amiIrie

Discography

 この辺りの日々 いま62歳の松岡清明。青春時代はラグビーに明け暮れていた。夢に満ち溢れていたあの頃。還暦を越えてしまうなんてはるか遠く、想像ができない未来のことだった。振り返れば、電気工事システム設計士として働き始め、30代の頃にバックパックを背負って、アメリカ・ロサンゼルスから紛争で緊迫状態の中米の国々を横断。南米最南端のマゼラン海峡まで一人旅をした。ヒッチハイクをしたり、民家でお世話になったり、安いホテルに泊まったり、紛争状態の国ではカービン銃を構えられたりと、冒険とチャレンジの連続。のちに妻となる女性との出会いもこの旅行の途中の国、ブラジルだった。結婚して娘2人の子宝にも恵まれた。父親として、仕事に精を出し、家族、子供を思い、PTAの会長も務め、たくさんのお父さん、お母さんとも出会った。この間にいくつもの「喜び」や「哀しみ」を感じ、魂が揺さぶられることもあった。そうした経験を〝恥ずかしながら〟娘たちに託し、詩をしたためてきた。四季の変化を肌で感じることができる街に住み、フラッと呑みに入ったのが、ミュージシャンami(あみ)の店「cafe pon to hana」(大田区上池台)だった。お気に入りの店になって何度も通ううちに「街場に吹く風として音楽があってもいいだろう」ということになり、amiはCDプロデュースを決めた。松岡の詩の中から5つ詩を選び、音楽センス溢れた素敵な4人の作曲家に曲を依頼した。瓢箪から駒。万人は宝の宝庫だ。〝大人たちのファンタジー〟によってCDは完成した。 1曲目「卒業式の君ヘ」と4曲目「この辺りの日々」は、高橋真梨子の最大ヒット「ごめんね…」が代表曲の水島康宏さんが作曲。2曲目の「娘の初恋」は、昭和ノスタルジーが残る名曲「池上線」の生みの親、西島三重子さんが父親の切ない気持ちを表現した曲で、その父親(松岡)の意をくんで作曲した。3曲目「結婚式の君へ」は、コロンビア大使館の領事の息子さんの結婚祝いにプレゼントしようと思ってつくった。仕事の関係で知り合った慶應義塾大学理工学部の西宏章教授にピアノで曲をつけてもらった。巣立つ子供たちへ親からの応援歌だ。5曲目「ねぇねぇ」は、「pon to hana」で縁があった、俳優でミュージシャンの三原康可さんからのプレゼント。こうしてできた曲を演奏してくれたのが、音楽ユニット「amilie(アミアイリ)」。ヴォーカルのamiのしっとりした歌唱は、ささやかな幸せを大切にしていく気持ちを静かに語っている。人生は不思議な縁(えにし)の連続。力まずに「普通のおやじも意を決すれば何でもできるよ!」という気持ちで、素直に力を借りたり、貸したりすれば、新しい関係が生まれてくるはず。若き日の「何かをしようゼ!」の精神に立ち戻れば、これからも人生を楽しく生きられるのではないかと思っている。口には出せないすべての思いを昭和の酒呑みが詩に託した。        (高山和久)

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