2010/06/26 00:00

変貌を遂げた!!!(チック・チック・チック)が、新たなパンク・ダンス・チューンを引っさげやってきた! 前作『Myth Takes』から約3年ぶりのリリースとなる本作は、共同プロデューサーにエリック・ブルーチェック(LCD Soundsystem、Juan MacleanやHercules & Love Affair等を手掛ける)を迎えて制作された。紆余曲折しながらも、根底に流れる血は変わる事はなく、聴く者全てをダンス・グルーヴの鍋に放り込む。しかしあくまで歌心を失わず、全体的にポップに仕上げている所が、ミュージシャンとしてのポテンシャルの高さを伺わせる。見事なダンス・ミュージックの職人技である。次々と新たなダンス・チューンを生み出す!!!の現在をどうぞ。踊り過ぎ注意!!

事実を受け入れる強さと覚悟

!!!が世に知られ始めた頃、ハードコアに出自を持ちながらも帰属意識としては居心地の悪さを抱え、インディー・ロック的なコミュニティにいながらファンクとダンス・ミュージックをプレイするという折衷性を持ったバンドは居なかった。彼らがインディーとダンスをブリッジさせようと奮闘していたその頃に多くのリスナーはその事実に目を向けなかったが、今の世界においてインディーとダンスの接合はごくありふれたものになっている。特に!!!の功績だとも語られることなく。単に先んじ過ぎたのか敢えてなのか、彼らは自分たちの主張が受け入れられにくい時にこそ激しく主張をアジテートし、それが受け入れられるようになるとその主張を潜める。彼らの歩みを振り返るとそんな風に感じられたりもしなくはない。

5曲目のトラック「Steady As The Sidewalk Cracks」にある<でも俺からしてみれば、昔から変わらない気がする 唯一変わったのは俺達がページをめくった事 まぁあの時の占いは今日の事を言ってたんだな>というリリックを今作でも一聴して感じたのは、「何かに抑圧されている」「解放されたい」と願いながらもそれを主張するわけではなく、またダンスという身体性によって導かれているのは「忘却」ではなく、「深い思索」であるような、そんな感覚。

ライブでは存分にヒプノティックな彼らだが、スタジオ作品においてだからか、殊更にその内省は強まっているように思う。サウンド的には装飾的な部分は極力排され、以前よりもベース・ラインが際立ち、音にスペースが出来たことで、よりうねるようなグルーヴを獲得し、洗練の極みに達しているまた今作は楽曲一つ一つがコンパクトにまとまっており、冗長さも感じさせない。ニック・オファーは今作について「よりソング・ライティングにフォーカスした」と他誌のインタビューで語っているのがそれを示しているだろう。ただこのミニマル・テクノの意匠を持ったレコードがトランスを促すことへの禁欲性を感じさせるのはいつもながらに言葉数が多いことだけではなく、リリックに漂う物悲しさに『Me and Giuliani Down by the Schoolyard (a true story) 』に代表されるように政治的な表明を直接的に示していた頃から比べても、リリックはパーソナルさを段々強めていっている。

周りの友達とただ楽しむ為に始めたものがただ楽しみだけでは続かなくなったこと、そしていくつかの別離への複雑な思いが綴られている。<君がここに居ればとは思わない 俺はあの頃に帰りたいなんて思わない なんでかわからないけど、そう思うんだ >(「Even Judas Gave Jesus A Kiss」)。アルバムを通してリリックからは「自分ではコントロールしえないこと」への幻滅が感じられる。しかし、常に自らのポジショナリティーに自覚的ゆえに不安定であるというミドル・クラス的な感覚こそが彼らを常に両義的な存在にしてきたとも言えるのだ。そして今の彼らは自分たちの両義性を正確に理解されないことへのいらだちを乗り越え、その事実を受け入れる強さと覚悟を身につけているように見える。それが決して諦念でないことはアルバムの中でも最もダンス・ミュージックらしく、言葉が陶酔感を邪魔しない最終曲「The Hammer」で繰り返されるリフレイン、「ドント・ストップ カム・オン アイ・ドント・ストップ」というフレーズにはっきりと示されている。!!!はギャング的な集まりではなく、より強固なミュージシャンとして確かな一歩を改めて踏み出した。(text by 定金啓吾)

ダンス・ミュージックとポップの融合

ブラジル、サンパウロ出身の5人組ロック・バンド"CSS"。iPod TouchのCMを契機に大ブレイク。FUJIROCK FESTIVAL 2008にも出演し、会場をヒートアップさせた彼らの最新アルバムが全曲配信解禁!!!思わずリズムを刻んでしまうサウンドとなっています。

英BBC SOUND OF 2010 ノミネート! ブリティッシュ・アンセムズのギグも大盛況のうちに終了!! カニエ・ウェストもブログでピック・アップ! 12 月6 日、ブリティッシュ・アンセムズでアルバム発売に先駆け衝撃デビューを果たした2010 年最もホットなニューカマー、トゥー・ドア・シネマ・クラブによるデビュー・アルバムが遂に到着!!

80'sダンス・ミュージックやNEW WAVEの要素を取り入れたロックを奏でる3人組のデビューアルバム。本領発揮? はたまた悪ふざけ? ギリギリのジョークにキワキワのセンス、と賛否両論な全11曲。強烈な魅力を放つダンサブルなロックはまさに、ロック+トランス=“ロッカトランス”という新しさ!

PROFILE

1996年、カリフォルニア州サクラメントで結成された<ワープ・レコーズ>所属のロック・バンド。2004年にセカンド・アルバム『LOUDEN UP NOW』をドロップ。その後、多数のメディアがベスト・アクトと大絶賛したフジロック・フェスティバル'04、そして同年秋に行われたエレクトラグライドにも出演し、独自のグルーヴ感を備えたディスコ・パンク・サウンドと壮絶なテンションのステージングにより、オーディエンスを熱狂の渦に叩き込んだ。そして2006 年にはレッド・ホット・チリ・ペッパーズのツアー全公演にサポート・アクトとして帯同し、全世界が注目する最重要バンドへと成長、大ブレイクを果たした。2007年1月に約2年半振りとなる待望の最新作『MYTH TAKES』をリリース、その圧倒的なエネルギーの放出量、あらゆる音楽を野蛮なまでに吸収したオリジナリティ溢れるグルーヴに磨きをかけた大傑作を引っさげ、直後の単独ジャパン・ツアーをソールド・アウトさせ、それを手土産にフジロック・フェスティバルに帰還。グリーン・ステージをまたもや狂喜乱舞させた。メンバー・チェンジを経て、現在6人編成となった新生チック・チック・チックだが、あの自由奔放なスタイルは健在。<ワープ・レコーズ>の20周年を祝う昨年のエレグラWarp20(幕張メッセ)において、ライブ・パフォーマンスとは何たるかをまざまざと見せつけた。

この記事の筆者

[レヴュー] !!!

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