2010/04/27 00:00

美しいコズミックなジャズ。胸躍るダブステップ。 心を落ち着かせるハープ、ディープなグルーヴと疾走感を生むサンダーキャットのベース、チリチリとざらついたどこか肌のぬくもりを感じさせる感触すら残す電子音。美しく昇華していくような47分間、この音楽に耳を傾けることであなたは様々な「宇宙」を体験することが出来る。

リスナーに「新しい音を届ける」という、現代においてより困難な命題に取り組むべく、オウテカがエレクトロ・ミュージックにおいてマントロニクスの先の世界を探求したのだとしたら、フライング・ロータスはジェイ・ディラの先のビートを探求しているのと言えるかもしれない。しかし、彼が影響されたのは狭義のヒップホップやエレクトロニック・ミュージックだけではないだろう。『コズモグランマ』において美しくブレンドされたアナログとエレクトロニックのバランスからそれは伺える。

このレコードは少しばかりカオティックな電子ノイズから始まる。東洋的な響きを持ったハープが、一気に疾走感のある次のトラックへ誘ってくれる。そのビートはプレフューズのそれを思い出させなくもない。そして、このレコードはトラック毎に区切れ目が無く、最後まで一続きのトラックとして構成されている。あからさまなハイライトを持ってくるのではなく、あくまでも全体を通してリスナーの耳を優しく深くマッサージしてくれる。中盤に掛けて、トラックはスロー・ダウンし、メランコリックさを増す。それはまるで深い思索に沈み込んでいくような感覚だ。そして終盤にかけ再び疾走感を増し、うねるようなエレクトロニック・ビートとジャジーなオーガニック・サウンドが同居したまま高みへと昇っていく。その過程の中で、全体の印象を特徴付けているのはミゲル・アトウッド・ファーガソンが手掛けるハープのサウンドだ。

よくブラック・ミュージックは「宇宙」を目指すと言われる。それは歴史的にディアスポラ的なポジショナリティーを余儀なくされた背景がある中で、彼らが見出した、いわば観念的な理想郷のことでもある。サン・ラーしかり、叔父であるコルトレーンしかり、そしてフライング・ロータスもそれは同じである。ただ「宇宙」への道筋がどのように描かれるかはアーティストによってまちまちだ。このフライング・ロータスことスティーブン・エリソンの描く2010年ヴァージョンの軌道は、この10年間のエレクトロニック/ビート・ミュージックの最良の実りを通過している。よく引き合いに出されるジェイ・ディラも、今最高の季節の真っ只中にあるダブステップにもあなたを立ち寄らせてくれるだろう。そこではダブステップにはないキラキラした楽観性も見出すことさえ出来る。勿論メランコリーも忘れてはいない。叔母であるアリス・コルトレーンは信仰に音楽を捧げた。そして30年後の今、フライング・ロータスは可能性という銀河に音楽を捧げようとしている。(text by 定金啓吾)

再来日決定!!!

フライング・ロータス、初のヘッドライナー・イベントとなるクラブ・ツアーで待望の再来日決定!!!自身のレーベルをイベント・タイトルに冠した「BRAINFEEDER」堂々開催。コズミックでソウルフルなビートの洪水が激しく脳と体を揺さぶる、宇宙の果てへの未体験ビート・トリップ!

FLYING LOTUS presents BRAINFEEDER
featuring
FLYING LOTUS
SAMIYAM
THE GASLAMP KILLER

2010/05/28(金)@TOKYO 西麻布eleven
OPEN/START 22:00 *All Night
GUESTS : O.N.O、QUARTA330、DJ DUCT、MONKEY_SEQUENCE.19
20歳未満入場不可 / 入場時にIDチェック有り、要写真付きID持参
You must be 20 and over with photo ID
[TICKET]
前売 : ¥4,500(1drink付)
BEATINK Online-Shop "beatkart" / チケットぴあ(Pコード : 101-065) / ローソンチケット(Lコード : 72732) / e+ / disk union各店 (渋谷店 / 新宿 / お茶の水の各クラブミュージックショップ / 下北沢 / 吉祥寺 / 柏 / 北浦和) / HMV渋谷 / Onsa / TOWER RECORDS (新宿店 / 渋谷店 / 秋葉原店) / WENOD

