常にノイズに囲まれて生活しているし、あらゆる音がノイズに成り得る。と同時に、注意を払うべき音にもなりうる。私が子供の時分、夕暮れ時にはよくピアノの練習する音が各家庭から漏れ聴こえて来た。そう言えば、電子ピアノの普及のせいか最近はあまり聴こえて来ない。いずれにしても、今まさに眠りたい不眠症患者にとってはあの音も雑音である。要は心の持ちようであるし、あなたの耳がどれだけ解放的になれるかだ。あらゆる音は等価であり、メロディーはその配列に過ぎない。いや、心地良いメロディーというのは確かに存在するのだが、それと同じ様に「良い音」というのも存在する。注意深くその一音に耳を傾ければ、大体の音はかっこいい。心地良いメロディーは、それがわかりやすい配列にあるというだけだ。ギターやサックスの音と同じく、鉄板を叩く音、マッチをする音や巨大工場の機械音、密室の中の空調音にだって、それぞれの持ち味がある。私にとってのノイズ・ミュージックは、そういった普段は我々が疎ましく思う音や、意識の外側に存在する音の魅力を顕在化させる作業報告である。

Photo by Ujin Matsuo

Hair Stylisticsこと中原昌也とCarreによるユニット、Hair Careのライブ音源である本作も、改めてそういった魅力に気付かせてくれる報告書になっている。前半はドローンを基調としながらも、インダストリアルなアプローチになっていて、Throbbing Gristleを彷彿させる。3曲目は、暫し音の戯れ合いの後に恍惚とした電子音のループ。Fenneszの普及の名作『Endless Summer』と同じく、8月の残暑の午後に是非エアコンの下で体感して頂きたい。大丈夫だ、電気は足りている。4曲目〜5曲目の暴力的な時間もサーフしてみれば、スリルのあるビッグ・ウェーブである。波に乗り切った後に来る6曲目は、なんとも軽快、ビール片手に踊るブルースの様。『ノイズ・ブルース・ブラザーズ』なる映画があれば、必ずやサントラに入るだろう。大丈夫だ、そんな映画はない。7曲目は、叫び声とビートが特徴的。この音の前にあっては、産業ロックの叫び声なんてウィーン少年合唱団の様である。そして、圧巻は最後の8曲目。極悪な雰囲気漂うシンセベースの様なウネウネした低音が、まずかっこいい。それにしても、悪そうな低音ほど実存的な音はない。そこに飛んでくる種々のノイズ達。衝突、拮抗、離散の繰り返しが、それぞれの音の魅力を引き出しあっている。

Photo by Satomi Yamauchi

とは言え、果たしてこの音楽について語ることがどれだけの意味を持つのか。そこには書いている本人でも、多少の疑念が残る。ノイズ・ミュージックを理解したいと思えば、只ひたすらにあなたの耳を固定観念から解放し、そこに漂う音を純粋に聴取するのが一番良い。そもそも理解ではない。観念で聴いてはいけない。この世界はあらゆる音に溢れていて(「無音」もまた、他の音があるから無なのである。)、それはとても素晴しいという経験を得れば良いだけだ。一つ言えるのは、本作も必ずやその手助けになってくれるということである。あと家の外で子供達がとてもうるさい時、そこはマンションの廊下で(しかもすぐそばに公園があって)明らかに遊ぶ場所ではない時、そしてあなたがどうしてもそれに寛容に慣れない時、Merzbowの『Pulse Damon』をいつもより大きめの音でかけてみて欲しい。これも私の経験だが、静かになる。(text by 木村直大)

PROFILE

Hair Stylistics
中原昌也によるソロ・プロジェクト。80年代末から「暴力温泉芸者」名義で音楽活動を続け、日本以外での評価も高い。97年からユニット名を「Hair Stylistics」に改め活動。2004年に待望のアルバム『custom cook confused death』を発表。08年から09年にかけては12ヶ月連続アルバム発売、そして昨年からは手づくりCD−Rのシリーズのリリースを開始して、現在既に50枚を超えている。

CARRE
NAGとMTRによる腐敗インダストリアルミュージックデュオ。

>>CARRE / MGMD Web

目玉レコード
麻布十番の倉庫デラックスを発展させ、2002年に六本木にスーパー・デラックスとして移転。スーパー・デラックスでは若手からベテランのミュージシャンによるライブだけでなく、映像、アート&デザイン、ダンス、演劇、落語、レクチャーなど様々な公演が行われてきました。日本のみならず海外の著名なアーティストも頻繁にライブを行い、実験的な表現の場としても発信中。これまで毎晩繰り広げられたスーパー・デラックスならではのライブからセレクトし、「目玉レコード」として多彩なミュージシャンによる一夜限りのセッションをリリースします。

>>スーパー・デラックス official web

[レヴュー] Hair Care

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