ノスタルジックなアコースティック・ギターの響きに無限の微細なエレクトロニック・アンビエンスが彩りを添え、佐立の繊細だが強さを内包したハスキーな歌声は、おだやかにエモーショナルな洗練を呼び起こす…この、「歌」を軸にした至ってシンプルな構成要素にも関わらず、水面が返す乱反射のように移り変わる多様な表情を持った重層性こそが、ルイス・ナヌークの最大の魅力であると言える。形無きものに手を伸ばし、遠きものに思いを馳せる。果てしないものの美しさに魅入られた彼らと彼らが奏でるこの音楽は、特定の意味に収斂されることのない自由な拡がりを感じさせる。時間の移ろいを音楽に託して、このアルバムは一つの物語のように静かに展開していく。永遠に色褪せない記憶の情景を、無垢なソウルとメロウな情熱とで包み込んだ、傑作ブルース。'10年代の感受性を予見した最新型フォーク・サウンドの誕生である。