やりたいこと=ロックンロール。00年代末、世界の謎を解く『みんなのうた』がここにある!

recommuniのインタビューとしては2回目。
vo.平井正也は、自分のために歌を歌っていると断言する。しかしその歌はなぜか個人の問題としてリスナーに刺さってくる。今回も「世界を変える」と信じる彼の言葉は大げさな言葉にも解釈できるし、悪く解釈すれば反発を覚える人もいるかもしれない。でもそんな人にこそ、彼の言葉を読んでみてほしい。怖さで人を動かすのではなく、ハッピーな気持ちで世界を変えるというやり方を今だからこそ信じてもいいのではないだろうか?

インタビュー & 文 : 南日久志

→アルバム購入者限定 未発表弾き語り音源「東京」はこちらから

ただ好きなことをやってるとしか説明できなかった。

—タイトルがまず、すごいですね! ここまで言い切ったものってなかったと思うんですが。

すごい時間かかったんですよ。始めから目指していたところは変わっていないと思うんですけど、それが何なのかはわかってなくて。ようやく「あ、これはロックンロールなんだ」ってことを、気付いたというか・・・ 覚悟したっていう感じですね。これまではロック・バンドだぜ! みたいな雰囲気に対してアレルギーがあったというか、素直にかっこつけるのはかっこ悪いというか・・・

—「ロック」とはいいたくなかった?

ロックンロールって言ってもいろんなとらえ方があると思うんですけど。・・・ というかいきなりアルバムの核心の部分にいっちゃうんですけど(笑)。高校まで新潟の実家にいてテレビから流れてくるものしか聴いていなくて、全然音楽に詳しくなかったんです。それが大学の寮に入った途端、先輩からものすごい量の情報が入ってきた。ジャックス、はっぴいえんど、遠藤賢司、ボブ・ディランやニール・ヤング・・・ それによって同時代的なものに対してすごいアレルギーがでちゃって興味がなくなってしまったんです。その時リアルタイムでロックンロールって言われているものを嘘っぽく思うようになっちゃって。結成が96年で13年やってるんですけど、その間自分の音楽が何なのかっていうのがわからなくて、いやわからないふりをしてたのかな? ただ好きなことをやってるとしか説明できなかった。

—じゃあ以前は「ロック・バンド」って言われることに対しても抵抗があったんでしょうか?

ありましたね。「かっこいい」って言われることにすら、抵抗感じてました。「何て言っていいかわからないけど、なんかすげえ! 」とか。大事な事を思い出す気持ちとか、そういうのがしたかった。でもそれに名前をつけるとしたら、ロックンロールとしか言いようがなかったんです。「これ以上話すことはありません」ぐらいの感じになっちゃったけど(笑)。ロックはそうじゃないよって誰かがいうなら、その人にとってはそうなのかもしれない。でも自分にとっては、世界が変わるくらいの力を持っているんです。

—今回のアルバムはリスナーに対して「それでお前はどうなんだ」って問いかけるような印象を受けたんですが。

僕は人にこうなんだよっていうつもりは本当にないし、じゃあ何のために歌ってるかというと自分のためにしか歌っていない。僕らを好きになるかもしれない、どこかの人のためには歌っていなくて。人のことなんてわからないし。自分が本当だと思っていることを確かめるために歌っているというか・・・ それを受け取ってくれた人はどう思ってもらってもいいんだけど、その人にもう1回再生してほしいですね。僕たちは全部言ってないから。例えば僕のなんとかって曲がいいなって思ったとしたら、その人が作ったのと同じだと思うんですよ。僕の歌をキャッチしてくれたってことは、もう発信してるのと同じだと思う。歌はただのきっかけだから。ブルーハーツが好きっていったら、憧れてるという感覚ではなくて、自分もブルーハーツなんだなっていう。

—先ほど平井さんは自分のために歌っているとおっしゃっていましたが、このアルバムはリスナーのために、昔自分と同じ境遇だった人に対して歌っているように聴こえます。

そうだったら嬉しいですね。今回のアルバムには入ってないんですが、「僕の彼女は安い石鹸で顔を洗う」って歌う『石鹸』って曲があるんです。すっごい小さい世界の話じゃないですか。でも、その歌を聴いてくれた人が、自分の彼女の事や大事な事を思い出したりしてくれるのが、それが僕の考える音楽の力なんです。僕は僕のことしか歌わないけど、あとは君が、君の歌を歌ってください、みたいな。そんなことを思い出してくれればいいなっていうやり方なんです。

本当にやりたいのに、それが叶えられないようなそんな世界じゃねえって信じてます。

—次のイベントは新代田FEVERで、規模も拡大してますよね。ついに曽我部恵一BANDとの対バンで、彼らも自らのレーベルROSE RECORDからCDを出したり店をやっていたりZINEを出したりとか、ご自身の活動とかなり共感するところも多いんじゃないでしょうか?

