Sancantion

Discography

「アフリカの印象」と申しますと,「チターを弾く大みみず」で知られるレーモン・ルーセルの小説が思い浮かびます。このアルバム「アフリカの印象 II」が想定している地域・時間帯は西表島の深夜であって,アフリカではありません。とはいえ,「大みみず」が様々な楽器を操ることによって制作されたかもしれない楽曲群を,このアルバムは収録しています。夜でも蝉が鳴き止まない酷暑の夏は常に既に過去のものとなってしまいましたが,忘れものをしないためには,もしくは忘れものをするためには,この肌寒い現実の夏の最中にあっても,盆踊りの練習は決して欠かすことはできないかもしれません。

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額田王が詠んだ万葉集所収の歌の中に出て来る文字列「豊旗雲」(帯状絹雲)を背に,オパネマの息子は真夏のような寒さの中,常に既に虫の息となっていました。とはいえ,夜になって月が姿を現すと同時に,その太い月からの贈与によって,幸いにもオパネマの息子は虫の息を脱しました。そのとき,街中では既に五月雨のリズムに乗って,金木犀の香りが漂う中,盆踊りが踊られていたそうです。五月雨のリズムで盆踊りを踊ることはできるかもしれません。オパネマの息子が盆踊りに加わったかどうかは,詳らかではありませんが,いずれにしてもその盆踊りの最中に演奏されることを想定して制作された楽曲群です。

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夏の終わりならば,暑さの残滓の如きものが残っていて,まだ暖かさの側に属する季節と言えましょうか。ところが,秋の終わりとなると,もう寒さへと突き進むしかない状態に陥り,暖かさの片鱗も感じられない季節になってしまいます。とはいえ,季節は常に既にくるくると回転しているわけで,来季の夏に対しては,夏の終わりよりも秋の終わりのほうが時間的に近いことは明らかです。そう言った意味において,夏の終わりならば短調でもよいかもしれませんが,秋の終わりならば長調のほうが気分的によかろうと言うことで制作した楽曲群です。

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