Limited Express(has gone?)を率いるJJこと飯田仁一郎は、当recommuniのチーフ・プロデューサーでもあり、目下進行中のイベント「BOROFESTA '09」の主催者でもある。寝る暇もなさそうな日々なのに、Limited Express(has gone?)は5年ぶりの新作『LTD』を発表した。いつもはインタビューする側だが今回はインタビューされたい、という彼から、紆余曲折の5年とバンド、そしてBOROFESTA、recommuniへの思いを忌憚なく語ってもらった。

インタビュー&文 : 今井智子

INTERVIEW

ー飯田君はrecommuniでは、いつもインタビューをする側ですよね。

はい。僕が必ずインタビューで訊くのは、「音楽を創ることに終わりはあるのか? 」。今井さんはそのことについてどう思いますか?

ー「終わりがないから皆さん創り続けているのでは?」 と思います。飯田君はどう思いますか?

あるかどうかは解らないですけど、終わりが欲しいかといえば欲しいです。どこまでも追求できるし、完成しても満足することのない、厳しい世界なので(笑)。でも常に新しい事をしたいので、いつも葛藤しています。

—「自分の音楽は誰も表現したことのない新しい音楽なのか? 」と自分自身に問い始めると、楽曲制作が進みづらくなるのでは?

以前はそういう時期もありましたね。ファーストの頃は“世界中のどこにも鳴っていない音”を創ろうと思っていました。セカンドでは“自分たちの新しい音楽”を鳴らそうと考えていました。今作では“リミテッドは何をしても新しいものが創れるんだ”って事に気づきましたね。解散を機会に色々なアーティストとバンドを組んでわかったのは、リミテッドだけは自分のイメージしている範疇を超えた全く違うものが出来上がるので、僕にとっては毎回新しいんです。

—この5年のブランクっていうのは、それを模索していたということですか?

常に模索はしているんですけど、新しい3人としての着地はまだできていません。新作は復活後の3年間の軌跡を音に残したという感じ。実は、今回ジャケットなどのヴィジュアルに悩みました。というのは、以前はリミテッドは音楽好きのポップ・アイコンでいいと思っていたんです。例えばスーパーカー、buffalo daughterやコーネリアスのように。でも、年齢を重ねていくうちに、そういうのはもういいかなと思ったんです。そうするとビジュアルがわからなくなった。というかどうでもよくなりましたね(笑)。それに合わせて、少しずつライブの派手さも減ってきているんですよ。

—(笑) みんな大人になったから?

単純にショー・アップが嫌になったんです。海外に行くと、国内以上に派手さを求められます。海外の時は非日常感があるので、多少派手にライブをしても自分達的にありなんですけど、国内で派手にショー・アップをしてライヴをするとリアリティがどんどんなくなる気がして・・・ ただのショーになってしまう気がするんです。

—以前はリミテッドといえば脚立を出して上ったりとか、そういうショー・アップした部分も大きかったと思いますが、今は演奏オンリーでいきたいと?

音楽で満足させたいですね。パフォーマンスを意識しすぎると結局過剰になってしまう。過剰なパフォーマンス・バンドにはなりたくないし。

—私のイメージだとリミテッドはアメリカン・オルタナティヴ、特にソニック・ユースに通じるものがあると思うんです。ベースとギターのコンビネーションから、ポップな楽曲、ギミックの効いたライヴをするところとか。そういう意識は自分たちではありますか?

もちろん大学時代は大好きでした。でも、音楽というよりもソニック・ユースやジム・オルークが騒いだからこれはいい作品だとか、そういう風評になった。それで、急に冷めちゃったんです。今回色々とジャケットに関して悩んだ時に、ベースのゆかりちゃんとデザイナーさんがソニック・ユースの『Goo』のジャケットを持ってきて、こういうシンプルなデザインでいきたいって言ったんです。その時に何年ぶりかにソニック・ユースの偉大さに気づきましたね。

—ソニック・ユースを音楽におけるパフォーマンスとリアリティで考えると、彼らはものすごく現実感をもってライヴをするじゃないですか? リミエキもああいう所に進もうとしているのではないでしょうか?