ほんと曽我部さんと共演できるのはめちゃめちゃうれしくて、大学1年生の自分に自慢したいです! でも不思議じゃなくて、好きなことやってるから好きな人と会うのは当然だと思う。好きなことやってなかったら好きな人に会えないわけだし。「やっぱり間違ってなかったんだ」って思いますね。

—アルバムの5曲目『かっこいいこと言おうとしてた』で「できること・やりたいこと」っていうフレーズがあるじゃないですか。一般の人からしたら、やれることとやりたいことは分かれていて、やりたいことがあってもなかなかそっち側に振り切れない人もいると思うんです。平井さんはロックンロールで、俺はこれでいくんだという決め手になった瞬間とかってあるんですか?

その曲は、夢とかやりたいことに対する考え方がそのまま出た曲なんです。一言でいえば「夢は絶対叶う」っていう曲。っていうのは叶わないことなんか、やりたいって思うわけないんです。直感的にできるとわかるから、やりたいって思う。なんで出来ない事があるかっていうとそれはやりたいことじゃないからなんです。本当にやりたいのに、それが叶えられないようなそんな世界じゃねえって信じてます。俺絶対叶うと思うな。いつ叶うかわからないけど、続けてれば。なぜやるかっていうと、面白かったり、楽しいからじゃないですか。面白くて楽しい以上、やめないじゃないですか。そうなると一直線上に夢はあるんだけど、その一直線上にいる以上、叶ってても叶ってなくても同じなんですよ。ゴールはあるんだけど、その道筋に立ってたら、着いてても着いてなくても一緒で。だから俺いま最高に楽しいんですよ。

—じゃあ、着くことは、究極的にはどうでもいい?

どうでもいいというか、着いたも同然みたいな(笑)。楽しいじゃないですか。その楽しさって今自分がどの辺にいるかとは関係ないんです。人の直感てすごいと思うんですよ。やりたいっていうのは、それができるからサインが働いて、やりたくなるんだと思うんです。すっごいがんばったのに夢はかなわなかったっていう人がいたとしたら、本当はやりたくなかったんじゃないのかな? もっと楽しいことあったんだと思います。俺が大好きで憧れてる人に、俺は何で負けてるかっていったら、その人たちの方がそのことを好きなんですよ。つまりはどんだけ好きかっていうこと。面白いと思うことを面白がってやればいいんだっていう、そういう歌なんです。どの歌も同じようなこと歌ってるんですけど。歌ってることは一つか二つくらいしかないから。前作も前々作も同じことをいってると思う(笑)。

—色々な曲があるけれど、ずっと一つの訴えたいことを言い続けてるんですね。

新しいこと思いついた! って思って書くんですけど、これよく考えたら前も言ってたな・・・ みたいなことがよくある。大事なこと思いだしただけだったり。僕が思うに、実は世界の謎ってもう解かれていると思うんですよ。でもそれを大概忘れているんです。それを思い出させるのが音楽だと思うんですよね。愛が大切だ! って一言でいえばそうなるけど、やっぱり音楽だから、いかにそれをグッと伝えるかってことですよね。

—言葉で「愛は大切ですよ」っていわれてもはぁ? ってなりますもんね。

それを伝えたくて、小説書く人もいれば、音楽をやる人もいるってことだと思います。だって、全く違った人間が集まって、性格もばらばらで、ロクデナシなんですよ。そんなやつが長年面白いなぁってやれるのって、音楽が愛だからなんですよ。音楽って人を繋げる力があって、それは愛だと思います。ロックンロールが愛でできている以上、ロックンローラーがお客さんに愛してますっていうのは当然ですよ。

—ところで、ジャケットはなんで豚なんですか?