2010/05/29(土)@OSAKA TRIANGLE
OPEN/START 22:00
GUESTS : 近日発表
[TICKET]
前売 : ¥3,500(1drink代 別途¥500)
当日 : ¥4,000(1drink代 別途¥500)
INFO : TRIANGLE 06-6212-2264 http://www.triangle-osaka.jp

2010/05/30(日)@KANAZAWA MANIER
OPEN/START 未定
GUESTS : 近日発表
[TICKET]
前売 : ¥3,000
当日 : ¥3,500
INFO : MANIER 07-6263-3913 http://mairo.com/manier/

TOTAL INFO : BEATINK 03-5768-1277

Flying Lotusへの日本からの解答

RE.PEAT / SU:
コンポーザーのSu+3(Sampler、FaderBoard) 、masa44 (Bass) 、01 (Drum)からなる3ピース。J.ディラ以降のトラック・メイカーのトレンドである、コズミックな音色のシンセを随所に取り入れたトラックに、ボーカル・サンプリングや生演奏の挿入を試みたスタイルを取っている。8月5日リリースの1st ALBUM『Re.PEAT』より、先行で「Deep」をフリー・ダウンロードできます。

SU: インタビュー by 西澤裕朗 : https://ototoy.jp/feature/20090730

Resonant DIM / Geskia!
Geskia! 新インストEP 2ヶ月連続配信の第二弾。2009年8月に豪華MC陣を招きリリースされ話題を呼んだGeskia!「President IDM」の素材を再構築し全く新しいインスト・アルバムに生まれ変わりました。 全エレクトロニック音楽ファン必聴です! オトトイでは綿密に組み込まれたブレイクビーツ・サウンドをHQD高音質配信です。

Geskia! インタビュー by 西澤裕朗 : https://ototoy.jp/feature/20090819

BE BO DA / uhnellys
uhnellys新作ミニ・アルバム! 今作はなんとunkie/ロザリオスなどでベースを担当するTOKIEが初プロデュース! さらに全曲でアップライト・べースで参加した傑作が誕生!!!

uhnellys 『BE BO DA』特集 text by 西澤裕朗 : https://ototoy.jp/feature/20091222

Flying Lotus PROFILE

L.A.シーンに突如出現した希代のビート・メイカー/プロデューサー、フライング・ロータスは<ワープ>移籍後にリリースしたEP『Reset』(2007年)、新時代のビート・ミュージックの先駆けとして各方面から多大な評価を集めたワープ・デビュー・アルバム『Los Angeles』(2008年)によって、その後世界中で同時多発的に勃発し、波及していくこととなるビート・ミュージック / ベース・ミュージックにおける鮮やかな革命の礎を作り上げた。その後、3部作となる(話題の)プレミア12"リミックス・シリーズ『L.A. E.P』によって(ここ日本においてはエレグラWar20来日を記念し、1枚にまとめた『L.A. CD』としてアルバム・リリースされている。)、シーンを急速な成熟へと向かわせたのは言うまでもない。数多のフォロワーを生み、当時の予想を遙かに越えた衝撃を世界の音楽シーンに与えたロータスのブレイクによって、更なる注目を集めたL.AのLOW END THEORY(ロウ・エンド・セオリー)周辺のみに留まらず、多彩なビートを打ち鳴らす新世代のフレッシュなビート・メイカー達が世界各地でほとんど同時期に一斉に出現。新たなシーンを形成していく中、ロータスはその中心人物として、ビート・カルチャーの寵児として、そして最も旬なアーティストとして、エレクトロニック・ダンス・ミュージックだけでなく、全てのジャンルの熱心な音楽ファンから常にその動向が注目を集めた。

この記事の筆者

[レヴュー] Flying Lotus

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