そうですね。彼らのパフォーマンスは、日常的でリアルだと思います。派手な事をしても、そうじゃなくても使うエネルギーは変わらないから。音に関しては大分自信がついてきて、何をやってもリミテッドは新しいんだという気持ちで、解き放たれた感じがしています。相変わらず曲作りのときは必ず喧嘩をするんですけどね(笑)。

—こういうエネルギッシュな曲を創るには、そういうパワーも必要なんだろうなとは思いますね(笑)。そういう大変さはあるとしても、今回収録された11曲はあまり煮詰まらずにどんどん創れていった感じですか?

奇をてらわなくなったので、曲作りは早くなりました。面白い部分があればそれを曲としてしっかり構成できればいいと思っているので、どんどん曲の長さが短く、シンプルになっているんです。

—今回は谷口順さんと竹久圏さんのダブル・プロデュースが一つのポイントのようですが?

前回Less than TVの谷口さんに、3曲だけプロデュースしてもらったんですけど、その時に次はアルバムを絶対にやってもらおうと思ったんです。KIRIHITOの圏さんは昔から大好きだったという事と、新作が出てちょうどタイミングがよかったのでお願いしてみました。その二人は一緒にyounGSoundsというバンドもやっているので、一つのアルバムがダブル・プロデュースでも上手くいくと思って。大御所二人に頼みつつも、全体的な絵は僕等で描きました。

—お二人の役割分担はあるんですか?

曲は別々なので、そんなに役割の分担はなかったんですけど、谷さんはリミテッドのロー・ミドルのパンクっぽいスピード感を出してくれて、逆に圏さんはダブの要素を持っている人なので低音部分をしっかり出してくれました。そうすると必然的に勢いのある部分と、聴かせる部分とバランスがとれていきましたね。

ー前作からの5年で、変化したことが大きいようですね。

僕自身が大きく変わったような気がしますね。5年前よりも今の方がめっちゃ忙しくて、しんどいんですけど、ものすごく音楽を楽しんでいますね。それは、売れたいという鬼気迫る感情から、少し解き放たれた部分がありますね。

—今は売れたい欲求はない?

欲求はあるんですけど…。実は解散の要因に僕の借金が膨らんだという事もあるんです。当時、アルバイトをする時間もなく、バンドだけはコンスタントに活動していて、どんどん借金が増えて。そうすると異様に売れたいと思い始めるんですね。それがサウンドに無意識に影響していたと思うんです。特に自分が少し器用で音楽に詳しかったので、過剰にそういう部分を取り入れたり、考えたりしていた。さらに自分はバンドのプロデューサー的な立ち位置だったので、他のメンバーにギャラを払ってあげたいとか考えだすと、かなりきつくて。で、一度止まるしかなくなったんですね。それで、復活した時に何となく僕とゆかりちゃんが二人とも考えていたのは、もう少しだけ楽に音楽をしようと。まずはメンバーで音を出せる喜びをかみしめようと思ったんです。そうすると、僕は生活をしなくてはいけないので、ちゃんと仕事をしながら音楽をするスタイルを手に入れて、ゆかりちゃんは子供を産んで育てながら続けると。ただ、決してあきらめたわけではないんです。CDは売りたいしお金が入ってくればいいんですけど、無理して職業ミュージシャンになりたいとは思いません。

—今は純粋に音楽に接する事ができて、表現ができるという事ですか?

そうですね。アメリカでDEERHOOFに出会ったときに、彼らは音楽で世界中を回りながら生活をしていたんです。「なんで君らは生きていけるんだ? 」って聞いたら、「アメリカでは、厳しいけれど、結構そういう人はいる」と言っていた。でも日本のロック・フィールドで新しくて面白い音楽をしている人たちは、音楽で生活をしていけない状況・・・。それで日本に帰ってきて、もっとそういう人たちが音楽で生きていけるような土壌を創りたいとおもってボロフェスタを始めたんです。解散した後も音楽関係の仕事がしたくて、東京に出てきたんです。なので、リミテッドの活動と平行して自分が面白いと思える音楽たちが、もっとポピュラリティを持つことができるような手助けをする仕事ができているので、充実していますね。

—そういう活動は、リミテッドをやるモチベーションに影響するのでしょうか?