元々はビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」のジャケがあって、動物のジャケっていいよね、っていう話をしてて。それでロック的な動物ってなんだろうって考えて、「豚じゃない? 」って。そんな流れで決まったんです。豚を放し飼いにしている農場を紹介してもらって写真撮ってきました。

—ロック=豚っていう図式がすごいですね(笑)。どっちかというとロックと豚って正反対なイメージかと思いましたけど。

まぁいろんな皮肉もあるかもしれないですね。資本主義の豚、みたいな。豚って奴隷的なイメージがあると思うんですけど、ロック好きな人って結構ロックの奴隷ですからね(笑)。自由ですけど、自分の意思で作ってるって言うより自然にできちゃう感じというか。自分よりもっと大きな意思に動かされてるっていうか。自由じゃなくて奴隷。幸せな奴隷、みたいな側面もあると思いますね。自分で考えてるけど、ほんとに考えてるのかな? って。狙いとかあるけど、もうこうなっちゃいましたっていう。まあなんだかんだ言ってただ単に「なんだこりゃ! 」って感じを出したかったんですよ。豚ジャケは・・・。

ロックンロールの持っている今すぐ何かしたくなるパワーは世界を変えるパワーだと思う。

—今作は3人だけのサウンドで、手触り的には一発録りジャーンっていう感じもありつつ、実際は技術的なこともしているという印象を持ったんですが。

それはうれしいですね。今回録る前に、3人だけでやろうと言っていて、メンバーでできる範囲でっていうのがまずあったんですね。息遣いとかタイトルに間違いのないような内容にしたかったから。歌以外のベーシックはほとんど一発で録りました。結成してしばらくは、録音でいかにライブ感を伝えるかということばっかりやってたんですが、バンドの持ってる生命力を生かしつつ、スタジオでしかできない良さを求めて作ったのが今作です。

—先ほど自分のために歌っている、第3者を意識していないとおっしゃっていましたけど、リスナーからしたらものすごい自分のことを言われているような、背中を押される作品になっていると思います。

そう感じてもらえたら嬉しいなぁ。自分を落ち込ませる歌より自分を奮い立たせる歌の方が歌いたいじゃないですか。切ない曲っていうのをあんまり信じてないんですよ。ものすごい悲しいけどグッと来るヤツってあるじゃないですか。でもなんかずるい気がしてた。だって悲しい曲の方が共感しやすいのは当然ですよね。人の幸せなんて、妬むことはあってもなかなか自分のことのようには感じられない。僕はこんなに幸せだから、みんなも幸せになろうぜっていうのはなかなか難しいと思うんだけど、僕はそっちのほうを信じてる。だってみんなで悲しくなるよりみんなで幸せになったほうがいいからね。

—それができるのが音楽でありロックンロールだと信じてる?

そうですね。難しいとは思うけど。前回も同じようなこと言ってたと思いますよ(笑)。毎回同じなんで。

—7曲目「LIFE IS NOW」もすごい好きなんですよ。でもあれも答えを提示しているものじゃないですよね。

あれはもともと絵本だったんですよ。「LIFE」って絵本。お金とか仕事とか夢とか色々なものと人生を比べる絵本。でも絶対人生の方が大事なんです。じゃあ人生って何だろうって、最後のページは「LIFE IS NOW」で終わるという。ロックの持ってるエネルギーでワ〜ってなってる時って今から何かしたい! って思うじゃないですか。今すぐ曲書きたいとか、今なら何でもできるんじゃないかっていう気持ち。それがロックの一番大切な感情だと思います。今できることはなんだ!? って自分に問いかけたくなるような。ロックンロールほど即効性のあるものってなくて。その瞬間で世界が変わるっていう。いつか何かができるかもしれないっていうどころじゃなくて、もうできた。いま俺やったじゃん、っていうのがロックンロールの力。なかなか口では説明できないので、感じてもらうしかないんですけどね。CDでそうなった! って人がいたらすげえ嬉しいですね。

—それこそ今迷ってる人とか、やりたいことがないって人に聴いてもらえるといいと思うんですが。

愚痴ばっかり言ってる人でも、その人が望んでそうなってる。それが全て叶ってるんだと思うんです。結局みんなそうしたくてそうしてるんだけど、自分が今そうしたくてそうなってるってわかってない人が多いはず。でも夢を買うべきだよ!

