どこかの港で聞いた、大きな船の進水する音、 あれはいつ、どこでだったのだろうか.....
渚 十吾 『タイタニックの沈没 』
『ストロベリー・ディクショナリー』『ブルーベリー・ディクショナリー』の著者で、『ストレンジ・デイズ』に連載を持つ音楽家&文筆家である渚十吾の10枚目のソロ・アルバム『タイタニックの沈没』が発売。文章は良く目にしていたのだけど、恥ずかしながらその音楽を初めて聴いた。
ドノヴァンとかバート・バカラック等のライナー・ノーツを書く方なので、退屈かもって思っていたのだが、見事に撃たれた。彼が鳴らす音楽は、無秩序なのに美しくて、ニヒルなのにユーモアに溢れている。大好きなチェコ・アニメのようだ。特に16曲目の「旅路〜別の世界の空へ〜」は涙腺が切れた。POP職人でしかたたせることの出来ない、アコースティック・ギターの響き。
彼のフェイバリット・プレイスを見たら、僕と同じだった。井の頭線の線路沿い、京都の法然院、峰定寺まで。好きな音楽が似ていなくとも、好きな風景で音楽は共鳴しあえるんだね。嬉しくなった。
エレクトロニカ中心のstill echoというイベントが京都クラブ・メトロで行われている。20代特有の内に向いた憂鬱な波長(僕は太宰治系とよんでいる)とマッチしたので、かかっていた音楽は全然理解出来なかったのだけれど、大学生の頃にはよく通ったものだ。呑めないお酒を片手に、最初は脳みそをいっぱいつかって音楽を理解しようとするのだが、3時くらいになると疲れてきて、音の揺らぎにただ身を任せる。気づいたら朝で、メトロの階段を上ると鴨川が一面に広がって、おじいちゃんとおばあちゃんが仲良くマラソンしていて、ちょっと救われたりする。そんな少し恥ずかしい自伝ショート・ムービーを作った時、『タイタニックの沈没』がサウンド・トラックならば、嫌らしくなく上映することが出来るだろうな。
(text by 飯田仁一郎)
LINK
- 渚十吾 website : http://www1.ocn.ne.jp/~jn15/
- 渚十吾 live@shibuya O-nest : http://www.youtube.com/watch?v=k3Es31f3nMw
- 渚十吾 OraNoa LIVE : http://www.youtube.com/watch?v=kt87KvRzCR4
- 渚十吾 echo mountain parlor : http://www.youtube.com/watch?v=c6q6I0E-nyQ
- WAIKIKI RECORD website : http://www.waikikirecord.com/
- WAIKIKI RECORD my space : http://www.myspace.com/waikikirecord
渚十吾
ドノヴァン、ジミー・ウェッブ、サークル、ウイ・ファイヴ、ボイス&ハート、バート・バカラック、ジョン・サイモン、トッド・ラングレン、サイラス・ファーヤー、レディバグ・トランジスター etc... 数多くのアーティストの新譜、再発CDのライナー・ノーツを手掛けたり、マイペースに音楽を作り続けたり、音楽鑑賞会開いて、みんなでレコード聴いたりな渚十吾! その実態は、最上の音楽リスナーでもある。