まずリミテッドがあるからボロフェスタや他の活動があると思います。リミテッドがちゃんと発信できているから、僕の周りの面白い音楽も発信できている。だからリミテッドが活動全体の牽引力になっているし、パワーを持っていなかったら、僕はただうるさい事を言っているだけの奴になっちゃう(笑)。

—そうするとrecommuniでやっている事と、リミテッドの関係はどうですか?

少しリミテッドとは離れるんですけど、僕は京都で9年間レコード屋で働いていたんです。CDの売り上げが下がっていくのを目の当たりにして、次は配信だって思ったんです。音楽が変わっていく時代の真ん中にいて、CDだけじゃなく、配信っていう方法もあるんだという状況を伝えていく作業はすごく楽しいですね。まあ何をやるにしても現場にいたいんですね。

—飯田君は常に発信する人間でいたいということですね。自分が色々と見つけて、インプットしたいし、アプトプットしたいと。その中にリミテッドもrecommuniもある。

ロック・スターよりは断然、発信し続ける人間になりたいですね。わらじを履きすぎて大変ですけど、こういう音楽って誰かがボロボロになって死なないと変わらへんと思っていますから(笑)。

ーそれだけ音楽と向き合うことに集中してるということですね。

いろんな向き合い方はあるけれど、誰よりも集中している自負はありますね。

STORY WRITER 創刊

現場で盛り上がっているリアルな音楽シーンを切り取ったファンジンが創刊されました。ライター編集長はレコミュニでもお馴染みの西澤裕郎。Limited Expres(has gone?)、KIRIHITO、ECDという3組のアーティストに焦点を絞り、読み応えのあるインタビューとレビューを掲載。下記の店舗で絶賛発売中です。

タワーレコード新宿店 / ディスクユニオン各店舗 / 小岩BUSHBASH / sunrain records / 京都ガケ書房 / 京都JET-SET / TOOSMELL RECORDS / WARSZAWA / TSUTAYA 西院店
※京都では、ボロフェスタでも販売致します。

LIVE SCHEDULE

  • 10月17日(土)【BOROFESTA】@京都KBSホール
  • 11月6日(金)【DRIVE TO 2010】@新宿LOFT

Australia tour with Ni-Hao!

  • 23rd of October (Friday): Limited Express (has gone?) @ Valley Fiesta, Brisbane (main stage)
  • 24th (Saturday): Ni-Hao! @ Valley Fiesta, Brisbane (second stage)
  • 25th (Sunday): Limited Express (has gone?) @ Valley Fiesta (second stage)
  • 28th (Wednesday): Limited Express (has gone?) and Ni-Hao! @ Hopetoun Hotel, Sydney
  • 29th (Thursday): Limited Express (has gone?) and Ni-Hao! @ another sydney venue, to be confirmed.
  • 30th (Friday): Fly to Melbourne - Limited Express (has gone?) and Ni-Hao! @ The East Brunswick Club, Melbourne
  • 31st (Saturday): Second Melbourne show - Halloween party!

『LTD』Release party!

  • 11月15日(日)@六本木SuperDelux

w / あふりらんぽ / FOE / younGSounds / DJ 西村道男(Nur.)

PROFILE

Limited Express (has gone?)
2003年、US、ジョン・ゾーンのTZADIKから1st albumをリリースし、15カ国以上を飛び回る。その後、高橋健太郎主催のmemory labより、2nd album、best albumをリリース。WHY?、NUMBERS、そしてダムドの日本公演のサポートを行うなど、名実共に日本オルタナ・パンク・シーンを率先するバンドになるも、2006年突然の解散宣言。半年後、突然の復活宣言。なんとニュー・ドラマーには、日本が誇るPUNK BAND、JOYのドラマーTDKが正式加入!!! メンバーのJJは、ボロフェスタを主催。YUKARIは、ニーハオ!のリーダー等、各人の活動は多岐にわたる。2008年6月11日DODDODOとのsprit albumをLess Than TVからリリース。そして2009年、待望の3rd albumをリリースする。

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筆者について
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