—そういう人にマーガレットズロースが必要なんですよ。

ロックが夢を歌わなかったらどうするんですか! だれが歌うんですか!
世界は変わる」という曲も大切な曲です。ロックンロールの持っている今すぐ何かしたくなるパワーは世界を変えるパワーだと思う。音楽が連帯のシンボルだった時代もあったと思うんだけど、これはもっと小さな世界のことを歌ってるんです。ラブ・アンド・ピースは本当だけど、世界平和って急に言われても、なかなか自分の問題だと思えないじゃないですか。例えば僕と子供の一対一の関係で、どうやったら君がもっと嬉しいか、幸せかっていう、それだけで世界が変わるっていうことなんです。なんだそんなことって思うかもしれないけど、一対一で通用しないやり方を僕は信じない。今はロックで世界を変えようって声高に叫ぶ時代ではないけど、ロックが世界を変える力を持っていることは間違いない。歌の中に「二人のために世界は変わる」っていう一節があるんだけど、それが僕の世界の変え方なんです。夢はなんですか? って訊かれたら、「世界を変えたい」ってことかもしれない。

PROFILE

結成以来、日本語ロックの王道を歩んできた3ピース・ロック・バンド。2000年より順調に4枚のアルバムをリリースした後、2006年4月には自主レーベル・オッフォン・レコードを設立し、5thアルバム「DODODO」をリリースする。「DODODO」のレコ発ツアーでは10ヶ所のワンマン・ライブを含む全国ツアーも敢行し各地で大反響を得るなど、ライブ・バンドとしての評価も高い。早川義夫、遠藤賢司、友部正人、バンバンバザール、知久寿焼ら、自らリスペクトするミュージシャンとの共演を重ね、幅広いジャンルの客層から支持を受けている。

平井正也(ボーカル、ギター)
岡野大輔(ベース、コーラス)
粕谷裕一(ドラム、コーラス)

LIVE SHCEDULE

ロックンロールアニマルツアー

  • 9/21(月) りんご音楽祭@松本 RAIZ
  • 9/22(火) @岡山ペパーランド
  • 9/23(水) @山口湯田温泉Organ'sMelody
  • 9/26(土) @福山POLEPOLE
  • 9/27(日) @京都磔磔
  • 9/29(火) @高松RICKY
  • 10/3(土) @伊那GRAM HOUSE
  • 10/4(日) @長野ネオンホール
  • 10/7(水) @名古屋得三
  • 10/8(木) @大阪・十三ファンダンゴ
  • 10/10(土) @広島ヲルガン座
  • 10/11(日) @福岡SPIRAL FACTORY
  • 10/12(月) @大牟田club fuji
  • 10/17(土) @水戸CLUB SONIC
  • 10/18(日) @つくばPARK DINER
  • 11/5(木) 「世界は変わる」vol.7@新代田FEVER
  • 11/21(土) @神戸VARIT
  • 11/22(日) @米子 ONE MAKE
  • 12/13(日) @浜松 天神蔵

ロックンロール・アニマル・ツアー "ファイナル・ワンマン"

  • 12/26(土) @新代田FEVER


これを聞けば世界は変わる!!

『グッバイマイラブ』/ グッバイマイラブ
ハンバートハンバートの佐藤良成による新プロジェクト。岸田繁(くるリ)、峯田和伸(銀杏BOYZ)をはじめ、多くのアーティスト達からも注目されている彼ら。純粋な詞の世界と、トラディショナル感を醸し出すオリジナリティあふれる楽曲群に心を打たれます。

グッバイマイラブ インタビュー

『天国よりマシなパンの耳』/ECD
1987年にラッパーとして活動を開始し、現在も精力的にライブを続けるECD。日本語ラップを知らない若者達からも熱狂的なリスナーを生み出し、 HIPHOP、ROCK、JAZZ、現代音楽等、ジャンル人種を問わず、あらゆるアーティストからリスペクトされ、最も勢いのあるアーティスト。今作はリリック、リフ、ともにキャッチーでありながら不穏! アブストラクトかつ超POPな捨て曲なしの、全10曲収録。

ECD インタビュー

『dis is the oar of me』/Discharming Man
蛯名啓太率いる、Discharming man。今作では、札幌シーンの最重要人物の一人、bloodthirsty butchersの吉村秀樹もギター、プロデュースで全面的に参加しており、尋常じゃない重量感と張り詰めた空気感を醸し出している。そして、特筆すべくは唄。決して孤高の世界で完結しない、全霊で思いの全てを吐き出す唄には感情を揺さぶられる。

Discharming Man インタビュー

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筆者について
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